SDGsをビジネス視点で捉える

みなさま、こんにちは。ディレクターの松村です。
先日、SDGsを象徴する17のゴールのカラーを使用したモザイク模様が印象的な「SDGsトレイン」という東急電鉄の車両を見かけました。SDGsバッジをつけたビジネスマンを見かけることも多くなり、朝日新聞社の調査では2021年12月時点で「SDGsという言葉を聞いたことがある」と答えた人が76.3%に達したそうです。盛り上がりが顕著になってきた今、企業がSDGsへの取り組みを発信するのは当たり前になってきました。

 

当社のYouTubeチャンネル「SDGsBiz(エスディージーズビズ)」では、「SDGsはビジネスを加速させ、ビジネスはSDGsを達成へと導く」をテーマに、ビジネスに今すぐ役立つ生きた情報をお届けしています。ここでは「SDGsBiz」で紹介している17の目標の解説に加え、SDGsの達成に向けたビジネスに取り組む企業の事例を紹介していきます。

目標6「安全な水とトイレを世界中に」を達成するためのターゲット

SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。今回は目標6「安全な水とトイレを世界中に」に焦点を当てます。

 

目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけることをゴールとした目標です。この目標には、ターゲットを呼ばれる具体的な達成基準が6つ、実現のための方法が2つ示されています。日本ユニセフのサイトによれば、下記のように定義されています。

目標6のターゲット

SDGs

 

6-1
2030年までに、だれもが安全な水を、安い値段で利用できるようにする。

 

6-2
2030年までに、だれもがトイレを利用できるようにして、屋外で用を足す人がいなくなるようにする。女性や女の子、弱い立場にある人がどんなことを必要としているのかについて、特に注意する。

 

6-3
2030年までに、汚染を減らす、ゴミが捨てられないようにする、有害な化学物質が流れ込むことを最低限にする、処理しないまま流す排水を半分に減らす、世界中で水の安全な再利用を大きく増やすなどの取り組みによって、水質を改善する。

 

6-4
2030年までに、今よりもはるかに効率よく水を使えるようにし、淡水を持続可能な形で利用し、水不足で苦しむ人の数を大きく減らす。

 

6-5
2030年までに、必要な時は国境を越えて協力して、あらゆるレベルで水源を管理できるようにする。

 

6-6
2020年までに、山や森林、湿地、川、地下水を含んでいる地層、湖などの水に関わる生態系を守り、回復させる。

 

6-a
2030年までに、集水、海水から真水を作る技術や、水の効率的な利用、排水の処理、リサイクル・再利用技術など、水やトイレに関する活動への国際協力を増やし、開発途上国がそれらに対応できる力を高める。

 

6-b
水やトイレをよりよく管理できるように、コミュニティの参加をすすめ、強化する。

 

「6-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「6-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

 

日本ユニセフ「SDGs CLUB」より

日本も無縁ではない「水の問題」

私たちが住む日本は、水道普及率は約98%*であり、水を飲む・使うといった行為は日常そのものです。しかし、世界の現状では私たちの当たり前が当たり前ではない人々がいます。WHO(世界保健機関)では、水にアクセスできる定義を「1km以内に一人1日20リットルの水を確保できる場所があること」としています。この条件を満たすことができない人は世界に約9億人いると言われており、水道設備がない暮らしをしている人が20億人、トイレがなく、道ばたや草むらなど屋外で用を足す人は4億9400人います。安全な水が手に入らないということは、さまざまな感染症への感染リスクが高く、途上国では子どもが命を落とすケースも少なくありません。

 

これらは「水不足」が原因として挙げられますが、水不足には人口の増大、産業の発展、気候変動、水源破壊、水質汚染などさまざまな問題があります。製造業などを中心とする産業は大量の水を使用すると同時に、工業排水を通じて環境汚染を引き起こしてしまっています。また、日常生活で気づきにくい「バーチャルウォーター」という問題もあります。バーチャルウォーターとは、食料を輸入している国(消費国)において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものです。食料の輸入は水の輸入でもあり、食料自給率約40%の日本は海外の水に依存しているともいえます。

 

水も限りのある資源と認識し、大切に使っていく、守っていくことが大切です。そして、個人レベルでの節水はもちろんですが、企業単位での取り組みが増えれば大きな効果が見込めるはずです。

 

*国民生活センター「水道の現状と未来を考える―水道法の一部改正―」より

ビジネスとして「安全な水とトイレを世界中に」に取り組む企業の事例紹介

ここからは、だれもが安全な水とトイレを利用できるよう世界を実現するために取り組みを実施している企業の事例を紹介します。

◎企業事例1 【伊藤園グループ】生産活動における水使用量の削減を推進

伊藤園グループは、3つのサステナビリティ重要課題「消費者課題」「コミュニティ・社会」「地球環境」を設定しており、「地球環境」への取り組みとして「水の管理」を掲げています。

 

同社では容器に内容物を詰める作業において、東洋製罐株式会社と共同開発した「NSシステム」という使用しています。容器内の殺菌に薬剤を使用しない製造方法のため、薬剤を洗い流す余分な水を使用せず、水使用量の削減および排水負荷の低減を実現させました。そのほかにも、名護工場における冷却や洗浄に使用した水の再利用など、積極的な節水に取り組んでいます。

 

商品でもある水という資源を無駄にしないことで、長期的にビジネスを続けるための取り組みということができるでしょう。

 

伊藤園「サステナビリティ 地球環境 水の管理」より

◎企業事例2 【TOTO】すべての人の使いやすさを追求するトイレ

TOTOは日本初の温水洗浄便座の開発を手掛け、水まわり住宅総合機器メーカーです。よく耳にする「ウォシュレット」は、TOTO製の温水洗浄便座を指すようです。同社はマテリアリティの一つに「きれいと快適」を掲げており、「ウォシュレット」の普及によってだれもが安全な水とトイレを利用できる世界の実現を目指しています。

 

同社では、商品を開発・販売するだけでなく、車いす使用者や乳幼児連れの方、性的マイノリティの方など、外出先でトイレを使用する際の困りごとを調査した報告書の発行や、さまざまな状況に配慮したトイレ空間の提案を行っています。近年では、「おもてなしトイレ」と題して、観光地における快適で使いやすいトイレ整備を推進しているようです。

 

すべての人が使いやすいトイレを認知させていくこと、そして導入を進めていくことで、SDGs目標6の実現方法である「水やトイレをよりよく管理できるように、コミュニティの参加をすすめ、強化する。」を実践し、同社の利益とつながる取り組みだといえます。

YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、SDGsとビジネスの関係を動画で解説

揚羽では、SDGsとビジネスの関係をテーマにしたYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」を運営しています。SDGsとビジネスをつなげるために役立つ、生きた情報を発信しています。

 

今回取り上げた目標6「安全な水とトイレを世界中に」についても、ここに紹介した事例とは別のビジネスを取り上げて詳しく解説しています。ビジネスでこの目標に向き合い、達成するためのヒントとしてぜひご活用ください。

 

 

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