はじめに

みなさんこんにちは!MAGAZINEライターの望月です。

 

私は日頃、揚羽で中途/新卒採用担当をしています。新卒採用戦略・コンテンツ設計、学生との面談・面接、候補者管理、内定者研修、内定者フォローなど、幅広い業務を行っています。

 

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、リアル・オンライン開催の対応など、サマーインターンシップに力点を置いた企業も多いと思います。

 

そのため、内定者フォローへの取り掛かりが遅れてしまっている人事、採用の担当者も多いのではないでしょうか?

 

今回は、内定者フォローの目的や、内定者フォローの事例についておさらいしていきます。

そもそも、内定者フォローって必要?

突然ですが、内定者フォローは本当に必要なのでしょうか?

私は、内定者フォローを行う必要がない場合も存在すると考えます。例えば、以下のような状況です。

 

十分に採用フロー上で深い関係性を構築できている場合
・長期インターンシップや選考などを通じて業務理解ができている
・内定者が人事や企業に対して心を開いており、何か不安があったときにも真っ先に連絡が来るような状態が構築されている

 

十分に採用力が高く内定辞退が起こらない場合
・採用力が高く、内定者の志望度が高い状態が入社まで維持できる

採用力に関する記事はこちら(採用ブランディングを成功へ導くプロセスと事例紹介)

 

内定辞退の発生を想定し、多めに内定を出している場合
・一定数内定辞退が起こることを想定して採用を行っており、内定者フォローよりも人事の採用にかけるパワーを低減したいと考えている

 

しかしながら、上記に上げたような会社はレアケースです。内定辞退を防止し、内定者が確実に入社するためには、しっかりと内定者フォローを行うことが必要です。

内定者フォローの目的とは?

それでは、内定者フォローの目的を見ていきましょう。内定者のステータスは大きく「未承諾者」「承諾者」の2フェーズに分かれますので、それぞれのフェーズで内定者フォローの目的を解説していきます。

① 未承諾者への内定者フォローの目的は「頭の納得」と「心の納得」

未承諾者に対する内定者フォローの一番の目的は、内定者の「頭の納得」と「心の納得」の度合いを高めることで、承諾確度を上げることだと考えています。

 

例外はありますが「他の競合と比較した際に、論理的に見ても、感情的に見ても、この会社に一番入社したい」と内定者が考える状態を作れば、内定承諾確度が上がると言えるでしょう。そのため、学生の「頭の納得」と「心の納得」の両方に貢献する内定者フォロー施策を打つことが重要です。

 

「頭の納得」が起こっている状態とは、学生の就活軸に照らし合わせたときに、競合より自社が優位に立てている状態です。「論理的に考えたらこの会社が一番良いだろう」と学生が感じていると、頭の納得が起こります。

 

「心の納得」が起こっている状態とは、学生が自社に親近感・安心感・納得感…などの特別な感情を持っており、精神的に満たされている状態です。「なんだか分からないけどこの会社が好きだ」「うまく言えないけどこの会社で働いてみたい」と学生が感じていると、心の納得が起こります。

 

内定者によって、「頭の納得」と「心の納得」のどちらを重視するのか、また重視するバランスは異なります。面談・面接の中で学生に伴走しながら、そのバランスを見極めていきましょう。

 

内定者の意思決定に際し、ご両親など、ご家族の意見を参考にされる場合も多いです。そのため、ご家族向けのフォローを行うことも重要です。

② 承諾者に対する内定者フォローの一番の目的は「ブレ防止」

新卒採用活動を通して学生と面談・面接を重ねて、「頭の納得」と「心の納得」をして内定承諾したとしても、内定者にはさまざまな不安がつきまといます。ご家族やご友人との会話、ニュースなどの時事情報、同期の内定者の顔ぶれ…など、不安がきっかけで再度就職活動を始める方もいるでしょう。そのような内定者の「心のブレ」を機敏に感じ、丁寧に払拭することが重要です。

 

上記①、②をベースとしながらも、企業の状況や課題に応じて例えば下記のような追加の目的設定 を行うと良いでしょう。

 

「早期戦力化」:入社までの間にスキルアップを求めたい
想定される課題:入社後、特別なスキルを持つ必要性がある場合(コーディングスキル・宅建などの資格取得・営業ノウハウなど)

 

「”同期感”の形成」:入社までの間に同期同士のつながりを作りたい
想定される課題:入社後、個人業務が多い、同期同士の関係性が築きにくいなどの理由で、入社前に”同期感”を形成しておきたい場合/入社後、難易度の高い業務を行うなど、同期同士で声かけし合う文化を形成したい場合

 

「社員との関係性 づくり」:他部署とのコミュニケーション活性化を図りたい
想定される課題:入社後、頻繁に他部署交流が発生するが、コミュニケーションの機会が少ない

 

「文化・風土の浸透」:入社までの間に企業文化や風土を浸透させたい
想定される課題…新卒入社者に文化や風土を浸透させるメッセンジャーになってほしい

内定者フォローの事例、ツール、オンライン開催時などのポイント

それでは、内定者フォローにはどのような事例があるのでしょうか?

