サステナビリティブランディングとは?実施の目的や具体例について解説

SDGsが社会的に浸透し、さまざまな課題の解決が進められるなか、「サステナビリティブランディング」の重要性が高まっています。企業は積極的にサステナビリティブランディングに取り組み、企業価値を高めていくことが求められるでしょう。
しかし、サステナビリティブランディングの基本や目的を理解していないと、「SDGsウォッシュ」を引き起こして逆に企業価値を下げる可能性もあります。そこで本記事では一般的なサステナビリティブランディングの概要や目的について解説しつつ、実際に企業が実施してきた具体例を紹介します。
サステナビリティブランディングとは
まずは「サステナビリティブランディング」の一般的な意味について、以下で解説します。
サステナブルに関する行動を通して自社の価値を高めること
サステナビリティブランディングは、「サステナブル(持続可能な取り組み)」の考え方を通じて自社のブランディングを行い、企業価値を高めることを意味します。自社ビジネスによる利益確保と社会の課題解決を同時に達成し、競合他社との差別化を図ることも含まれます。
具体的には事業における行動に、環境問題への配慮や貧困問題絵への支援などを取り入れて、持続的に活動を行うことがサステナビリティブランディングの基本と言われています。
サステナビリティブランディングの目的
一般的に企業がサステナビリティブランディングに取り組む際には、以下の内容が目的になることが多いです。
サステナブルという可能性から新たなブランドの構築を目指す
サステナブルを起点にして社会貢献することで、新しいブランドの構築を目指すのがサステナビリティブランディングの目的の一つです。近年はSDGsにおいて自社がどのような取り組みを行えるのかを公表し、サステナブルな活動を実施することもブランド確立につながっています。
従来にはない新たな企業価値の創造を行うことは、サステナビリティブランディングの目的として設定可能です。
サステナビリティブランディングによってステークホルダーからの共感を得る
サステナビリティブランディングへの取り組みは、ステークホルダー(消費者や取引先など)から共感を得るきっかけになります。共感を得ることができれば、商品やサービスの購入を行う際に自社の想起率を高めて、導入の動機付けを行えるでしょう。
ステークホルダーとの関係性を良好なものとする一つの手段としても、サステナビリティブランディングは注目されています。
サステナビリティブランディングが注目される背景
サステナビリティブランディングが注目されている理由には、以下の背景が関係していると考えられます。
SDGsやサステナブルへの関心が世間一般で高まっている
2015年9月に開催された国連サミットにおける「持続可能な開発のための2030アジェンダ」によって、SDGsが国際目標として制定されました。その結果SDGsやサステナブルという言葉は世間一般に浸透し、人々の興味関心を引くことになっているのです。
そのため、企業は積極的にサステナビリティブランディングを意識した取り組みを行って、一般層や他企業へアピールすることが必要になっています。
サステナブルには顕在化していない問題も多い
サステナビリティブランディングは、まだ顕在化されていない社会問題を明らかにするという点でも注目されています。サステナブルやSDGsの歴史は浅く、考え方や取り組み内容には隠れた課題も多いです。
そのため企業はサステナビリティブランディングを通して、自社が本当に取り組むべき行動や課題解決方法をみつけていくことが求められます。新しい課題の発見とそれを解決する方法の考案ができれば、企業価値を高めることにもつながるでしょう。
サステナビリティブランディングの実施におけるポイント
サステナビリティブランディングを実施する際には、以下のポイントを把握しておくのがおすすめです。
自社の事業とマッチするサステナブルな行動を把握する
「サステナブルな社会」を実現する方法は、一つではありません。たくさんの方法が存在するため、自社の事業と関連性が薄い活動に力を入れてしまうと、成果が出ないことも懸念されます。
そのためサステナビリティブランディングを実施する際には、自社の事業を今一度見直し、内容にマッチしている行動を把握することがポイントです。その上で他企業が取り組んでいないオリジナルの活動を発見して、活動に移します。
サステナビリティブランディング=ボランティア活動ではないことを理解する
前提として、サステナビリティブランディングおよび関連する行動は、ボランティア活動とは異なります。社会的な課題の解決が事業および企業の成長に結びつくことが、サステナビリティブランディングの基本です。
企業にとってのメリットがなければ、長期的に持続性のある活動を行うことは難しくなります。そのためサステナブルな活動がどのようなメリットを生み出すのか事前に想定することも、サステナビリティブランディングを成功させるポイントです。
社内報や従業員向けのメディアを通してサステナビリティブランディングの意義を共有する
サステナビリティブランディングへの取り組みを成功させるには、従業員の協力が欠かせません。そのため社内報や社内用のメディアなどを活用し、サステナビリティブランディングの意義や価値を共有するのもポイントです。
「サステナブルは自分の業務に関係ない」と考えている従業員は、決して珍しくありません。そういった従業員にいきなりサステナブルへの取り組みを強制しても、成果を出すことは難しいでしょう。まずは従業員にサステナブルの基本と価値を伝え、会社全体でサステナビリティブランディングに取り組む準備をするのが重要です。
サステナビリティブランディングにおける「SDGsウォッシュ」のリスク
サステナビリティブランディングへの取り組みを行う際には、「SDGsウォッシュ」のリスクについての理解も必要です。
SDGsウォッシュとは?
