ブランド戦略は企業の成長には欠かせないものであり、企業規模問わず重要なものです。

しかしブランド戦略はブランディングやマーケティングなどの言葉と同じ意味を持つ言葉でもあるため、混同されたり、意味があいまいになっている方もいるようです。

この記事ではブランド戦略とはどのようなものなのか、ブランディングとの違いや戦略の立て方について紹介します。

 

そもそもブランド戦略とは?

ブランド戦略とは、企業やプロダクトのブランドを構築・維持・拡大するために実施する戦略のことで、市場のニーズや競合環境を分析し、独自の強みを活かしたブランドイメージを作り上げ、顧客にとって魅力的なブランドを構築することを目的としています。

 

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会では、「ブランド戦略とは、「資産を生み出していくための戦略」であり、企業の経営そのものなのです。」と述べていることからもわかるとおり、ブランド戦略は企業にとって欠かせないものです。

ブランド戦略というと「ロゴを作ること」「ロゴを変えること」などがブランド戦略と同義と解釈されることもありますが、これはブランド戦略の中の一要素に過ぎません。ブランド戦略には、ブランドポジショニング、ブランドキャッチフレーズやロゴの作成、PR活動などあらゆるマーケティング戦略、コミュニケーション戦略などが含まれます。

 

ブランド戦略とブランディングの違い

ブランド戦略とブランディングは、企業やプロダクトのブランドを構築・維持・拡大するために実施する戦略であり、どちらも似たような意味合いを持ちますが、ブランディングはブランド戦略によって決定されたブランドイメージを顧客に伝えることに重点をおいています。

つまりブランド戦略は、企業やプロダクトのブランドを構築するための計画や戦略であり、ブランディングはそのブランドを顧客に知らせ、印象づけるための手段であると理解することができます。

 

ブランド戦略を実施するメリット

ブランド戦略を実施するメリット

ブランド戦略は冒頭でも述べたとおり、企業経営そのものと言える活動ですので、どの企業にとっても重要な戦略ですが、改めてブランド戦略を行うメリットについて紹介します。

 

コストパフォーマンス観点知名度が上がることで宣伝コストが下がる

ブランド戦略を実施することで、ブランドの認知度が高まり、徐々にブランドイメージが確立することによって、広告宣伝を行わずとも顧客に認知され選ばれるブランドを目指すことができます。

ブランドが構築されるまでは多くのリソースを投入する必要があり、コストはかかるものの、ブランド戦略によって構築された魅力的なブランドは、信頼性や憧れ、共感などの付加価値を生み出し、ファンを作り出し定着することにつながります。
結果、顧客が自社のブランドを選ぶきっかけとなり販売促進にもつながりますので、長期的な視点でみるとコストパフォーマンスに優れていると言えます。

 

競合他社との差別化が図れる

iPhoneを提供するAppleはブランド戦略が成功し、競合企業との差別化ができた例です。

Appleは競合環境が激しい消費財市場において、独自のデザイン力や技術を活かし、高品質なデザインや機能を持つプロダクトを提供することで、顧客にとって魅力的なブランドを構築しました。

 

また、Appleはブランドイメージを強化するために広告やPR活動を展開し、シンプルで洗練されたデザインや、ユーザーフレンドリーなインターフェースを持つプロダクトであることを浸透させました。

結果的にAppleは競合他社との差別化を図ることに成功し、ファンを作り出しました。ファンは新商品が出るたびに商品を購入する、多少高くてもAppleを選ぶと言った購買活動を行うようになっています。

このように差別化が成功することで、

・競合に比べて商品が選ばれやすくなる
・同じブランドを使い続けてもらえる
・競合との価格競争から脱却できる

など多くのメリットを得られると考えられます。

信頼されることでリピート率の向上につながる

顧客が良い印象や評判を持っているブランドは、再び購入することを考えやすくなり、リピート率が上昇する可能性が高くなります。

また一つの商品を利用しブランドに対して信頼や愛着が得られると、他の商品であっても「このブランドなら安心だから選ぶ」「このブランドが好きだから別の商品も同じブランドを利用したい」など、他社商品と比較されることなく自社を選んで買ってもらえる機会が増える点もメリットとして考えられます。

