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リブランディングとは?既存ブランドの再構築を成功させる3フェーズを解説

長年に渡り、広く支持されてきたブランドでも、社会や市場、社内状況の変化をきっかけに、リブランディングを実施することで、新たなイメージを与えることができます。
しかし、そもそもどのタイミングでリブランディングを実施するのか、どういった工程で実施すればいいのか分からないという担当者の方も多いかと思います。
本記事ではコーポレートブランドにおいて、リブランディングのメリットや実施するタイミング、具体的な工程などについて解説します。ぜひご参考ください。
リブランディングとは
リブランディングとは、市場や事業、経営状況などの変化に応じて、企業・商品・サービスブランドを、再定義・再構築するブランディング活動を指します。
新規のブランドを立ち上げるのとは違い、今まで培ってきたブランドに対する信頼感や、顧客との関係性など(=ブランド資産)を活かして、ブランドを生まれ変わらせることが特徴です。
そのため、ブランドロゴやネーミングを変更するという表面的なものだけではなく、ブランドの現状(AS IS)を把握した上で、あるべき姿(TO BE)を明確にし、計画的に進めていくことが重要です。
リブランディングを実施するタイミング
リブランディングを実施する際には、適切なタイミングで実施することが重要です。
明確な意図や理由がない中で実施すると、今まで培ってきたブランド力が低下し、既存顧客離れ、売上の低下、採用がうまくいかなくなるなどのデメリットが生じる可能性があります。
そのため、以下のようなタイミングでリブランディングを実施する企業が多く見られます。
経営者の交代
経営者の交代によって、新たな経営者と前の経営者のビジョンが異なり、今までの方針のまま企業活動を実施することが困難というケースもあります。
このタイミングでリブランディングを実施することで、新たな経営者のビジョンをもとに、時代やニーズに合わせたリブランディングにつながりやすいというメリットもあります。
事業の再構築
企業の合併や経営統合、ホールディングス化など事業を大きく再構築する際もリブランディングのタイミングです。特に合併や経営統合の際は、企業文化の異なる会社同士が一つの会社になるため、両社間で継承すべきブランドイメージや、新たに訴求していきたいブランドイメージを十分にすり合わせながらリブランディングを実施することが重要です。
事業の成長、拡大
既存事業を拡張・多角化させる、また新たな市場へ参入する際もリブランディングを実施するタイミングです。事業のフィールドを変化させるということは、既存事業とは異なる競合企業との差別化を図る必要があります。そのため、リブランディングを実施して自社のポジショニングなどの見直しを図ります。
周年
周年のタイミングは、企業の転換期でもあります。これまでの歴史を振り返りつつ、未来に向けての姿勢を訴求するリブランディングの実施が効果的です。
リブランディングの実施プロセス
リブランディングの実施は、大きく3つのフェーズに分けられます。それぞれのフェーズと、そのなかで着手すべきアクションについて解説します。
■フェーズ1.コーポレートアイデンティティの構築
まずはブランドの現状を把握し、ブランドの持つ価値や魅力を整理したうえで、コーポレートブランドの共通認識となるコーポレートアイデンティティを策定します。
ブランド推進チームの発足
リブランディングは社長や経営層だけで進めるものではありません。
企業活動全体に関わるため、部署を横断した責任者や有志が集まり、全社が納得するリブランディングを進めるためのチーム発足が重要です。
結果的に、チームを通じて現場の社員に向けた浸透活動が行いやすくなります。
提供価値の洗い出し、深堀り
次に、今現在ブランドが持っている価値は何か。これまで提供してきた価値は何か。などを洗い出すことが重要です。
しかし、ただ情報を洗い出すだけでは表面的な価値の整理にとどまってしまい、リブランディングの際に重要な、コアバリュー(ブランドが顧客や社会に与える提供価値)を見出すことが困難になります。
提供価値を洗い出す際は、社長や役員、経営層などを対象にインタビュー調査を実施することで、現在の企業ブランド発足における思いや信念などのキーワードを引き出せます。また、インタビュー調査によって棚卸しされた情報をもとに、ブランド価値を構造化した「ブランドストラクチャー」を作成することで、曖昧だった企業ブランドの強みや価値が整理され、コアバリューが明確化されます。
コアバリュー:ブランドが顧客や社会に与える提供価値
情緒的価値:機能的価値から⽣まれるステークホルダーのポジティブな感情
機能的価値:ブランドがそれぞれに与える機能的なうれしさ(便益)
属性価値:ブランドがすでに備えている、客観的・物理的な特徴
コーポレートアイデンティティの策定
明確化したコアバリューをもとに、社名、ブランドスローガン、ブランドロゴなどコーポレートアイデンティティを開発します。
リブランディングでは既存のブランド資産を活かすことが重要です。そのため、既存ブランドから変える点、変えるべきでない点を見極めながら、新たなコーポレートアイデンティティを開発しましょう。
