エンゲージメントとは、「誰か・何かに貢献しよう」という意欲のことです。従業員のエンゲージメントを高めることは、最終的に業績向上につながります。
今回は従業員エンゲージメントを向上させるとはどういうことかをふまえ、従業員エンゲージメント向上に効く6つの施策の具体例をご紹介します。

従業員エンゲージメントの向上とは

従業員エンゲージメントが向上するということは、従業員が企業に貢献する意欲を高め、企業とのつながりを強くすることです。

エンゲージメントとは「誰か・何かに貢献しよう」という意欲のことであり、従業員と会社とのつながりの強さ、従業員が会社に持つ愛着心の高さともいえます。従業員エンゲージメントが高いと従業員が企業に貢献したい意欲が高く、かつ企業や仕事に誇りや愛着を持っており、仕事への熱意も高い状態です。

従業員エンゲージメントが高い従業員は職場環境や業務内容、給与や福利厚生などにも満足している状態にあり、従業員満足度を高めることも従業員エンゲージメント向上に含まれる要素です。

従業員エンゲージメントを向上させるメリット

従業員エンゲージメントが向上すると、企業に以下のようなメリットをもたらします。

  • 従業員の生産性向上
  • 顧客満足度の向上
  • 業績向上
  • 離職率の低下
  • 課題に取り組む姿勢の改善

従業員エンゲージメントが向上すると、最終的に業績向上につながります。なぜなら、仕事への意欲が高いと効率的に業務を進めることができ、必然的に生産性が向上するからです。また、仕事や提供する商品・サービスに対して誇りや愛着を持っているため仕事の質の向上から、顧客満足度の向上にも繋がり、利益を生み出しやすくなります。

さらに、仕事に熱意や意欲があるため働きがいを感じており、職場環境や業務内容、給与や福利厚生にも満足していることで離職率が低下しやすい点もメリットです。そして、会社への貢献意欲が高い状態であるため、問題や課題が発生した際も積極的に取り組む姿勢が醸成されます。従業員が主体的に課題に取り組む姿勢があることで、企業全体のパフォーマンス向上につながります。

従業員エンゲージメントを構成する3つの指標

当社では、下記3つの指標が従業員エンゲージメントを構成していると考えています。

  • 「働きがい」
  • 「働きやすさ」
  • 「思い入れ」

従業員エンゲージメントを向上させるということは、これらの指標に対して対策をとることです。それぞれ、具体的にどういった指標であり、そのような要素から構成されているのかをみていきます。

「働きがい」を生み出す要素

  • 経営計画
  • 事業内容
  • 人材配置
  • 能力開発
  • 職務内容

働きがいを生み出すには、従業員の配置や能力開発、業務内容に対して納得感を持ってもらうことが必要です。

たとえば、適材適所な人材配置とは、従業員が自身の能力を発揮でき、成果を創出できるポジションで働けることです。納得できる人材配置ではモチベーション高く業務に取り組むことができ、かつ成果も出しやすくなるため人事評価にもプラスに影響します。能力や経験、スキルを活用して成果を出せれば良い人事評価が得られ、働きがいを感じられる状態になることで従業員エンゲージメントが向上します。

このように、働きがいを感じられることで生産性やモチベーションが向上した結果、企業への貢献意欲も高まるのです。

「働きやすさ」を生み出す要素

  • 雇用環境(待遇)
  • 職務環境
  • ワークライフバランス
  • 評価・報酬

働きやすさを感じられる組織には、従業員が定着しやすくなります。働きやすさを生み出す要素は主に環境や報酬といった外部要因です。そして、近年は仕事と生活の調和「ワークライフバランス」が重要視されています。

仕事は暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすものです。従業員にとって仕事がポジティブなものになるためには、仕事に追われて心身が疲労する状態にならないことが大切です。

さまざまな要素に総合的に満足できることで働きやすさを感じることができるため、制度や環境を整えることが働きやすさを生み出すことにつながります。

「思い入れ」を生み出す要素

  • 経営理念
  • 組織風土
  • 共有の価値観
  • コミュニケーション

「思い入れ」を生み出す要素は、おもに企業文化です。経営理念や共通の価値観が従業員に浸透してこそ組織に対する共感が形成され、結果として自発的な貢献意欲が引き出されます。