 

社会的信用を得ることで採用にも活用できる

ブランドイメージは、企業のイメージを反映したものであり企業の魅力を表しています。

そのため、ブランド戦略を採用に活用することで、企業の魅力を最大限にアピールすることができ、人材を引き付ける効果を期待できます。

具体的に、会社のブランド化に成功し、自社で働く価値や社内の様子が伝わることで、「あの会社で働きたい」という求職者を増やすことができ、応募者数の増加が期待できます。

 

また、企業の文化やミッション・ビジョンを明確にし、それを企業の魅力としてアピールすることで、志を同じくする仲間を集めることができ、採用のミスマッチを防ぐことができます。

 

誰でもできるブランド戦略の立て方

ブランド戦略の立て方 4つのステップ

ここではブランド戦略の立て方について、4つのステップにわけて紹介します。

ブランド戦略ステップ1:現状分析※複数の分析方法を掲載

まずは、ブランドが現在どのような立ち位置にあるのかを把握するために現状分析を行います。

ブランドの現状分析には様々な方法がありますが、代表的なものには以下のようなものがあります。

■SWOT分析
企業やプロダクトの外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で分析する。
■PEST分析
Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の要素を分析することで、マクロ環境を把握する。
■4P分析
Product(製品)、Price(価格)、Place(販売場所・提供方法)、Promotion(販売活動)の要素を分析することで、ブランドイメージを構築する上での市場戦略を立てる。
■顧客リサーチ
顧客に対してアンケートやインタビューを行い、魅力的なブランドイメージを構築するための要素を把握する。

分析方法は企業やプロダクトの特性、分析の目的に合わせて選ぶことが重要です。

 

ブランド戦略ステップ2:ブランドターゲットの設定

ブランドを構築するためには、ターゲットとする顧客の消費行動やニーズ、特性などを分析し、明確に定義することが重要です。

例えば健康食品を販売する企業の場合であれば、健康志向の高い、年齢層が30代以上、年収が高い、週に1回以上ジムに通う方をターゲットにする。ファッションブランドの場合、年齢層が20代から30代、スタイルに敏感、特定のインスタグラマーをフォローしている。など、ターゲット像を具体的に作り上げます。

 

BtoB商材の場合はどういった「企業」であるかという点と、どういった「担当者」がターゲットになるかの両方のターゲット設定をします。

例えば企業は年商10億円以上のメーカーで従業員は100名、消費財を扱っている。担当者は部長職の男性で新規顧客の獲得がミッションで、チームビルディングに困っている。このような形でターゲットをイメージします。

ターゲット顧客を明確に定義することで、ブランドイメージを構築する際に、顧客にとって魅力的なブランドイメージを提供することができると同時に、活動を続けていくなかで一貫したブランドメッセージをブレることなく伝えられます。

 

ブランド戦略ステップ3:コミュニケーションの設計

ブランドのターゲット顧客が明確になったら、どのようなコミュニケーションを行っていくかを設計します。

 

設計の際には以下の要素を考慮することが必要です。

■ブランドメッセージ
ターゲット顧客に対して、どのようなブランドメッセージを伝えるかを決定する。
■マルチメディア戦略
ターゲット顧客が利用するメディアを把握し、複数のメディアを使いこなすことで、効率的に情報を伝達する。
■タイミング
ターゲット顧客に対して、どのようなタイミングでブランドメッセージを伝えるかを決定する。

単純にメディアを複数利用し、露出を多くすればコミュニケーションが成功するわけではありません。

ターゲット顧客が利用するメディアを理解し、適切に組みわせ、運用することが重要です。

 

ブランド戦略ステップ4:ブランド評価

ブランド戦略が実行されたあとは、ブランドイメージがターゲット顧客に伝わっているか、ターゲット顧客にとって魅力的なブランドとなっているか定期的に評価し、必要に応じて戦略の立て直し、コミュニケーション設計の見直しを行います。

ブランドの評価には以下のような方法があります。

①顧客アンケート

ターゲット顧客に対してアンケートを行い、ブランドイメージが伝わっているかどうかを確認する。ブランドイメージを見る際には、競合のイメージも同時に取得することで、自社の立ち位置を把握することが重要です。

