パーパスとは、社会における企業の存在価値のことです。パーパスはただ策定しているだけでなく、パーパスを体現するために従業員が一貫した行動が取れるよう、浸透させることが重要です。

今回は、パーパスを浸透させるための4STEPや浸透のための取り組み事例を詳しくご紹介します。

パーパス浸透の重要性

パーパスの浸透は、従業員が一貫した行動を取り、企業の存在価値を体現するために重要です。

パーパスが存在していない、浸透していない状態でも組織は機能します。しかし、組織の持続的な成長や従業員の高いパフォーマンス発揮は期待できないでしょう。パーパスが明確化され、従業員が正しく理解し、その上で組織に浸透している状態であれば、明確な行動指針に基づいて従業員一人ひとりが社会における企業の存在価値を高め、体現する行動を取れるようになります。

ただ、パーパスを策定しているだけ、一部の従業員に浸透しているだけでは、企業全体の価値を高めることはできません。そのため、パーパス浸透は経営を含め企業全体で取り組むべきものであり、従業員一人ひとりが理解し、浸透できている状態を目指すべきものです。

そも​​そもパーパスとは

パーパスは「目的、意図」を意味する単語です。ビジネス・経営用語としては「存在価値」として、「企業の社会における存在価値」を表す言葉として用いられています。企業や組織が何のために存在し、従業員が何を目的に働くのか、本質的な目的や指針を示したものであり、企業の「WHY」を言語化したものともいえます。

直接的な関係にある顧客や取引先、投資家などのステークホルダーだけでなく、社会とのつながりを強く意識している点が企業理念との違いです。パーパスが浸透している状態では、従業員があらゆる「WHY」に答えられます。従業員が自社の社会的価値を理解していることで、社会的価値を実現するための行動が取れるようになるでしょう。

パーパス浸透までの4STEP

パーパスは策定して終わりではなく、浸透させてこそ機能するものです。そのため、下記4ステップに基づいて、パーパス浸透を目指しましょう。ここでは、各ステップで求められる状態や必要な施策などをふまえ、浸透までのステップを詳しく解説していきます。

【STEP1】認知

パーパスを浸透させるにあたって、まずは「認知」が必要です。知られていない状態では、そもそも浸透できません。「自社にパーパスがあることを知らない」「聞いたことはあるけど覚えていない」状態の場合、認知から取り組む必要があります。

認知のステップで従業員に求めるのは「フレーズを目にすることで、部署にかかわらず全社として大切にしていることや経営方針を理解している」状態です。パーパスは企業そのものが社会においてどういった存在価値を持つかを示すものであるため、部署や役職、行なっている業務に関係なく、すべての従業員が統一的に理解し、行動に反映すべきものです。

認知に必要な施策例

  • 社長メッセージ
  • メッセージのビジュアル化
  • 社内掲示ポスター
  • 社内報/イントラの掲示板での告知
  • 企業のコーポレートサイト等での明示

認知の段階では、視覚的に訴求することがポイントです。日常的に目に見える場所に掲示されていることで、自然と言葉そのものが記憶に残り、認知されます。また、重要性を認知してもらうためにも、社長が直々に伝えることも重要です。

【STEP2】理解

従業員にパーパスが認知されたら、次のステップは「理解」です。パーパスに込められた真意を理解し、普段の業務に結びつけられる状態を目指します。

理解を得るには、ただパーパスを目にするだけでなく、真意を伝えたり、それをどう共感につなげるかを考える時間が必要です。朝礼や上司との1on1、チームMTGやOFF-JTの研修などを通じて、理解を深める時間・場を設けることがポイントです。

理解に必要な施策例

  • 研修の実施/朝礼での唱和
  • クレドカードを用いたルーティン設計
  • 浸透映像

理解を深めるためには「なぜそのパーパスなのか」「従業員にどういった行動をとってほしいか」など、真意を直接伝えることが重要です。朝礼や1on1のような定期的な場だけでなく、パーパス浸透のための研修のような伝達の機会を改めて設けることも有効な施策です。

また、理解度を深めるためには映像による視覚的訴求が効果的です。イントラサイトなどに掲載し、いつでも閲覧できる状態にしましょう。

【STEP3】共感

理解の次のステップが「共感」です。共感で従業員に求めるのは「全社方針に共感しており、戦略も深く理解し、会社へのエンゲージメントも向上している」状態です。

ただ理解しているだけでは、自分事として行動に反映するのは難しいでしょう。パーパスのために行動すべきという当事者意識を醸成するためには、共感のステップが欠かせません。「やらなきゃ」「やらされている」という意識では、本当の意味で浸透したとはいえず、共感できれば「やりたい!」という意識から自然とパーパスに則った行動が取れるようになります。

共感に必要な施策例

  • 社内報/イントラでの継続的告知
  • 表彰制度、アワードの設計
  • イントラ等でのコミュニケーション設計

部署を超えた従業員同士の横の共通認識の向上を図ることで、共感を促すことが可能です。たとえば、表彰やアワードは自分以外の誰かが賞賛されることで自分自身が次回表彰されるために何をすべきかを考えるきっかけになります。自分以外の人の行動に共感でき、かつパーパスに則った行動をすることで表彰されるという制度自体の認知・理解・共感にもつながります。

また、企業が社会にとって良い存在であると従業員が認識・実感できることで、パーパスへの共感が生まれます。施策を通して「なぜ企業が存在するのか」という「WHY」の部分を継続的に発信することは、共感を生むために欠かせません。