その際、既存のブランドに対する愛着がコーポレートアイデンティティ策定時に影響を与えないようにするためにも、ブランド推進チームの一人ひとりが客観的視点を持って臨むように注意が必要です。
また、先述した通りリブランディングは社長や経営層だけで進めるものではありません。
策定したコーポレートアイデンティティについて、全社員にアンケートを取るなど、社員を巻き込んで進めていくことでより強固なブランド形成につながります。
■フェーズ2.コミュニケーション計画の策定
フェーズ1で構築したコーポレートアイデンティティをどのように伝えていくかのコミュニケーション計画を策定します。自社の従業員や顧客に対して、いかにしてブランドを浸透させていくのかのコミュニケーション計画を立て、浸透させるために効果的なクリエイティブツールは何であるかを検討します。
ジャーニーマップの作成とコミュニケーション計画の立案
ブランドとステークホルダーとの接点は認知→理解→共感→行動の4つのフェーズが存在し、それぞれのタッチポイントにおいて、どんな施策が必要か、どんな風に感じてもらいたいのかなどをジャーニーマップに落とし込みながら検討することが効果的です。
これにより、ブランドの浸透において、やるべき施策の優先順位付けができたり、チームメンバー同士で共通認識を持つことができるなどさまざまなメリットがあります。
ジャーニーマップについて、以下のリンクからサンプルをダウンロードいただけますので、ぜひご参考ください。
関連資料:『エンプロイージャーニーマップ』
クリエイティブツールの検討
作成したジャーニーマップをもとに、各フェーズでリブランディングを浸透させるために必要なクリエイティブツールを検討しましょう。
クリエイティブツールは大きく分けて、WEB、映像、グラフィック、イベントの4つに分けられ、それぞれで以下のようなものが存在しています。
WEB | ・コーポレートサイト ・ブランドサイト ・キャンペーンサイト ・ランディングページ ・ SNS |
映像 | ・ブランドムービー ・会社紹介映像 ・TVCM ・株主向け映像 ・IR映像 |
グラフィック | ・ブランドブック ・会社案内 ・冊子 ・封筒 ・名刺 ・資料テンプレート ・社屋看板 ・広告 ・ユニフォーム ・社章 |
イベント | ・展示会/オンラインセミナー ・イベントブース出展 ・周年イベント |
それぞれのクリエイティブツールに統一感を持たせることで、意図したブランドイメージが伝わるようになります。
■フェーズ3:クリエイティブツールの実装
フェーズ2で計画を立て、検討したクリエイティブツールを使用して、実際にブランドに触れるステークホルダーに対して新たなブランドを浸透させます。浸透フェーズは大きく分けて社内浸透と社外浸透の2つの段階に分けられます。
社内浸透(インナーブランディング)
BtoB企業においては、従業員一人ひとりがブランドの体現者です。
リブランディングを実施したら、従業員一人ひとりがリブランディングの目的や意図を正しく、そして深く理解し、語れるようになる必要があります。そのため、まずは社内浸透を優先的に行います。
しかし、リブランディングを実施したことを表面的に言葉で伝えるだけでは、リブランディングの意図の理解、共感まで及びません。
フェーズ2で策定したエンプロイージャーニーマップをもとに、浸透度合いを把握しつつ、段階的にアクションを実行しましょう。
また、社内浸透においてはインナーブランディングという手法が効果的です。
インナーブランディングについては以下の記事で解説しているので、ぜひご参考ください。
関連記事:『インナーブランディングとは?手順や注意点、企業の成功事例などを紹介』
社外浸透(アウターブランディング)
次に、社外に対してもリブランディングを実施したことを伝えます。
広告やPRを活用して広く浸透させるのはもちろんのこと、経営層を含めた従業員一人ひとりが、顧客やパートナー企業に対して、新しいブランドを正しく伝えることが重要です。
また、社外浸透においてはアウターブランディングという手法が効果的です。
アウターブランディングについては以下の記事で解説しているので、ぜひご参考ください。
関連記事:『アウターブランディングとは?期待できる効果やインナーブランディングとの関係性を解説』
リブランディングを成功させるポイント
リブランディングを成功させるためには以下のようなポイントを意識することが重要です。
自社の現状を冷静に判断し、リブランディングの方向性を定める
リブランディングを実施する際、既存のイメージを活かしつつ新たな方向へ舵を切りたいというケースもあれば、既存のイメージを払拭して、まったく新たなイメージづけをしたいというケースも考えられます。
自社の課題を見つめ直し、どの方向性でリブランディングを行うかを定め、目線を合わせて取り組むことで、リブランディングの成功につながります。
効果が出るまで時間がかかることを認識し、中長期的に取り組む
リブランディング実施後、新たなブランドが社内外のステークホルダーへ浸透するには時間がかかります。また、リブランディング実施直後は否定的な意見が出てくるケースも考えられます。