②ブランド評判分析

SNSなどのインターネット上で、ブランドに関連する評判を分析することで、ブランドイメージが伝わっているかどうかを確認する。またネガティブなイメージが持たれていないかも確認することで、コミュニケーション設計に役立てる。

ここまで紹介してきたブランド戦略の立て方は、あくまで一例であり、実際は企業の現状や、ブランド戦略を実施したい目的によってさまざまな手法を組み合わせて実施します。
【資料ダウンロード】ブランディングに役立つフレームワーク集

 

ブランド戦略の成功例

ここではブランド戦略がどのような目的で実施され、どのような流れで進められているのかがわかるよう、弊社の事例を紹介します。

 

ブランド戦略事例1:富士テレコム株式会社

ブランド戦略事例1:富士テレコム株式会社

富士通のパートナーとして通信ネットワークやシステムインテグレーション、さらに自社パッケージシステムの開発・販売を展開する富士テレコム株式会社様では、50周年を迎えるにあたり「これからの富士テレコム」を言語化し発信する必要があり、以下を実施しました。

・新ブランドスローガン開発
・ロゴの変更
・理念映像の制作

また上記活動からの社内への浸透度を測るためにエンゲージメントサーベイも実施。

ロゴや映像などを作るだけではなく、社内に浸透させるまでを一気通貫でサポートさせていただきました。

 

事例の詳細はこちら「ブランドプラットフォーム再構築 富士テレコム株式会社」

 

ブランド戦略事例2:株式会社メフォス

ブランド戦略事例2:株式会社メフォス

日本全国40拠点以上で、5分野の給食を提供している株式会社メフォス様では、新規顧客獲得や、ステークホルダーのエンゲージメント向上を目的に、ブランディングを実施しました。

ブランド価値の言語化を中心として

・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定
・ブランドサイト制作
・社内浸透ツールの制作

など様々な施策のお手伝いをしました。

社員、役員、社長へのインタビュー・取材から取り組みを始め、コア・バリューを見つけ出し、MVVへ落とし込みをしました。

さらにそこからビジュアルの策定を行い、ブランドサイトやポスター、ムービーなどの制作をし、メフォス様の姿を表現しました。
 
事例の詳細はこちら「MVV策定、ブランドコミュニケーション計画策定 株式会社メフォス」

 

ブランド戦略事例3:FICT株式会社

リブランディング成功事例_FICT株式会社

サーバ、スーパーコンピュータ、車載機器など、生活を支える最先端装置に欠かせないプリント回路基板を製造している世界的メーカーFICT株式会社様では、富士通グループからの独立にあたり、

 

・ブランドスローガン策定
・コーポレートロゴ策定
・コミュニケーションツール制作

など全方位でブランディングのお手伝いをさせていただきました。

プロジェクトはフェーズ1(社名/CIVI)、フェーズ2(コミュニケーション計画)、フェーズ3(基本ツール制作)とステップを分け進行。

新社名になるまでの1年間をブランディングパートナーとして併走させていただきました。
 
事例の詳細はこちら「社名変更に伴うコーポレートブランディング FICT株式会社」
 
【資料ダウンロード】具体的なプロセスがわかるブランディング支援実績集

 

ブランド戦略は経営者が言語化し先導していくもの

繰り返しになりますが、ブランド戦略は企業経営そのものと言える活動で、企業全体の方向性を決定するため、経営者が率先して意思決定し実行することが重要です。

またブランド戦略は経営者のみで達成できるものではありませんので、社内外に向けてメッセージを送り続け、周囲を巻き込み、長期的な目線で活動を進めることが必要となります。

 

まとめ

ものや情報があふれる現代において、他社と比較されることは避けられません。

ブランド戦略というと大企業が行うものと考えている方も少なくありませんが、商品の価格競争に巻き込まれず、長期的に経営を安定させていくためには、企業規模問わず重要な施策です。

もし現在、今後の方向性について困っている商品やサービスがあれば、ブランド戦略の立て直しをしてみてはいかがでしょうか。

弊社ではブランド戦略策定のための分析から実行まで一気通貫でサポートしています。多くの企業様でお手伝いさせて頂いている実績もございますので、気になる方はお問い合わせください。

 

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