従業員エンゲージメントは業績向上に欠かせない指標です。従業員エンゲージメントがなかなか高まらない、そもそもどう高めて良いかわからないなど、従業員エンゲージメント向上に課題を感じている企業も多いでしょう。
今回は従業員エンゲージメントを高めるための成功事例やメリット、エンゲージメント向上の方法などをご紹介します。

従業員エンゲージメントとは

今や、従業員エンゲージメントは業績向上に欠かせない指標であり、いかにエンゲージメントを高めるかが重要視されています。まずは従業員エンゲージメントについて、概要を解説します。

従業員エンゲージメントの定義

従業員エンゲージメントとは「誰か・何かに貢献しようという意欲」であり、従業員が企業に抱く愛着心や貢献度の高さ、従業員と会社のつながりの強さともいえるものです。

そもそもエンゲージメント(engagement)とは「約束」「誓約」の意味を持つ言葉です。その言葉単体からは従業員エンゲージメントの定義をイメージしにくく、かつ明確な定義はありません。日本経済新聞では「仕事への熱意度」、東洋経済オンラインでは「社員が自分の仕事に対する誇りと情熱を持ち、主体的に仕事で期待以上の成果を出そうと頑張る気持ち」など、定義はさまざまです。

そのため「従業員エンゲージメント」とは何かを、自社なりに定義することも従業員エンゲージメントを高める上で重要なポイントの1つです。

「従業員満足度」との違い

従業員満足度とは、従業員が会社や業務内容、職場での人間関係などにどれほど満足しているかを示す指標です。一方、従業員エンゲージメントは外部要因に対する指標ではなく、従業員自身が会社に対してどれほど貢献する意欲があるか、どれほど愛着や信頼を持っているかの指標です。

従業員満足度は従業員が会社を評価する一方的な指標であるのに対し、エンゲージメントは従業員と会社の双方向的な関係性を問う指標といえます。

日本企業のエンゲージメントの現状

日本企業の従業員エンゲージメントは、世界的にみても低い状態にあります。米ギャラップ社「State of the Global Workplace: 2023 Report」によると、日本企業の従業員エンゲージメント指標は5%との結果であり、会社への貢献意欲や仕事への熱意を持っているのは20人に1人の割合です。

一方、世界平均は23%と2021年比で2ポイント上昇しており、2009年の調査開始以降では最も高い数値となりました。また、日本を含む東アジア全体の従業員エンゲージメントは17%であり、日本は東アジア内で最下位を記録しています。

世界的に従業員エンゲージメントが上昇している傾向の中、日本企業は逆行状態にあります。

出典:State of the Global Workplace: 2023 Report

従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員エンゲージメントを高めることは、企業に以下のようなメリットをもたらします。

  • 従業員の生産性が向上する
  • 顧客満足度が向上する
  • 業績アップに期待できる
  • 離職率が低下する
  • 課題に取り組む姿勢が改善される

メリットを詳しくみていきます。

従業員の生産性が向上する

従業員エンゲージメントが高い・強い状態では、会社に貢献したい意欲が高まります。会社への愛着と信頼があり、「会社のために頑張りたい」「成果を出したい」というモチベーションのもと業務に取り組めるようになります。そして、熱意を持って仕事に取り組める状態では生産性も向上し、従業員一人ひとりの生産性が高まれば、組織全体の生産性向上につながります。

顧客満足度が向上する

エンゲージメントが高い状態では、自分の仕事に誇りとやりがいを感じ、熱意を持って業務に取り組めるようになります。結果、顧客と積極的にコミュニケーションをとるようになり、提供する商品やサービスの質が向上します。高い従業員エンゲージメントが顧客と企業のつながり・信頼も高め、結果的に企業の成長につながるのです。

業績アップに期待できる

従業員エンゲージメントの向上は、業績の向上にも直結する重要な要素です。生産性の向上や提供するサービス・商品の質向上による顧客満足度の向上は、最終的に利益につながります。

また、高い従業員エンゲージメントは次で解説する離職率の低下にも有効であり、優秀人材の流出防止や人材が確保できることで企業力が強化されます。近年は人的資本経営が重要視されているように、「人材」は企業の中長期的な成長に欠かせない存在です。

人材を「資本」と捉え、エンゲージメント向上により貢献意欲を持って業務に取り組んでもらうことで業績アップにも期待できます。

離職率が低下する

従業員は企業の成長に欠かせない存在であるため、離職率の低下は企業力を高めるためにも重要です。会社に貢献したい意欲が高い状態では、簡単に退職しようとは思わないでしょう。また、離職率が低く定着率が高い企業はイメージもよく、採用面でもメリットがあります。