事例とそれを行う 上でのポイントを併せて解説します。

 

大項目 小項目 頭の納得 心の納得 家族向け
内定者座談会
内定者飲み会 小規模
中規模
内定者パンフレット 手紙・メッセージ系
業務理解・会社案内系
内定者ムービー
人事面談
現場面談
家庭訪問 社長・人事がご家庭に足を運んで説明

① 未承諾者に対する内定者フォローの事例とポイント

内定者飲み会
飲み会を通じて、学生との心理的距離を縮め、仲良くなります。未承諾者との関係性を深めたい場合は、学生1名に対して企業側1~3名など、少規模での飲み会が効果的 です。学生側の人数が多くなればなるほど、一人ひとりとの深い対話はしにくいですし、企業側が多すぎると、学生はアウェー感を感じてしまいます。関係性を深める上では、小規模な飲み会の方が一人ひとりの話を深く聞くことができ、適切だと考えます。その一方で、未承諾者に内定者の顔ぶれを認識させたい、多様な社員と会ってほしい、など、関係性を広げたい場合は、学生複数名に対して企業側複数名など小~中規模の飲み会が効果的です。

ポイント
飲み会はあくまで心理的距離を縮める手段です。気さくにフラットに話をしましょう。また、学生が気を遣っている状態では、飲み会の効果は発揮されません。丁寧なアイスブレイクを心がけ、学生が心を砕いて話せる場づくりをしましょう。また、未承諾者同士が顔合わせを行う飲み会を開催する際は、未承諾者同士が横でつながって一斉辞退が起こるリスクがあります。企業への「頭の納得」と「心の納得」をある程度高めた状態で行われることが効果的です。なお、オンライン開催の工夫としては、ブレークアウトルームの利用や、話題をルーレットにして平等に会話を振るなどがあげられます。

 

人事面談や現場面談
人事面談やリクルーター面談を通じて、内定者の就職活動軸の整理や、懸念事項を確認します。内定者に不明点があるようなら適宜情報開示を行います。また、ネガティブポイントと感じている点を傾聴していきます。現場のメンバーと話したい場合は、現場面談やリクルーターとの接点を作りましょう 。

ポイント
内定者フォローの段階で人事面談を行う場合、学生との信頼関係がある程度構築されている必要があります。そうでない場合、「つなぎ止めをされているんだな」と冷めた目で学生が見てしまうので、強い効果が期待できません。選考の中で学生との心理的距離を縮めるコミュニケーションを図ることや、飲み会などで仲良くなっている状態を作れていると効果が発揮されやすいです。また、現場メンバーとの面談をセッティングする場合は、学生の目線に合わせて仕事の魅力を伝えられるよう、リクルーター教育などを事前に行っておくとベターです。

 

内定者パンフレット
内定者向けのパンフレットを通じて、入社後への期待や憧れ感、納得感を感じてもらいます。

ポイント
伝えたいことを一方的に書いたものは効果的ではありません。学生に何を伝えるべきか、伝わるにはどのようなメッセージにするかを思考する必要があります。「頭の納得」を目的とするなら、例えば学生が気にしているであろう不安点の解消・払拭などを図ると良いかと思います。「心の納得」という面では、例えば人事、採用の担当者の自筆のメッセージなど、カルチャーや人の温かみを感じると心理的距離が縮まるかと思います。

 

内定者ムービー
内定者向けの映像を通じて、入社後への期待や納得感を感じてもらいます。

ポイント
伝えたいことを一方的に描いたものは効果的ではありません。学生に何を伝えるべきか、伝わるにはどのようなメッセージにするかを思考する必要があります。映像は「心の納得」に寄与する部分が多い手法だと思います。「心の納得」という面では、理念・ビジョンに対する共感や、業務に対する憧れ感の醸成、人事、採用の担当者、リクルーターからの応援メッセージにカルチャーや人の温かみを感じて心理的距離が縮まるなど、採用上の課題や学生の求めているポイントに合わせてさまざまな伝え方ができます。

 

内定者ムービーについて、実際にお手伝いさせていただいた事例としては、エームサービス株式会社様の映像があります 。こちらは栄養士を志したときの気持ちを呼び起こすことで、学生の心の納得に訴えかける効果の高い映像となっています。

事例紹介ページはこちら

 

