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インナーブランディング施策の進め方3STEP!ブランディング専門家が解説

ビジネス環境がめまぐるしく変化する社会において、自社のビジネス競争力を上げるためには、従業員に意欲的に働いてもらう必要があります。
そのためには会社やお客さま、社会の為に貢献したいという従業員エンゲージメントを高める必要があり、その施策として「インナーブランディング」に注目が集まっています。
本記事では、インナーブランディング施策の進め方や成功事例について解説します。
[はじめに]インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、自社の従業員を対象に、企業が目指す姿や社会に提供したいこと、大切にしたい価値観などを共有し、共感を持って行動してもらうために実施するブランディング活動を指します。
従業員に企業の目指す姿が明確に伝わることで、自分の仕事が会社や社会、お客さまに対してどのように貢献できているのかが実感できるようになり、より貢献したいという想いがうまれ、従業員エンゲージメントが高まるというメリットがあります。
その結果、「生産性アップ」「顧客満足度アップ」「離職防止」「事故発生率の低下」「作業品質アップ」などの効果が見込め、組織全体が強固なものになります。
インナーブランディングの概要についてこちらの記事でも詳しく解説しています。
関連記事:『インナーブランディングを日本一わかりやすく解説』
インナーブランディング施策の進め方
インナーブランディング施策は3STEPで、PDCAサイクルを回しながら運用していきます。
・STEP0:現状を調査する
・STEP1:言葉づくり
・STEP2:言葉を浸透させていく
・STEP3:相互理解の場を設ける
ここでは、各手順について解説していきます。
STEP0:現状を調査する
インナーブランディング施策を進めるにあたり、まず自社の現状を把握する必要があります。
「職場に対して満足していること」や「現場に対して不満なこと」などを、従業員サーベイや定量調査によって洗い出しましょう。
また、従業員サーベイを活用すると以下の項目の満足度がチェックできます。
・職務
・自己成長
・支援
・人間関係
・承認
・健康
・理念戦略
・組織風土
・環境
中でも、理念戦略の項目はすべての項目に大きな影響をもたらすともいわれています。
STEP1:言葉づくり
現状把握ができたら、インナーブランディング施策で浸透させたい内容を言語化(言葉づくり)する必要があります。
・何のために、会社は存在しているのか?
・会社はどのような姿を目指しているのか?
・顧客にどのようなサービスを提供することを約束しているのか?
・会社が最も大切にしている価値観は何なのか?
などを分かりやすくかつ簡潔な形で示すことが重要です。
抽象的であったり、耳慣れない言葉を使うと、意図したものではない内容が伝わってしまったり、浸透しづらいといったデメリットが生じます。
STEP2:言葉を浸透させていく
インナーブランディングで浸透させたい内容の言語化ができたら、浸透活動を行います。
しかし、言葉の浸透には以下のような課題が段階的に発生することも事実です。
・つくられた言葉自体が認知されていない。
・認知はされているが、十分な内容理解に至っていない。
・内容は理解されているが、言葉に共感していない。
・言葉への共感はあるが、行動として体現されていない。また、体現する行動が定着していない。
そのため、従業員に対してどの段階でどのような感情を抱いてほしいかを設計し、適切な施策を立てることが重要です。
STEP3:相互理解の場を設ける
最後のステップとして、相互理解の場を設けます。
会社の目指す姿が言語化され、その言葉に即した行動を実践している従業員にフォーカスし、
その従業員の「気づき」を社内全体に波及させることで、より従業員一人ひとりが目指す姿に向かって行動する組織づくりにつながります。
これまでは、全社総会や表彰式のアワードといった手法がありましたが、オンライン化、デジタル化が進む中で、WEB社内報やオンライン対話会、プロジェクト紹介映像などの施策や、タウンホールミーティングなど、多岐に渡る手法があります。
理念を従業員同士だけでなく、従業員と経営層といったように、組織全体で相互理解し共感度を高めるため、双方向型のコミュニケーションやインプット・アウトプットをすることが重要です。
インナーブランディング施策の種類