「働きがい」「働きやすさ」が可視化できる要素である一方、「思い入れ」は経営理念への共感や自社の価値観のような可視化されにくい要素です。それゆえに、アプローチが難しく、なおざりにされやすい部分ですが、従業員エンゲージメントを醸成する上では非常に重要な要素です。

また、企業文化が十分に浸透していない中でエンゲージメントを高める施策に積極的に取り組んでも、表面的なものにとどまってしまう恐れがあります。そのため、従業員エンゲージメントを向上させる上では「思い入れ」を生み出す要素を明確化・浸透させる取り組みを優先的に実施することがポイントです。

従業員エンゲージメント向上に効く6つの施策

従業員エンゲージメント向上の施策とは、「働きがい」「働きやすさ」「思い入れ」の3つの指標を高めることです。ここで紹介する6つの施策は、従業員エンゲージメントを構成する下記指標にアプローチできます。

 

働きがい ・人材育成

・人事制度

働きやすさ ・オフィス・ツール

・社員補助

・働き方支援

思い入れ ・組織文化の醸成

 

従業員エンゲージメント向上に効く6つの施策を具体的な施策事例とあわせて解説します。

人材育成

施策例

キャリア設計 1on1ミーティング

・目標管理制度(MBO)

・リバースメンタリング制度 など

トレーニング ・リーダーシップ・マネジメント研修

・資格取得支援

・社会人インターンシップ制度 など

 

人材育成の施策は「キャリア設計」と「トレーニング」の主に2つが主軸です。

キャリア設計が明確であれば、組織で継続して働きたいと思えるようになり、従業員の定着が促されます。企業が人材育成に力を入れるほど、従業員が企業から自分の成長を支援されていることが実感でき、組織への貢献意欲や帰属意識が向上します。

人事制度

施策例

アサインメント ・社内ドラフト制度

・ジョブローテーション制度

・好きな業務に使える時間 など

給与・評価 賃金制度の改定

・給与のオープン化

・360°評価 など

 

人事制度は人材育成に関連する要素も多くあります。なかでも、外発的動機づけとなる要素である給与や評価はエンゲージメントに大きく影響します。努力や頑張り、成果が正しく給与や評価に反映されることで、従業員は働きがいを実感しやすくなるのです。

オフィス・ツール

施策例

オフィスファシリティ ・社員食堂

・オフィス設置型食事補助

・短時間の昼寝、リラックスタイム

・マッサージチェアの導入

・集中スペースの設置 など

ツール チャットツール

・必要なPCの選択権

・大型モニターやマウスの充実 など

 

オフィス環境が整備されている、ツールが充実していることは働きやすさに影響する要素です。仕事しやすい環境や疲労が軽減できる制度・環境が整備されていること、業務効率化が叶うツールが充実していることは生産性の向上につながり、かつモチベーションや仕事への意欲も高まります。

社員補助

施策例

飲食補助 ・飲み会や懇親会の費用負担

・フードドリンク&スナックの無料提供

・会社での朝食サポート など

家庭補助 家賃補助制度

・通勤手当

・社内保育園 など

健康補助 ・健康診断サポート

・スポーツジムの補助

・産業医や臨床心理士との定期的な面談 など

 

社員補助はいわゆる福利厚生です。社内の補助だけでなく、家庭・家族や健康に関する補助など対象はさまざまです。補助対象が充実しているほど従業員も働きやすさを感じられ、満足度が向上し、貢献意欲も高まります。

働き方支援

施策例

休暇制度 ・男性の育休取得推進

・有給取得インセンティブ制度 など

自由な雇用体系 副業制度

・雇用形態を自由に選べる制度

・退職者再雇用制度 など

自由な時間 ・フレックスタイム制度

・1日6時間労働制度

・時差通勤制度 など

自由な場所 ・リモートワーク制度

・アウトドアワーク

・ワーケーション制度 など

社会貢献活動 ・ボランティア

・プロボノ活動の推進

・社会貢献活動の推進支援

・SDGs活動の推進 など

 