少子高齢化によって労働人口が減少している現代は、いかに今いる人材を定着させるかが重要視されています。離職率が低下すれば、採用コスト削減にも有効です。

課題に取り組む姿勢が醸成される

会社への貢献意欲が高い状態では、問題や課題が発生した際も積極的に取り組む姿勢が醸成されます。また、誇りと熱意を持って仕事に取り組む中で、自らが積極的に課題を見つけて改善する動きも促され、結果的に企業全体のパフォーマンス向上につながります。

従業員エンゲージメントを高める方法

従業員エンゲージメントを高めるためには、企業が従業員に対して適切な施策やサポートを実施する必要があります。ここでは、従業員エンゲージメントを高める主な方法をご紹介します。

経営理念を浸透させる

経営理念を浸透させることで事業を行う目的・意義や大切にすべき価値観などが明確になり、目的や誇りを持って仕事に取り組めるようになります。そのためにも従業員が理解しやすく、共感できる経営理念が策定できているかが重要です。

まずは自社の理念浸透度を確認し、従業員がどれだけ経営理念を理解し、日々の業務に落とし込めているかを調査してみましょう。場合によっては、経営理念やMVVの策定・再定義が必要です。

適切なフィードバックを実施する

適切なフィードバックにより、従業員は自分の長所や短所、成果や課題が把握できるようになります。フィードバックは上司から部下に対して行うものであり、適切なフィードバックを通じて上司との信頼関係も構築できます。上司との良好な関係性は、エンゲージメント向上に関係する大切な要素の一つです。

エンゲージメントを高めるためのフィードバックで大切なことは、本人に気づきを与えること、前向きなアドバイスをすることです。叱責や指摘だけのネガティブなフィードバックでは、モチベーション・エンゲージメントを低下させてしまう恐れがあります。適切なフィードバックによって目標や課題も明確になり、従業員はモチベーション高く業務に取り組めるようになるでしょう。

従業員のキャリア実現・スキルアップをサポートする

従業員が実現したいキャリアやスキルアップを企業が積極的にサポートすることも重要です。なぜなら、企業、組織からサポートされていることが認識・実感できると、その分企業に貢献しようと思えるようになるからです。

具体的には、従業員が希望するキャリア実現につながる配置転換の実施やキャリアパスの明確化、研修や資格取得支援のようなスキルアップをサポートする制度を整備するなどといった方法が挙げられます。

定期的に従業員エンゲージメントを調査する

従業員エンゲージメントを高めるには、現状のエンゲージメントを把握し、改善点を見つける必要があります。従業員エンゲージメントは、エンゲージメントサーベイによって調査可能です。

エンゲージメントサーベイとは、従業員のエンゲージメントを数値化する調査ツールであり、従業員がどれくらい愛着や貢献意欲を持っているか、仕事にやりがいや意義を感じているかを把握できます。数値化されることで具体的な改善点が把握でき、エンゲージメントを高めるために必要な施策を検討できます。

エンゲージメントスコアは日々変化していくため、定期的に調査することがポイントです。

従業員エンゲージメント向上の成功事例

弊社の支援実績から従業員エンゲージメント向上の成功事例をご紹介します。

事例1:周年記念プロジェクト(パーソルテンプスタッフ株式会社)

調査 / 戦略策定 / コンテンツ制作 / 浸透活動

【背景】
2023年に創立50周年を迎えたことを機に、社員・派遣スタッフ・クライアント・パーソルグループ各社、同社に関わるすべてのステークホルダーに創業時の想いや経営理念の真意の浸透・深化を図り、次の100年へ歩みを進めるためのプロジェクトを始動。プロジェクトの一環として、働く人のエンゲージメントを高める施策を実施しました。

【具体策〜成功へ】
周年記念プロジェクトの実施期間のうち、2022年10月〜2023年7月を過去を継承する期間とし、継承されてきた経営理念をより深く理解・共感してもらい、同社で働く人の誇りやエンゲージメントを高める施策を実施しました。

実施したこと

  • 創立50周年記念ロゴの制作
  • イントラサイトの開設
  • 社員向けスクリーンセーバーの制作
  • 社外のステークホルダーに対して50周年特設サイトの開設
  • 社員向けイベントの実施:キャラバン、感謝祭(オフラインイベント)