その他、企業によっては社長が家庭訪問を行い、直接説明をされるケースもあります。

② 承諾者に対する内定者フォローの事例

大項目 小項目 ブレ防止 早期戦力化 同期感の形成 社員との関係性づくり 文化や風土の浸透
内定者課題 資格取得
課題図書
個人課題
グループ課題
内定者懇親会 少規模(内定者・人事)
中規模(内定者・人事・役員・現場社員など)
内定者インターンシップ 個人インターン
グループインターン
内定者研修 公演型研修
現場巻き込み型研修
社内イベントへの招致

内定者課題
内定者課題を通して学生の早期戦力化を図りながら入社志望度を高めます。

事例:資格取得、課題図書、個人課題、グループ課題など

ポイント
どうしても夏休みの宿題のようになりがちですし、質や量によっては入社志望度を下げる一因につながりかねません。学生自身の成長したい、スキルアップしたい、という想いに伴走するなど、目標設定の仕方やコミュニケーション手法を工夫することが必要です。

 

弊社では早期戦力化のため、さまざまな業界の企業について企業分析を行うキャッチコピー創出ワークを個人ワークとして行っています。また、読書を通じて成長する文化や風土の浸透のために、毎月1冊の課題図書を設定しています。

 

弊社が担当したお客様の事例もご紹介します。日清食品株式会社様の内定者向けグループ課題として、1泊2日で次年度向けの採用LPサイトを作成するワークを行っています。内定者フォローとしては改めて業務理解をしながら、同期感を形成しています。また、日清食品株式会社様ならではのワクワクするような仕掛けやデザインを取り入れており、ターゲット学生が日清食品株式会社様のことをもっと知りたくなるサイトになっています。次年度の採用ブランディングにも繋がる内定者フォロー施策といえるでしょう 。

事例紹介ページはこちら

 

内定者懇親会
同期感の形成や社員との関係性づくりに有効です。グループワークなど、設計の仕方によって文化・風土の浸透も可能です。

事例:自己紹介プレゼンテーション、同期のキャッチコピーを考えるワーク、一人ひとりのキャリアを考えるワーク、理念浸透/理解促進を行うワーク、実務をグループで体験するようなワーク(現場メンバーなどが混ざっても良い)

ポイント
初対面のメンバーがどうしても多くなるため、丁寧にアイスブレイクを行い、緊張を解きほぐすことが大事です。また、学生同士・社員同士でまとまってしまうことが考えられるため、双方向のコミュニケーション機会を多く取るような工夫が必要です。オンライン開催の場合はより一層アイスブレイクが難しいので、人事、採用の担当者側が学生のモチベーションを上げるようなコミュニケーションを取るよう心がけましょう。

 

弊社では、今年は内定式までの間に全2回のオンライン内定者懇親会を開催していました。内定者が自分自身を紹介するプレゼン資料を作成して発表していたり、同期のキャッチコピーを考えるワークなどを行うことで、同期感の形成を図っています。

 

内定者インターンシップ
仕事に対する憧れ感の醸成などに有効です。本人の入社後、ロールモデルになるような社員を設定し、仕事に対する意欲を高めましょう。また、入社後に関わるメンバー・部署が多い職種などの場合、さまざまなメンバー・部署を横断してコミュニケーションを取る機会を作ることで、親近感を持った状態で業務をスタートすることができます。

ポイント
関わる社員の発言やコミュニケーションの取り方により、学生の入社意欲が下がる危険性があります。学生のタイプや価値観の共有 、リクルーター教育を行って、体験の質を高めるなどの工夫が必要です。

すべてを行うのは難しいと思いますし、自社の課題や目的に合わせて組み合わせて内定者フォローを行われると良いかと思います。

内定者フォローを行う上での心構え

いかがでしたでしょうか。

 

「買い手市場だし、内定辞退は起こらないのでは?」という見方をされる人事、採用の担当者の方もいるかもしれません。

 

しかしながら、私は、内定者フォローをはじめ、すべての採用コミュニケーションの前提となる心構えとして「学生と企業の立場は対等である」という考え方を持っています。

 

「企業が学生を選考しているように、学生もまた企業を選考している」という見方を人事は決して忘れてはいけないと考えます。もしそれを忘れて高圧的なコミュニケーションをしてしまったら、内定辞退は起こります。たとえ入社に至ったとしても、入社後のエンゲージメントは下がるでしょう。

 

こうしてみると、内定者フォローとは「やっておわり」というものではなく、内定者フォローをどのような目的で利用し、それによってどのような課題を解決するのか、そのためにはどのような工夫が必要か、という大きな採用ブランディングのコミュニケーションの一部であることが分かります。

自社の採用ブランディングを見直したい方はぜひご相談いただければ幸いです。

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