近年は多様な働き方への需要が高まっており、多様な雇用形態や時間・場所にとらわれない働き方の導入がエンゲージメント向上にも有効です。働き方支援の施策では、ワークライフバランスを生み出す休暇制度など働きやすさを生み出すことに着目します。

組織文化の醸成

施策例

コミュニケーション ・ミッション・ビジョン・バリューの明確化・浸透

・Web社内報

・サンクスメッセージ など

社内イベント 社員旅行

・表彰式

・社内の部活動支援 など

 

組織文化を醸成する施策は、いわゆる「インナーブランディング」です。自社の価値観を伝えていくためのコミュニケーションやイベントの実施による価値観の共有が組織文化醸成の主な施策内容となります。

経営理念やミッション・ビジョン・バリューの明確化・浸透は優先的にやるべき施策といえます。なぜなら、組織の共通の価値観となる要素であり、ここが浸透していないと施策も表面的なものになってしまう恐れがあるからです。

関連記事:「インナーブランディングの施策とは?具体例を紹介」

従業員エンゲージメント向上において特に重要なこと

従業員エンゲージメント向上を目指すには、働きがいや働きやすさ、企業文化を主軸にさまざまな要素へのアプローチが必要です。その上で多くの企業ができておらず、かつ重要なポイントが以下2つです。

 

  • 明確な指針となる言葉がある
  • 上司が部下を褒める

 

これらはエンゲージメントを高める上で当たり前と思えますが、実はできていない企業が多いポイントです。なぜこの2点が重要なのか、そのためにはどうすれば良いかをみていきます。

明確な指針となる言葉がある

従業員エンゲージメントを向上させる上で、理念・戦略を明確に言語化することが重要です。言葉があり、それが文化にまで昇華している会社は従業員とのつながりが強く、同じ方向に向かって進むことができます。

経営理念の重要度が高まったのは2000年代と比較的最近であるため、現時点でも明確化できていない企業も少なくありません。あるいは、明確に策定できていても浸透できていないケースもあります。指針となる言葉を策定して理解してもらい、浸透させることは優先的に取り組むべきです。

従業員に理念が浸透していない原因は、以下のようにさまざまです。

従業員の理念浸透度合い

理念の浸透度によって課題は異なるため、取り組むべき施策もさまざまです。

上司が部下を褒める

日本能率協会マネジメントセンターの調査「イマドキ新人社員の仕事に対する意識調査2021」によると、Z世代は「できている点に目を向け、褒めてもらう」指導方法を求めています。

また、リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2022」では、新入社員が仕事をする上で重視することとして「貢献」が成長を上回りました。自分が貢献できているかどうかは、他者からの評価によって判断するものです。それゆえに、上司が部下を褒めることは貢献したい意欲を満たすことにつながります。

「褒める」行為を日々の業務内で意識するだけでなく、褒めることを仕組み化することもポイントです。代表的な施策例には、サンクスカードや表彰制度があります。

貢献意欲は、従業員のやる気を引き出すことで生まれるものです。「褒める」ことはやる気を引き出す原動力や貢献できていることの証明となり、エンゲージメント向上にもつながります。

関連記事:「褒め合う・感謝し合う」組織風土づくりに、いま関心が高まる理由」

まとめ

従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業に貢献したい意欲が高い・強い状態です。従業員エンゲージメントが高い・強い貢献意欲は生産性や仕事の質向上につながり、結果的に利益を生み出します。そのほか、従業員エンゲージメントを向上させることで、離職率の低下や従業員が課題に取り組む姿勢の改善などさまざまなメリットがあります。

従業員エンゲージメントは「働きがい」「働きやすさ」「思い入れ」の3つの指標から構成され、各指標はさまざまな要素から形成されます。つまり、従業員エンゲージメントを高めるためには、これら3つの指標を高める施策の実施が有効です。

今回ご紹介した6つの施策とあわせて、明確な指針となる言葉の策定・浸透、部下を褒めることも意識してエンゲージメント向上の施策に取り組んでみましょう。

「自社のエンゲージメントが把握できていない」「エンゲージメントを高めるためにどういった施策に取り組めばいいかわからない」など、エンゲージメント向上に課題やお悩みがある場合は、ぜひ揚羽にご相談ください。

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