言葉を掲げて社内に浸透させていくインナーブランディング施策には、ファクショナルとエモーショナルに分類できます。
・ファンクショナル:言葉を日常的に見る・聞くような仕組みをつくる
・エモーショナル:心に訴えかけるようなアプローチをする
この2つを上手く組み合わせて、言葉を浸透させていきましょう。
また、それぞれの施策には特性があるため、特性を考慮し目的に応じて選択する必要があります。
ファンクショナル
施策例 | 長所・短所 | |
研修 | 新人社員研修 管理職/一般職研修 幹部研修 |
行動変容を促せる 話を聞き流されてしまうことがある |
制度 | 評価制度 インセンティブ |
強制力が強い 目指したい未来について従業員の心に響きづらい |
イベント | 周年イベント キックオフ 表彰式 |
一体感を醸成できる モチベーションアップになる 一過性が高い |
エモーショナル
施策例 | 長所・短所 | |
講話 | 年頭挨拶 全社朝会 |
多くの社員に伝えることができる 想いを伝えやすい 話を聞き流されてしまうことがある |
印刷物 | 社内報 理念冊子/カード 理念ストーリー本 |
何度でも読み返せる 深い理解を促せる 行動にはすぐにはつながらない 見てくれないことがある |
映像 | ヒストリー 模範社員エピソード ビジョン |
心と記憶に訴えることができる 深い理解と共感を生み出せる 一過性が高い |
Web | 社内SNS 社員情報共有サイト コーポレートサイト |
常に最新情報を発信できる 強制力を持たせられる 見てくれないことがある |
広告 | CM 新聞広告 雑誌・広告 |
拡散力や強制力がある 社内に浸透していない状態で広告を出すと、広告内容とサービス内容にギャップが生まれて、顧客から信用を失ってしまう恐れがある |
インナーブランディング施策の成功事例
インナーブランディングの施策を実施して、従業員のエンゲージメントを向上させた企業は、どのような効果が見込めているのでしょうか?ここでは、当社が支援した企業様の成功事例をご紹介します。
カルビー株式会社
カルビー株式会社は、毎年「カルビーグループダイバーシティ・フォーラム」を開催していました。これまで女性活躍をテーマに開催していましたが、ダイバーシティの本質である多様な個の「全員活躍」へテーマをシフト。全員活躍の風土(ダイバーシティ&インクルージョン)を醸成するために、インナーブランディング映像を制作。「何かを掛け合わせることで生まれる力」をキーメッセージにし、従業員の意識改革を行っています。
当社が伴走し、映像制作だけでなく、フォーラム内のどのタイミングで映像を流すかなど戦略を立案しました。映像はイベントでの使用にとどめず、現在では同社のエントランスでも他CM映像と合わせて紹介しており、同社から「周囲からも好評をいただいています。」という評判を伺っております。
>>カルビー株式会社の事例紹介はコチラ
>>カルビー株式会社の事例インタビューはコチラ
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社は、業績を伸ばすためには、KFCファミリー(本部の職員、店舗で働く従業員)が一丸となりブランドを体現していく必要があると考えていました。そのため、インナーブランディングの活動を行っていましたが、ブランドがなかなか浸透しないという課題を抱えられていました。
この悩みを解決するために、KFCブランドの原点回帰ができるブランドブックとムービーを制作。社内のイントラネットに掲載して、いつでも閲覧できる状態にしました。また、初期研修、年次研修、店長会議などの人が集まる場でも見てもらうことで、ブランドの浸透が促進されました。
また、同社は飲食店経営で欠かせないQSC×H(クオリティ、サービス、クリンネス×ホスピタリティ)を数値化しており、このような取り組みによって商品品質の向上につながっています。
>>カーネル・サンダーズ氏の想いが詰まったブランドムービーの事例紹介はコチラ
三菱ケミカル株式会社
総合化学メーカーの三菱ケミカル株式会社には「KAITEKI経営」を掲げています。この企業理念や企業方針を実現するためには、従業員がイキイキと働ける状態でなければいけません。そのため、同社は健康経営を意識した、さまざまな取り組みを行っています。
その中の取り組みの1つに、男性の育児休暇の促進があります。男性の育児休暇制度の仕組みと、実際に育児休暇を取得した従業員の声を載せた映像を用いることで、上司と部下の間で育児参加に対する精神的な障壁を取り除き、コミュニケーション促進につなげています。
インナーブランディング施策で成果を出すコツ