社員イベントは従業員エンゲージメント向上を目的に実施される施策の1つです。過去の継承期間となる1年の集大成として東京・大阪の2拠点で全社員を対象に実施。

また、過去を体感できるさまざまな展示、式典や社長によるスピーチ、創業者の生い立ちや同社の成長を描く特別映像などのコンテンツにより、創業者のDNAを社員一人ひとりに継承することを目指しました。実施後アンケートでは、参加社員の94%が5点中4点以上と回答し、エンゲージメント向上につながる満足度の高いイベントとなりました。

パーソルテンプスタッフ株式会社『周年記念プロジェクト』の詳細はこちら

事例2:人財成長支援プログラムの浸透(日本たばこ産業株式会社)

企画構成 / 制作進行 / ディレクション / アニメーション作成 / デザイン / 編集

【背景】
同社では、事業・組織の両面で環境変化が激しい時代であること認識し、変化に対して企業がの動的に働きかけるための人財成長支援体系を構築・整備。「個の自立・自律をより一層求めつつ、多様化およびTry&Challenge風土醸成を推進する」ことを理想像とし、「LIGHT UP」という成長支援プログラムを構築・発信しました。

【施策の具体例】

全社員が関わる施策を効果的に浸透させるため、弊社では以下施策をご支援しました。

実施したこと

  • ワークショップ
  • 新人研修映像の制作

まずは誰に対して・何を・どのように発信するかを企画検討し、ターゲットである従業員の成長ステージごとにペルソナを詳細設計。年齢、性別、役職、ライフステージ、入社動機、就労感に至るまで詳細に作り込み、プロジェクトメンバー内でのターゲット像を統一しました。
そして、ペルソナごとに抱える課題を抽出するため「AS IS – TO BE(今の状態と理想の状態)」をブレスト。課題にフォーカスできるよう実施施策を整理し、優先順位を決めていくプロセスを設計しました。

ワークショップは1ヶ月間数回にわたるディスカッションの実施を計画。ブレストの内容をドキュメントに落とし込み、施策を運用していく上での指針となる資料を作成しました。新人研修映像では「LIGHT UP」プログラム自体がターゲットにポジティブに捉えてもらえるよう、音楽やエフェクト、映像の構成を工夫して制作しています。

日本たばこ産業株式会社『人財成長支援プログラムの浸透』の詳細はこちら

事例3:理念浸透プロジェクト(日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社)

企画構成 / 制作進行 / ディレクション / コピーライティング / 取材・撮影 / 編集

【背景】
ブランド理念の共有・伝達・体現力を更に高めることを目的に、ブランド映像の制作をご支援しました。KFCの創業より培ってきた価値観と世界観を第一線で働く皆さんに正しく伝え、実際のお店でKFCのホスピタリティを体現してもらえることを目指した施策です。

【具体策〜成功へ】

ブランドムービーには、カーネル・サンダーズ氏が登場する数々の貴重映像を多用。
過去の映像だけでなく、活躍中の社員インタビューを盛り込むことで、過去から現在への繋がりを感じてもらえるよう工夫しています。また、アニメーションやタイポグラフィも使い、わかりやすい解説を心がけました。

実施したこと

  • ブランドムービー(映像)の制作

ムービーは新人アルバイトの初期研修や店舗従業員の年次研修、店長会議などで使用し、ブランドの浸透・再認識に活用しています。従業員アンケートでは、ブランドムービーが好評との声が得られ、長年働いている従業員も過去の写真や映像が盛り込まれていることで「自分たちがもっと頑張ろう」と改めて奮い立たされるとの感想をいただきました。

ムービー制作後、「KFCブランド」への一人ひとりの愛着は確実に高まってきており、お客様へのサービスや商品への情熱に反映されていると実感していただいています。お客様アンケートからはサービスや商品の品質への満足度が目に見えて向上していることがわかり、中期経営計画における商品の品質に関する目標数値の達成に寄与しました。

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社『理念浸透プロジェクト』の詳細はこちら

まとめ

従業員エンゲージメントとは、企業に対する従業員の貢献意欲です。貢献意欲が高いと生産性や仕事の質、そして顧客満足度が向上した結果、業績向上に期待できます。従業員エンゲージメントを高めるには、まず自社の従業員エンゲージメントがどれほどかを把握することが必要です。課題や目標をふまえ、自社に合った適切な従業員エンゲージメント向上の施策を策定・実行しましょう。

「エンゲージメントがなかなか向上しない」「エンゲージメント向上のために何から始めれば良いかわからない」など、エンゲージメントの向上にお悩みの方は、ぜひ揚羽にご相談ください。

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