「周年」はリブランディングの適切なタイミング

長年にわたり広く支持されてきたブランドでも、社会や市場、社内の変化などをきっかけにして、リブランディングを実施することで、新たなイメージを生み出すことができます。

とはいえ、リブランディングはいつ実施してもいいというものではなく、適切なタイミングを見極めることが重要です。明確な意図や理由がないまま行うと、これまで培ってきたブランド力が低下してしまい、既存の顧客離れ、売り上げダウン、採用がうまくいかなくなる、などのデメリットが生じる可能性があるからです。

リブランディングを行う適切なタイミングの一つに、企業の創業、創立の周年が挙げられます。周年は企業の転換期でもあり、これまでの歴史を振り返りつつ、未来に向けての姿勢を訴求するのに絶好のタイミングです。

今回は、周年を機にこれからの自社の在り方を考え、周年プロジェクトとしてリブランディングを行ったプロジェクトに、当社が伴走した事例をご紹介します。

【ケーススタディ】富士テレコム株式会社

富士テレコム株式会社は富士通のパートナー企業として、1970年の創業以来、通信ネットワークやシステムインテグレーション、さらに自社パッケージシステムの開発・販売を展開してきました。同社が創立50周年を迎えた2020年は、新中期経営計画策定のタイミングでもあり、「これからの富士テレコム」を言語化し、発信する必要がありました。

そこで、社員を巻き込みながら、富士テレコムのありたい姿を整理し、これからのことを社内外に発信する周年プロジェクトが始動しました。

リブランディングで重要な二つの要素

リブランディングを実施する上で重要なのは、ただ言葉やロゴを作るのでではなく、しっかりと会社としての方向性を示す、自社に関わる全ての人を引き付ける、という二点を意識することです。

ブランドの力は、会社の経営判断や意思決定などに影響を与えます。会社としての方向性をきちんと示し、全社的に思考・行動の基準をすり合わせることで、社内コミュニケーションの活性化や、物事の実行スピードの向上につながります。また、会社として世の中に発するメッセージと、実際の活動や行動に一貫性を持たせることで、社会や顧客からの信頼を得ることにもつながります。

本プロジェクトにおいても、会社の描く未来に共感し、社員一人一人が未来に向かって働き、成長できるような、新たなブランドプラットフォームの構築が必要だと考えました。そして、その構築からプロジェクトはスタートしたのです。

ブランドプラットフォームの構築で重要な五つのポイント

ブランドプラットフォームは「理念の体系」であり、それに関わる全ての人が共有する「ブランドの基盤」を指します。企業活動を通じて実現を目指す世界や、価値観・信条・行動原則などを言語化し、それらの構成要素を体系的にまとめたものです。企業ごとに異なる形で構築されますが、ブランドプラットフォームを構築する上で重要 なポイントが五つあります。

  1. 他社とは異なる「自社の強み」を、はっきりと浮かび上がらせている
  2. 「自社の進むべき道」を指し示しており、迷ったときの判断基準になっている
  3. お客様が他社ではなく、自社を選ぶ理由となっている
  4. 社員が働く理由になっている
  5. 世の中の思いと共振している

前述のように、ブランドプラットフォームはブランドの基盤となるものであり、ブランドは会社の意思決定や行動に寄与するものです。つまり、自社ならではのブランドを構築するには、ブランドプラットフォームの構築が欠かせないということです。

本プロジェクトにおいて、ブランドプラットフォームを再構築するに当たり、社員への取材で言葉の源泉を導き出すのはもちろんのこと、ワークショップや合宿を複数回実施しました。これらの結果を基にキーワードを洗い出し、整理した結果、同社が社会から選ばれる理由は、「人」であるということが明らかになりました。

そこから、同社のありたい姿を三つのテーマで定義。「社会」に対しては「人と情報技術の関係をデザインし、人が主役の社会をつくる。」、「お客様」に対しては、「お客様のより良きパートナーとなり、未来を共に切り拓く。」、「組織」に対しては、「志を共有する人たちが、一人ひとりの自己実現をめざす。」と定義。このブランドプラットフォームを踏まえ、新ブランドスローガンを「未来に、技術と温もりを。」と策定しました。人の温かみと温もりを表現することで、同社らしさが強く感じられるスローガンとなっています。

リブランディングを世の中に伝えるアウトプット

リブランディングは行ったら終了ではなく、新たに策定された会社としての考えや方針を、認知・理解・共感・行動にまで落とし込む必要があります。

本プロジェクトでは、新たに策定されたブランドスローガンに合わせて、ブランドシンボルとなる新しいロゴを作成し、ブランドアイデンティティーを刷新しました。さらに「これからの富士テレコム」を社員に浸透させる目的で、社内向けの理念浸透映像を作成。また、お客様や就職活動中の学生など、社外に向けても新メッセージを伝えるために、社外向けの理念浸透映像も制作しました。

アウトプットのそれぞれの取り組みについて、簡単に解説します。

・ブランドシンボル

ブランドシンボルとなる新ロゴは、羽をモチーフに作成。「人と情報技術が融合して新たなものを創造し、勢いよく未来へと飛び立つ様子」を表しつつ、羽の中央の入れ込みは「信頼・和・努力」の三つの社訓を表しています。

ブランドスローガンを体現した、新たなブランドシンボル

・社内向け理念浸透映像

社員の理解促進のため、さまざまな職種で高い「技術」を持つ7人(富士通エンジニア、映画監督、プロサッカー選手など)に、「未来と技術」を語っていただきました。映像を見た社員に出演者と通じるところを見つけてもらい、「未来に、技術と温もりを。」というスローガンへの深い理解と自分事化を図りました。

・社外向け理念浸透映像

見た人の共感を促すため、多彩な登場人物の人生を投影。さらに、「未来に、技術と温もりを。」をイメージした、新たなオリジナル曲を制作しました。ステークホルダーにもビジョンを感じてもらえるよう、音楽にもこだわりました。

・浸透施策

新たなブランドの浸透度合いを測るため、エンゲージメントサーベイを実施。さらに、一層の浸透を図るため、管理職向けの研修や、本プロジェクトに携わった社員が当時の想いを語る座談会映像や記事も作成しました。継続的な浸透にも注力しています。

周年でのリブランディングの意義

企業の周年でリブランディングを実施することは、新たなスタートを切るという意味でも重要な転換期となります。リブランディングで重要な二つの要素と、ブランドプラットフォーム構築の五つのポイントを意識し、「作って終わり」ではなく、継続的に浸透し続けることが大切です。

今回紹介した事例の詳細は、こちらからご覧いただけます。

※本記事は、月刊会員情報誌「コミュニケーション シード」2025年8月号に掲載されたコンテンツの転載です。

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