【STEP4】行動

最終的に「行動」に移せる状態にまでなれば、パーパスが浸透しているといえます。行動のステップで従業員に求めるのは「全社方針に沿った行動を行うことができ、周囲から評価され、好影響を与えている」状態です。

共感できている状態では、パーパスを体現するために必要な要素を自ら考え、行動や判断につなげていけるため、自然とパーパスに基づいた行動・判断がなされます。企業としても行動に対する評価基準を明確にできているため、従業員も「パーパスを意識した行動をとることが評価につながる」と認識でき、行動のモチベーションが高まります。

行動に必要な施策例

  • 社内報/イントラでのエピソード共有
  • 人事制度への組み込み

具体的な行動に移すためには、どういった行動がパーパスの実現につながるかが明確となる実例があると良いでしょう。その点で効果的なのが社内報やイントラでのエピソード共有です。

たとえば、ソニーグループ株式会社では、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスのもと、感動を生み出すことに挑戦しています。そのためには、クリエイターや異業種の企業など、さまざまなパートナーと共創することが不可欠であるとして、その具体的なエピソードを『SESSIONS』対談シリーズとして公開しています。

ソニーグループポータル『SESSIONS』対談シリーズ

また、パーパスを人事制度へ組み込むことは、高い強制力を発揮します。パーパス実現のための行動が評価として自分にも還元されれば、行動するモチベーションが高まります。パーパスに基づいて行動してこそ企業の存在価値を高められるため、「行動」には人事制度への組み込みのような強制力のある施策も必要です。

パーパス浸透の取り組み事例

パーパス浸透の取り組み事例を揚羽の支援実績よりご紹介します。

株式会社レゾナック・ホールディングス

言葉づくり / 戦略策定 / コンテンツ制作

【背景】
2023年1月、旧昭和電工グループと旧昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成)が統合し、『株式会社レゾナック・ホールディングス』および『株式会社レゾナック』となりました。統合に伴い、新たに策定された経営メッセージや人事制度を浸透させるための支援を実施。

インナーブランディング起点で「これをすることでどういう姿になっていきたいのか」といった、What/Whyをしっかりと考えた上で、ストーリー性のあるコミュニケーションを取ることをご提案。

【具体的な取り組み】

まずは、CHRO組織の社員やCEOにインタビューを行い、会社としてありたい姿をストーリー化しました。あわせて、キャッチフレーズも開発しています。

株式会社レゾナック・ホールディングスのキャッチフレーズ、自分にもっと驚こう

また、言葉やビジュアルを社内に広く伝えるため、ポスターやスタイルブック(行動指針ブック)などのコミュニケーションツールを展開。パーパスと連動する人事制度への理解を深めてもらうため、人事制度のすべてがわかるマニュアル『デベロップメントガイド』も制作しています。

同時に、社外にも発信して同社の考えに共感する人材の採用につなげるため、社内外向けWebページも制作。複数のコミュニケーションツールの展開、そして理解を深めるコンテンツの制作により、認知・理解に重点を置いて浸透に力を入れた事例です。

株式会社レゾナック・ホールディングス 支援実績の詳細

三井金属鉱業株式会社

戦略策定 / 言葉づくり / コンテンツ制作 / 浸透活動

【背景】
現在は先行きが不透明で将来の予想が困難な時代であり、企業は常に変化して柔軟かつ迅速に対応することが求められています。同社は、変化の激しい時代の中で「ブレない軸」を持つことが必要と考え、2024年に創業150年を迎えたことを機に、これからも持続可能な成長を続けるための判断軸となるパーパスを策定しました。

【具体的な取り組み】

パーパスのフレーズについて、揚羽のコピーライター同席のもと経営層とプロジェクトメンバーでワークショップを実施。平行してパーパスを基軸とした2030年のありたい姿(ビジョン)の言語化も行いました。

三井金属鉱業株式会社のパーパスサイト

また、パーパスの社内浸透のため、部署横断型で有志の社員を集めたタスクフォースチームを組成し、4か月にわたり毎週ミーティングを実施。
パーパスの社内浸透には、浸透施策を検討するプロセス段階から社員が参画することが有効であることから、チームの結成に至りました。ミーティングでは、それぞれの現場の社員が納得できる浸透施策を検討し、検討の結果、浸透は以下ステップで実施していくことを決定しています。

  1. パーパスを視覚的に認知させるビジュアル
  2. パーパスに込めた想いをストーリーで伝えるための映像
  3. パーパスを双方向で理解を促す仕組みづくり

それぞれの施策を並行し、6ヶ月にわたり制作・実装に取り組みました。浸透施策については、同社のコーポレートコミュニケーション部や人事部、経営企画部と定例ミーティングを引き続き実施。同時に同社の150周年施策についても進行しており、周年企画を「パーパス浸透を加速させるための施策」と位置づけ、パーパスの認知・理解に向けた取り組みに注力しています。

三井金属鉱業株式会社 支援実績の詳細

まとめ

パーパスは策定して終わりではなく、浸透してこそ効果を発揮するものです。パーパスがない・浸透していなくても組織は機能しますが、社会における企業の存在価値を高めづらいでしょう。

また、パーパスが浸透している状態では、従業員が自発的にパーパスを実現するための行動を取れるようになります。パーパスを浸透させるには「認知」「理解」「共感」「行動」の4ステップで段階的に取り組み、各ステップで必要な浸透施策を実施することが必要です。

「パーパスが明確化できていない」「パーパスはあるが社内に浸透できていない」など、パーパスの策定・浸透に課題やお悩みがある場合はぜひ揚羽にご相談ください。

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