採用マーケティングとは?従来の採用活動との違い

皆さん、こんにちは!揚羽制作部でディレクターをしている松村です。

 

揚羽でお客様の採用広報をお手伝いする中で、採用マーケティングの重要性がわかってきました。今回は、私が揚羽の仕事で学んだ採用マーケティングの手法をわかりやすく紹介していきます。

 

採用マーケティングとは、企業が消費者向けに取り入れるマーケティングの手法を企業の採用に活用する考え方のことです。マーケティングとは、一般的にこのように定義されています。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」

(日本マーケティング協会サイトから引用)

 

この考え方を採用マーケティングに置き換えると「企業と求職者がお互いを理解し合いながら、採用市場の中でマッチングを図る活動」ということができるでしょう。

 

従来の採用手法は、求人ナビサイトや合同説明会からの流入をもとに母集団形成を図り、エントリーシートやSPIで絞り込みをしてから、ほしい人材を選んでいくやり方が一般的でした。中小企業はエージェント経由で母集団形成を図るケースも多いかと思います。

 

これからも従来の手法が大きく変わることはないかもしれません。しかし、採用活動において抱える課題は企業によって異なるため、戦略や手法に工夫が必要となります。

 

そこで重要なのが、その企業に合った「採用マーケティング」です。求人ナビサイトなどはあくまで手段です。母集団形成から入社までのストーリーを自社らしく描いていくこと、企業が主体となって採用を進めていくことが、「自走型採用」につながります。

母集団形成を困難にする採用市場の変化

そもそも採用マーケティングはなぜ注目されているのでしょうか。従来の手法でも問題なく採用活動ができている企業ももちろんあります。しかし、近年の採用市場の変化を見ると、母集団形成が難しくなっている状況が理解できます。

 

採用マーケティングが注目される一番の要因は、慢性的な人手不足によって引き起こされる獲得競争の激化です。働き方改革によって、企業は業務の効率化を進めているものの、結果的に労働力不足に陥っている企業は数知れず。加えて、働き方や価値観の多様化によって、日本的な雇用制度であった終身雇用も崩壊しました。

 

また、2019年に経団連は新卒学生の通年採用を拡大する方針を発表しました。今後、母集団形成のタイミングは企業の裁量に任せられるようになってきます。学生が就職活動を始めるタイミングは多様化し、母集団形成のコントロールがより難しくなっていくでしょう。

 

採用には、お金も時間も労力も必要ですが、採用コストの削減を余儀なくされる企業の採用担当者も多いかと思います。エージェント費用を抑えたいという具体的な課題もあるでしょう。

 

採用マーケティングの考え方をもとに、限られた採用コストと労力の中で効果的な手法や戦略を考え、自社の採用力を高める。これが自走型採用であり、採用市場で勝ち抜くために必要とされているのです。

母集団形成だけが採用マーケティングではない

採用マーケティングは、母集団形成だけではなく、人材を採用するフローに当てはめて考えるものです。一般的なマーケティングと採用マーケティングを照らし合せていきましょう。

母集団形成だけが採用マーケティングではない

 

この図を見ると、消費者の購買プロセスが求職者の企業選定プロセスによく似ていることがわかると思います。消費者の購買行動プロセス、いわゆるAISASといわれる購買モデルの一つで、広告プロモーションの手法としても有名です。一つひとつのプロセスについて解説をしていきます。

認知

まずは、”会社の名前を知っている=認知”させることが採用マーケティングの始まりとなります。B to C企業や大手企業は知名度が高いため認知の段階では有利です。また、良質な母集団形成をするためには、認知の段階で自社にマッチする確率が高い求職者で母集団形成をすることが、採用マーケティングを成功させるコツになります。そのためには、ターゲティングができるWeb広告や業界別のイベントなど、求職者との接点を明確化する必要があります。

興味

次は、求職者が「自分と関係がありそうな会社か」を考え始める興味の段階です。業界、事業内容、企業の規模など求職者が就職先としてはじめに考える検討事項を訴求し、より会社のことを知りたい、受けたいと思うきっかけづくりが手法の中心となります。

比較・検討

求職者が次にとる行動は、比較・検討です。比較・検討の段階とは、すでに応募をしている、選考を受けている状態を指します。求職者は比較・検討の段階で、会社の理解を深めつつ、この会社で何を実現できるか、実際に働くイメージや社風など、入社後の自分の姿を具体的に想像していきます。

承諾・入社

比較・検討の段階を超え、実際に内定を出した後に待っているのが、承諾・入社の段階です。求職者が就職先を選びやすい時代となった今、内定辞退は多くの企業が抱える悩みでしょう。入社までのグリップとして、懇親会、社員と話す機会を設けるなどリアルな接点を持ちつつ、人事からの定期的な情報発信など、適度なコミュニケーションを図ることが重要です。

就業・共有・紹介

近年の採用マーケティングでは、承諾・入社の後に、就業・共有・紹介という段階が重要視されています。いわゆる、リファラル採用という採用手法です。すでに就業している社員からの紹介は、ミスマッチの抑制、採用コストの削減などのメリットがあります。リファラル採用の詳しい手法は別の記事でも紹介しているので、ぜひご覧になってください。

(リファラル採用成功のカギは、エンゲージメント向上にあり)

 

採用マーケティングで重要なのは、求職者が採用プロセスにおいて、どのような心理状態にあるかを理解することです。求職者の心理状態によって、効果的な手法は変わってきます。採用マーケティングの概要を理解できたら、効果的な手法を行うために自社の採用基準を定めることが重要です。

採用マーケティングを自社に当てはめるためのフレームワーク

採用マーケティングを成功させるには、そもそもどんな人材がほしいか、もしくはどんな人材が必要か。そのためには、何を訴求していけばいいかなど、採用の全体設計が必要です。採用の全体設計を考える上で、役立つフレームワークを紹介します。