SDGsウォッシュとは、SDGsやサステナブルな活動を実施していると言いながら、その発言と中身が乖離している状態のことを指します。環境に配慮した活動を実施しているとしながら、実際にはまったく効果のない製品を販売する「グリーンウォッシュ」が語源となった造語です。
SDGsウォッシュの状態を回避することが、サステナビリティブランディングを行う際の一つの課題となり得ます。
SDGsウォッシュは企業としての信頼を損なう
サステナブルな活動に取り組んでいると言いながら、その実態が発表内容と異なる場合、SDGsウォッシュと認識されてしまいます。SDGsウォッシュとして認識されると、企業や消費者からの信頼を損ない、今後の取り引きに影響を及ぼすリスクがあるでしょう。
SDGsウォッシュに該当することは、SDGsにまったく取り組んでいない企業よりも評価が低くなる恐れがあります。サステナビリティブランディングを実施する際には、SDGsウォッシュの批判を受けないための対策も重要です。
サステナビリティブランディングでSDGsウォッシュを避けるための方法
サステナビリティブランディングへの取り組み時にSDGsウォッシュを避けるためには、以下の方法が検討されます。
サステナブルやSDGsへの理解を深める
サステナブルやSDGsへの理解が追いついていないと、SDGsウォッシュとして批判を受ける可能性が高まります。まずは企業全体でサステナブルやSDGsについての知識を身に付け、その上で具体的な施策や取り組みをアピールするのが基本的な流れとなるでしょう。
企業によって取り組めるサステナブルの内容や方向性は異なるため、他企業のスタイルのただの真似になってしまうと、SDGsウォッシュと認識される可能性があります。自社独自の魅力や事業内容を押し出して、オリジナルの取り組みを実行するのがポイントです。
具体性の欠ける表現は避ける
SDGsウォッシュを避けるには、なるべく具体的な目標を掲げるのもポイントです。例えば「環境に優しい素材に変える」ではなく、「原材料の〇〇%を△△に切り替えて、環境への影響を抑える」といった具体的な表現で取り組み内容を伝えます。
曖昧な表現でサステナブルへの取り組みをアピールすると、ちょっとした行動や発言がSDGsウォッシュにつながりかねません。具体的な内容は自社でサステナブルへの取り組みにおける達成度を測る際にも役立つため、まずは表現方法に具体性を持たせることを意識しましょう。
サステナビリティブランディングの具体例
企業のサステナビリティブランディングの実施は、すでに重要課題の一つとなっています。以下では、サステナビリティブランディングの具体例について解説します。
サステナビリティブランディングの具体例1.味の素
食品会社大手の味の素は「Eat Well,Live Well.」というスローガンを提示し、食と健康を軸に未来を作る企業活動を進めています。地球環境を意識したエコな製品づくり「バイオサイクル」の実施や、SDGsに関する重要課題(マテリアリティ)の設定を行っているのも特徴です。
また、ベトナムで学校給食を提供するなど、具体的な支援を行っている点も評価される事例となっています。
サステナビリティブランディングの具体例2.Patagonia
アウトドアブランドの「Patagonia」は、「このジャケットを買わないで」というメッセージをブラックフライデーに発信したことでも話題になりました。ブラックフライデーは、アメリカでもっとも商品が売れる日です。だからこそ「不要なものを購入して地球に負担をかけないようにしよう」というメッセージを、Patagoniaは企業ブランドの考え方として提示したのです。
サステナビリティブランディングの具体例3.コーセー
化粧品販売などを行うコーセーは、2009年から「SAVE the BLUE」というサステナブル活動を実施し、サンゴの育成などに取り組んでいます。その後サステナブルへの注目が集まるなかで、2020年に取り組み内容をアップデートし、自社の人気ブランドから「雪肌精 クリアウェルネ」という商品を発売しました。
バイオマスPETを採用してCO2を削減したり、商品外装のティアテープ包装をなくしてプラスチック使用量を削減したり、説明書やパンフレットをQRコードに転用したりすることで、使用する紙の削減を実現しています。
まとめ
サステナブルに関する取り組みを通して自社ブランドを確立するサステナビリティブランディングは、現代社会で事業を展開する企業には欠かせないものとなっています。この機会にサステナビリティブランディングの意味や目的を明確にして、自社ならではの方法でサステナブルへの取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
「株式会社 揚羽」は、企業ブランディング支援だけでなく、SDGs専門YouTube「SDGsBiz」の発信や専門メディアへの寄稿など、SDGsにも精通しています。その企業の特徴を顕在化し「自社らしい取り組みや情報発信」をサポートする「サステナビリティブランディング支援」を実施しています。サステナビリティブランディングに関する具体的な計画を立てる際には、ぜひ多くのサステナビリティブランディングの支援実績を持つ揚羽にご相談ください。

制作部 ディレクター
まだ世の中がWIN95の時代、高校3年でMacを買うほどのアップル好きのPCオタク(元)。大学在学中にMacで仕事がしたいと思い始め、少人数規模の広告代理店へ。20年デザイナー兼ディレクター業を経て、コロナ禍に揚羽に入社。
課題解決まで伴走します