リブランディングの効果がすぐに出ない、またリブランディングに対して否定的な意見があったからといって、更なる変更を加えたり、変更前のブランドに戻したりすると、かえってブランド価値を低下させてしまう可能性があります。
そのため、リブランディングによる効果が感じられるまでには時間がかかることを認識し、中長期的に取り組み、効果検証を重ねながらブラッシュアップしていくことが重要です。
従業員を巻き込みながら取り組む
繰り返しになりますが、リブランディングは社長や経営層だけで行うものではありません。また、BtoB企業においては、従業員がブランドを体現する部分が大きいため、従業員一人ひとりがリブランディングを自分ごととして捉え、全社が同じ方向を向いて行う必要があります。
そのため、従業員を巻き込みながらリブランディングを進めていくことが重要です。
浸透活動だけではなく、コーポレートアイデンティティ策定の段階から従業員を巻き込むことで、当事者意識が醸成され、より全社から愛されるブランド構築につながります。
リブランディングの成功事例
リブランディングに着手し、効果を上げている企業は多数存在します。以下では、リブランディングの成功事例について紹介します。
FICT株式会社
サーバ、スーパーコンピュータ、車載機器など、生活を支える最先端装置に欠かせないプリント回路基板を製造している世界的メーカーである富士通インターコネクトテクノロジーズ(旧社名)の富士通グループからの独立にあたり、
など全方位でブランディングのお手伝いをさせていただきました。
新社名とブランドスローガン策定は、社長、役員だけでなく株主の投資会社にもインタビューを行い、知覚価値の整理(ブランドストラクチャー策定)を実施。
新社名は同社が目指す未来とこれまで培ってきた技術、枠に捉われない挑戦を続け価値を創造していくというインターコネクトテクノロジー(ICT)の頭文字を取り「FICT」と策定。ブランドスローガンでは、これまでの同社らしさを表現し、インターコネクトテクノロジーでつながり合う未来を示した「The future is interconnected」と策定しました。
新たなコーポレートロゴにおいても、技術への信頼感を表現しつつ、社名の「I」は未来へのトビラに見立てたアクセントとしています。
Webサイト・ポスター・会社案内パンフレットのキービジュアルでは、「世界を未来へつなぐ」という想いを、トビラを潜り世界の都市を巡るアニメーションで表現しました。
>>FICT株式会社の事例紹介はコチラ
ヤンマーホールディングス株式会社
日本の発動機ならびに農機、建機、小型船舶の製造・販売を行う大手企業グループであるヤンマーは、創業100周年を期してリブランディングに着手しました。
同社の社長はヤンマーをプレミアムブランドにしたいという思いを持っていました。実際、同社の持つテクノロジー、エンジニアリングに関する総合的な技術はプレミアムと呼ぶにふさわしいものでした。しかし、その価値が外部にまったく伝わっておらず、社内での認識もあやふやなものでした。
同社のミッションステートメントから、食料生産とエネルギー変換の問題をテクノロジーで解決できる企業は、これからの時代において間違いなくプレミアムな存在になるということから、プレミアムブランドで社内外を統一する戦略を採択。
プレミアムブランドを浸透させるため、企業ロゴの刷新、トラクターのコンセプトモデルや農業ウエアを制作し、同社の新しいイメージを伝えることにつながっています。
(参考:佐藤可士和が語る「次の100年に向けて踏み出した“はじめの一歩”」)
まとめ
リブランディングとは、市場や事業、経営状況などの変化に応じて、企業・商品・サービスブランドを、再定義・再構築するブランディング活動を指し、3つのフェーズに則り進めていきます。
・フェーズ1:コーポレートアイデンティティの構築
・フェーズ2:コミュニケーション計画の策定
・フェーズ3:クリエイティブツールの実装
本記事ではリブランディングの基礎について解説しました。しかし、いざリブランディングを実施するといっても、「自社の提供価値の整理がうまくいかない」「従業員を巻き込みながら実施するリブランディングの手法が思いつかない」とお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。
株式会社揚羽では、リブランディングのための分析から実行まで一気通貫でサポートしています。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
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株式会社揚羽 ブランドコンサルティンググループ
グループ長
サステナビリティ×インナーブランディングの専門家として、サステナビリティ経営に舵を切る企業のコミュニケーションプラニングや従業員の意識改革に取り組むブランドプロデューサー。サステナビリティとビジネスを紐解く「サステナブル・プロセス(サスプロ!)」の公式YouTuberとして、先駆け企業の改革・ビジネス実践のプロセスを紹介する活動も精力的に活動中。
書籍:『ストーリーでわかるエンゲージメント入門 組織は「言葉」から変わる。』
YouTubeチャンネル:「サステナブル・プロセス(サスプロ!)」
課題解決まで伴走します