人材要件の設定(ペルソナ設定)

ペルソナとは、マーケティングにおいて企業が提供するサービスや商品の典型的なユーザー像のことです。採用マーケティングに置き換えると、会社が求める人材要件となります。ペルソナ設定では、学校群や学部だけでなく、スキルや性格、適性などより具体的に設定していくことが重要です。活躍している社員から求職者に求める要件を洗い出し、ペルソナを設定していくのも効果的です。

ペルソナ設定に関連するダウンロード資料はこちら(求める人物像の定義の仕方)

3C分析

3C分析とは、マーケティング環境を分析する基本的なフレームワークの一つで、一般的に「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」を指します。採用マーケティングでは、「Customer(求職者)、Competitor(採用市場で競合となる企業)、Company(自社のもつ特徴)」と置き換えることができます。

 

3C分析をすることで、採用市場でどういったポジションになりたいのか、何を訴求したら求職者に響くかなどが見えてきます。3C分析を進める中で、ターゲットが変わることも、競合が変わることもあります。会社の採用課題と合わせて分析していくことが、3C分析のコツです。

自社・競合分析に関連するダウンロード資料はこちら(3Cと5軸の分析)

 

採用マーケティングを自社に当てはめるためのフレームワーク

採用マーケティングに必要な基本ツールの役割

採用マーケティングで対面以外での魅力づけとして使われる基本的なツールの役割を理解すると、各ツールで達成すべきゴールや伝えるべき内容が明確化され使いこなすことができます。

Webサイト

Webサイトは採用マーケティングのどのプロセスにおいても、常に求職者に見られるツールとして、興味・理解を深める役割を担うことが多いです。Webサイトでは、情報の網羅性、会社のイメージを印象付けるデザイン、エントリーへつなげるUI/UXを意識する必要があります。

新卒採用サイトに関する記事はこちら(採用サイトの制作のポイントと流れを徹底解説! ~前編~)

映像

映像は共感を促す効果が高いツールです。説明会のオープニング映像、プロジェクトを追う映像などさまざまな映像があります。「○分でわかる!」会社紹介映像など、Webサイトへの掲載を視野に入れて制作することも多いです。

パンフレット

パンフレットは、手に取った人しか知ることができない情報を掲載できるツールです。会社のことを深く理解してもらう役割を担っています。そのため、選考が進んだ段階で求職者を後押しするような使い方として、ほしい人材だけに渡すといった手法も効果的です。内定辞退を減らすためのフォローツールとして使われることもあります。
逆に、合同説明会などでは認知・興味の役割として、手に取ってもらうための設計が必要になります。

自社イベント

インターンシップや自社説明会なども、魅力づけの一つとして採用ツールと分類することができます。会社の雰囲気を知ることができる、社員に会えるといった体験を与える役割として、内容が充実していれば志望度を高めることにつながります。

Web広告

SNSなどを中心にWeb広告を打つ手法は、認知の役割を果たし、母集団形成につながります。インターンシップ告知、採用エントリー開始の告知など、タイミングを計って配信することが重要です。

採用マーケティングの成功事例

採用マーケティングを理解できたら、実際の事例が気になりますよね。最後に採用マーケティングにおける成功事例を私なりにまとめてみたので、いくつか紹介します。

インターンシップ充実型

インターンシップなどの自社イベントは志望度を高める手法として効果的だと紹介しました。採用マーケティングを成功させている企業は、仕事を疑似体験できるプログラムをインターンシップで実施しています。事業理解が一気に進み、働くイメージが醸成されやすいため、良いイメージがあれば入社の判断軸となるからです。

「楽天みん就」で2021卒向けインターンシップランキング1位となったニトリの事例を挙げると、4つのコース別に事業を体験できるプログラムを作っています。単なる自社説明にならないプログラム設計が重要です。

オウンドメディア型

採用マーケティングのプロセスにおいて、オウンドメディアを活用する事例を紹介します。

まずは、メルカリの採用オウンドメディアである「メルカン」です。メルカンはメルカリグループの社員なら誰でも発信できる仕組みになっており、メルカリの「人」を伝える手法をとっています。

次に、LINEが運営している「LINE HR BLOG」です。LINE HR BLOGはLINE社員のワークスタイルや価値観を伝えるメディアとなっています。

 

この2つを見ると、オウンドメディアが社風を訴求する戦略に活用され、会社をよく理解してもらう手法として効果を発揮しています。デメリットは、運営が意外と大変ということです。

〇〇採用型

採用マーケティングでよく話題となる手法に〇〇型採用があります。事例を見てみましょう。

 

伊勢半グループ             :「顔採用」
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ    :「超理系採用」
東急エージェンシー           :「留年採用」

 

どの企業からも読み取れるのは、採りたい人材が明確であることです。この手法はなかなか集まらない層の母集団や新しいターゲットにアプローチしたいときに効果を発揮します。伊勢半グループの「顔採用」は、採りたい人材を明確に訴求し、なおかつ知名度向上にも貢献した良例といえるでしょう。

まとめ

採用マーケティングのプロセスから成功事例まで紹介してきましたが、弊社の採用マーケティングはどう行っているのか、を紹介した記事もありますので気になる方はご覧ください。

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本記事でご紹介した事例はとてもわかりやすい例です。逆に、話題になっていなくても、緻密な設計で採用マーケティングを成功させている企業もあります。とはいえ、まずは今の採用を見直すところから始まります。

揚羽は採用課題の掘り出しから採用マーケティングの設計、ツールに落とし込むまでを一貫してお手伝いしています。採用マーケティングについてもっと知りたい方も、悩みを聞いてほしい方も、お気軽にご相談ください。

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