インナーブランディング施策の進め方や成功事例をご紹介しましたが、成果を出すためのコツを覚えておきましょう。
粘り強く取り組む
言葉を掲げて、社内に浸透するまでには時間がかかります。
企業のミッション、ビジョン、バリューを理解してもらえても、共感してもらえないこともあるでしょう。
このような場合は、従業員の感情に訴えかけて誘い出し、同じ方向を向いてもらえるように巻き込んでいかなければいけません。実際に全社イベント等を通して共感してもらうための取り組みを実施することが効果的ですが、時間をかけて粘り強く取り組むようにしましょう。
先行投資と考える
どのようなインナーブランディング施策を行うかにもよりますが、当然、コストと労力がかかります。
しかし、インナーブランディング施策を実施し、従業員のエンゲージメントが向上すれば「生産性アップ」「顧客満足度アップ」「離職防止」「事故発生率の低下」「作業品質アップ」など、さまざまな効果が見込めます。
コモディティ化が進み、競合他社と差別化が難しい時代においては、特に従業員が意欲的にイキイキと働くことが企業競争力にもつながるため、先行投資として考えるようにしましょう。
インナーブランディング施策のコストについて詳しく知りたい方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
客観的に俯瞰した視点から施策を検討する
インナーブランディングでは、従業員の感情に訴えかけて記憶に残るような言葉を掲げたり、理念の浸透方法を仕組み化して日常化させていく必要があります。
「自社らしさが出る言葉とは、どのような言葉だろう?」「自社の未来像を従業員に共感してもらうためには、どのように浸透させていけばよいだろう?」と思ったら、ブランディング支援会社に相談することも有効です。
インナーブランディング施策の実績がある会社に相談すれば、自社らしさが伝わる言葉づくりから、社内への浸透策、その後の効果検証まで伴走してもらえます。
エンゲージメント入門書『組織は「言葉」から変わる。』
『ストーリーでわかるエンゲージメント入門 組織は「言葉」から変わる。』は従業員のエンゲージメントを上げるためのインナーブランディングの手順がストーリー形式で解説されている入門書です。
企業文化を変えていくためのヒントや、事例を掲載しているため、書籍を読みながらインナーブランディング施策に取り組めるようになっています。「良いチームをつくりたい」「熱意ある会社をつくりたい」という方から好評をいただいており、インナーブランディング入門書をお探しの方はお手に取ってご覧ください。
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まとめ
インナーブランディングとは、自社の従業員を対象に、企業が目指す姿や社会に提供したいこと、大切にしたい価値観などを共有し、共感を持って行動してもらうために実施するブランディング活動であり、3STEPで進めていきます。
・STEP0:従業員サーベイで調査する
・STEP1:言葉を掲げる
・STEP2:言葉を浸透させていく
・STEP3:相互理解の場を設ける
本記事では、初心者の方でもインナーブランディングの施策に取り組めるように、進め方を分かりやすく解説しました。しかし、「自社らしい言葉が思いつかない」「従業員のエモーショナルに訴えかけるクリエイティブが作れない」とお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。
株式会社揚羽では、経営理念やブランド価値を社員が体現できる組織を作り上げる「インナーブランディング」のご支援をしています。理念浸透につながる組織づくりやインナーブランディング施策の伴走支援もできますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

株式会社揚羽 ブランドコンサルティンググループ
グループ長
サステナビリティ×インナーブランディングの専門家として、サステナビリティ経営に舵を切る企業のコミュニケーションプラニングや従業員の意識改革に取り組むブランドプロデューサー。サステナビリティとビジネスを紐解く「サステナブル・プロセス(サスプロ!)」の公式YouTuberとして、先駆け企業の改革・ビジネス実践のプロセスを紹介する活動も精力的に活動中。
書籍:『ストーリーでわかるエンゲージメント入門 組織は「言葉」から変わる。』
YouTubeチャンネル:「サステナブル・プロセス(サスプロ!)」
課題解決まで伴走します

