近年、多くの企業で「パーパス(社会における企業の存在価値)」の策定が進んでいます。一方で、「パーパスを作ったものの、現場にどう浸透させればいいかわからない」と悩む企業も少なくありません。パーパスは単なるスローガンとして掲げるだけでなく、従業員一人ひとりが体現し、一貫した行動を取れるように組織全体へ浸透させてこそ意味を持ちます。
今回は、企業のパーパスを効果的に浸透させるための「4つのステップ(認知・理解・共感・行動)」と、具体的な施策アイデア、そして陥りやすい失敗パターンを解説します。自社のパーパス浸透にお悩みの方は、ぜひご一読ください。
なぜ重要?パーパス浸透が企業にもたらす価値
パーパスが浸透していなくても組織は機能しますが、持続的な成長や従業員の高いパフォーマンス発揮は期待できません。パーパスが浸透し、従業員が「自社は何のために存在するのか」を正しく理解していれば、変化の激しい環境下でも明確な行動指針に基づき、自律的に判断・行動できるようになります。
実際に理念浸透が進んでいる企業はそうでない企業と比べて「3倍位上活気があり、業績は2倍以上の伸びを実感している」との調査データや、「顧客満足度が6割近く向上した」というデータも存在します。
経営層だけでなく、従業員一人ひとりが『自分ごと』として腹落ちしている状態を目指すことが、企業全体の価値向上(コーポレートブランディング)に直結します。
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そもそもパーパスとは?企業理念との違いとは?
パーパス(Purpose)は「企業の社会における存在価値」を表す言葉です。企業理念との違いは、顧客や取引先だけでなく「社会とのつながり」を強く意識している点にあります。企業の「WHY(なぜ私たちはここにいるのか)」を言語化したものであり、これが浸透することで、従業員は日々の業務の社会的意義を実感しながら働くことができます。
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実践ガイド:パーパス浸透までの具体的な4ステップ
パーパスの浸透は中長期的な取り組みです。従業員の心理的変化に合わせて、以下の4つのステップで段階的にアプローチしていくことが求められます。
【ステップ1】認知:まずはパーパスを「知ってもらう」
初期段階における課題は、「そもそも自社にパーパスがあることを知らない」「言葉を覚えていない」という状態です。ここでは部署や役職に関係なく、全従業員に届く「視覚的・直感的なアプローチ」が有効です。
■ 具体的な施策アイデア
- コンセプトムービーの制作・配信: 文章だけでは伝わりにくい背景や想いを、映像で直感的に伝える。
- 社内ポスターやノベルティの配布: オフィス空間やPCのデスクトップ背景など、日常的に目に入る場所に展開する。
- トップからの継続的なメッセージ発信: 社内報やイントラネットを通じ、社長自らがパーパスの意図を定期的に発信する。
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【ステップ2】理解:パーパスの真意を「腹落ちさせる」
言葉を知っている状態から、「なぜそのパーパスなのか」「自分の業務とどう結びつくのか」を理解するステップです。一方的な発信ではなく、業務と結びつけて考える機会やツールの提供が必要です。
■ 具体的な施策アイデア
- ブランドブック(カルチャーブック)の配布: パーパスの背景や歴史、具体的な行動基準をまとめたハンドブックを制作する。
- 管理職向けの浸透研修: 浸透のキーマンとなる管理職向けに、部下へ自分の言葉で説明できるようにする研修を実施する。
- 部門ごとの読み合わせ会・朝礼での共有: クレドカードなどを活用し、日常業務の中でパーパスについて対話する機会を設ける。
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【ステップ3】共感:「やりたい!」を引き出し自分ごと化する
理解の次は「共感」のステップです。「やらされ感」を払拭し、「自分もパーパスの実現に貢献したい」という当事者意識(エンゲージメント)を育みます。
■ 具体的な施策アイデア
- 社員参加型のワークショップ: 部署を横断したチームで「自分たちの業務でパーパスをどう体現するか」を議論し、アクションプランを作る。
- 社内表彰制度(アワード)の実施: 売上だけでなく、パーパスを体現した行動をとった社員を称賛する場を設ける。
- 社内報でのストーリー共有: パーパスに基づいた現場の取り組みを、インタビュー記事や動画として継続的に発信する。
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【ステップ4】行動:パーパスを体現し、周囲に好影響を与える
最終ステップは、日々の業務判断の基準がパーパスになっている状態です。個人の行動が周囲へ好影響を与え、組織のカルチャーとして定着します。行動を促すには、「仕組み(人事制度など)」との連動が不可欠です。
■ 具体的な施策アイデア
- 人事評価制度への組み込み: パーパスに基づく行動特性を評価基準に入れ、「パーパスを体現する人が評価される」仕組みを作る。
- 新規事業提案や採用活動との連動: パーパスを軸にした新規事業アイデアの公募や、採用リクルーターとしての発信活動に組み込む。
具体的な行動に移すためには、どういった行動がパーパスの実現につながるかが明確となる実例があると良いでしょう。その点で効果的なのが社内報やイントラでのエピソード共有です。
たとえば、ソニーグループ株式会社では、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスのもと、感動を生み出すことに挑戦しています。そのためには、クリエイターや異業種の企業など、さまざまなパートナーと共創することが不可欠であるとして、その具体的なエピソードを『SESSIONS』対談シリーズとして公開しています。
