前回、葉隠について書いたが、今回は、宮本武蔵が書いた「五輪書」から大きな学びがあった。

五輪書は、兵法の実学として書かれた本だが、仕事に活かせるヒントが数多い。

例えば、「兵法でのものの見方」について

「戦いの時の目配りは、大きく広く全体を見ることである。
そして、人がものを見るときの目は二つある。

『見の目』と『観の目』だ。

『見の目』は、目を開いて、映るものを見て、『現象を捉える目』。
『観の目』というのは、見えるものの裏側にあるもの、
『本質や相手の心を見通す目』。

実際の戦闘の時には、『観の目』は強く、『見の目』は抑えて見るのである。
相手の身近な動きにとらわれないようにして、小手先の動きは流して、
相手の離れたところにある「本当の動き」を掴むのが、もっとも重要な兵法の目の使い方である。」としている。

これは営業場面にそのまま応用できる。
たとえば・・・、
プレゼンのあとに、お客様は意図する場合も意図しない場合も、
いろいろな質問や、要望をくださる。
そのひとつひとつの意味を深く考え、お客様の心理を掴んでこそ、
真の要望に応え、仕事を掴むことができる。

逆に、言葉そのものに反応し過ぎると、お客様が本当に成し遂げたいことを見失ってしまう。
営業現場では往々にしてあることである。気をつけたい。

もうひとつ紹介する。「一拍子の打ち」

敵と向かい合った時に、相手が自分の考えを行動に移すまでの間のことを一拍子といい、相手が攻撃するか、防御にまわるかと考えて、まだ心の準備が整わないうちに、こちらが打ちこむことが大事だと武蔵は説いている。

まず先制して、物事の主導権を取ること。

先手を取るためには、自分は動じることなく相手の心を見てとり、
その心の隙を見つけた瞬間に素早く一撃を放つこと。

これをビジネスの現場に応用すると、例えばこんなことです。

お客様は、営業マンに、「まだ企画考える段階にないから、前のキャンペーンの 振り返りが終わったら声かけますよ」と言います。
そこで、その言葉を信じて、待っているのではなく、お客様の状況を類推し、
仮説を立て、次のキャンペーンの企画を持っていけば、お客様との間で、
次のキャンペーンを一緒に推進するパートナーとして意識されることとなります。

お客様から声をかけられるのを待っていたのでは、コンペの中の一社になってしまうので、そこから抜け出すのは容易ではありません。

ただし、焦って主導権を取ろうとして、お客様の心を読みとらずに
こちらの都合で話を進めることに対して武蔵は
「相手よりも早く。ただそこだけに気が移り、そこで停滞してしまうと、
今度は自分の心に隙が生まれ、逆に相手に付け込まれてしまう。
常に平常心でいることが大事だ」と指摘しています。

落ちついて、お客様の心を見てとること。

これは、数多くのお客様と数多くの経験を経ることで培われていく技術だと思います。

社員には、ぜひこの目を鍛えてもらい、お客様の真のパートナーになってもらうことを望みます。