参考記事:ソニーグループポータル『SESSIONS』対談シリーズ
また、パーパスを人事制度へ組み込むことは、従業員の行動変容を促す上で高い強制力を発揮します。パーパス実現のための行動が評価として自分にも還元されれば、行動するモチベーションが高まります。パーパスに基づいて行動してこそ企業の存在価値を高められるため、「行動」には人事制度への組み込みのような強制力のある施策も必要です。
関連資料:インナーブランディングに効く8つの施策
パーパス浸透で失敗しやすい3つの落とし穴
パーパス浸透を進める中で、多くの企業が陥りがちな失敗パターンがあります。以下の点に注意して施策を設計しましょう。
経営層と現場の「温度差」を放置してしまう
経営陣だけで作った言葉を一方的に現場へ下ろすだけでは、現場の反発を招く恐れがあります。策定段階から現場を巻き込むか、ステップ2(理解)での丁寧な対話が必須です。
評価制度と連動しておらず、結局「数字」しか見られない
パーパスを掲げても、人事評価が従来の売上重視のままでは、従業員の行動変容は期待できません。ステップ4(行動)にあるような制度との紐づけが必要です。
「作って終わり」の単発イベントになっている
ポスターの掲示や動画の配信を一度行っただけで終わってしまうパターンです。パーパス浸透は継続的なコミュニケーション設計が求められます。
事例から学ぶ!パーパス浸透の取り組み
実際に揚羽がご支援した、パーパス浸透の成功事例をご紹介します。戦略策定からクリエイティブ制作、制度への落とし込みまで伴走しています
株式会社レゾナック・ホールディングス
支援領域:言葉づくり / 戦略策定 / コンテンツ制作
【背景】
2023年1月、旧昭和電工グループと旧昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成)が統合し、『株式会社レゾナック・ホールディングス』および『株式会社レゾナック』が誕生しました。統合に伴い、新たに策定された経営メッセージや人事制度を浸透させるための支援を実施しました。
インナーブランディング起点で「これをすることでどういう姿になっていきたいのか」といった、What/Whyをしっかりと考えた上で、ストーリー性のあるコミュニケーションを取ることをご提案しました。
【具体的な取り組み】
まずは、CHRO組織の社員やCEOにインタビューを行い、会社としてありたい姿をストーリー化しました。あわせて、キャッチフレーズも開発しています。

また、言葉やビジュアルを社内に広く伝えるため、ポスターやスタイルブック(行動指針ブック)などのコミュニケーションツールを展開。パーパスと連動する人事制度への理解を深めてもらうため、人事制度のすべてがわかるマニュアル『デベロップメントガイド』も制作しています。
同時に、社外にも発信して同社の考えに共感する人材の採用につなげるため、社内外向けWebページも制作。複数のコミュニケーションツールの展開、そして理解を深めるコンテンツの制作により、認知・理解に重点を置いて浸透に力を入れた事例です。
事例紹介:株式会社レゾナック・ホールディングスさま 支援実績
三井金属鉱業株式会社
支援領域:戦略策定 / 言葉づくり / コンテンツ制作 / 浸透活動
【背景】
現在は先行きが不透明で将来の予想が困難な時代であり、企業は常に変化して柔軟かつ迅速に対応することが求められています。同社は、変化の激しい時代の中で「ブレない軸」を持つことが必要と考え、2024年に創業150年を迎えたことを機に、これからも持続可能な成長を続けるための判断軸となるパーパスを策定しました。
【具体的な取り組み】
パーパスのフレーズについて、揚羽のコピーライター同席のもと経営層とプロジェクトメンバーでワークショップを実施。平行してパーパスを基軸とした2030年のありたい姿(ビジョン)の言語化も行いました。

また、パーパスの社内浸透のため、部署横断型で有志の社員を集めたタスクフォースチームを組成し、4か月にわたり毎週ミーティングを実施。
パーパスの社内浸透には、浸透施策を検討するプロセス段階から社員が参画することが有効であることから、チームの結成に至りました。ミーティングでは、それぞれの現場の社員が納得できる浸透施策を検討し、その結果、浸透は以下ステップで実施していくことを決定しています。
- パーパスを視覚的に認知させるビジュアル
- パーパスに込めた想いをストーリーで伝えるための映像
- パーパスを双方向で理解を促す仕組みづくり
それぞれの施策を並行し、6ヶ月にわたり制作・実装に取り組みました。浸透施策については、同社のコーポレートコミュニケーション部や人事部、経営企画部と定例ミーティングを引き続き実施。同時に同社の150周年施策についても進行しており、周年企画を「パーパス浸透を加速させるための施策」と位置づけ、パーパスの認知・理解に向けた取り組みに注力しています。
事例紹介:三井金属鉱業株式会社さま 支援実績
まとめ:パーパス浸透を成功させ、企業価値の向上へ
パーパスは策定して終わりではなく、浸透してこそ効果を発揮するものです。パーパスがない・浸透していなくても組織は機能しますが、社会における企業の存在価値を高めづらいでしょう。
「認知」「理解」「共感」「行動」の4つのステップは、順番に段階を踏んで取り組むことが重要です。また、映像制作、冊子化、イベント企画、人事制度との連動など、フェーズに合わせて多角的なアプローチが必要になります。
「パーパスを作ったが、現場の行動が変わらない」「どんな浸透施策から手をつければいいかわからない」といったお悩みがありましたら、インナーブランディングの戦略策定からクリエイティブ制作まで一気通貫で伴走できる揚羽に、ぜひ一度ご相談ください。










