食わず嫌い就活とは?

みなさま、こんにちは。ディレクターの松村です。

 

「食わず嫌い」と聞くと、みなさまも何か思い当たる食べ物があるのではないでしょうか。食わず嫌いとは、「食べたこともなく、味もわからないのに嫌いだと決め込むこと」ですよね。食べ物以外にも、特に理由もなく避けてしまうモノ・コトなど、誰でも経験したことがあるでしょう。

 

今回は、就職活動においても「食わず嫌い」の実態があるのではないかという仮説のもと、現代の就活生にあたるZ世代の特徴を分析し、どのような採用活動を行っていけばよいかを考えていきたいと思います。

就活の実態から考える食わず嫌い就活の姿

まず、実際に就活において食わず嫌いの実態があるかを検証しました。一般的な就活の流れをおさらいし、弊社揚羽の新入社員へ行ったアンケート結果をもとに、近年の就活生の行動を考察していきます。

一般的な就活の流れ

一般的な就活の流れは以下の通りです。

 

・大学*3年生 6月〜:就活準備
―業界・企業研究・インターンシップへの参加・自己分析 など

 

・大学3年生3月〜:ナビ媒体経由でプレエントリー
―プレエントリーで会社説明会へ参加
―エントリーシートの提出
―SPIや適性検査などの受検
・大学4年生:選考(面接)開始、内々定
*大学生以外の大学院1年生や短大1年生なども含む

 

上記は政府の要請に準じたスケジュールですが、近年では採用活動の早期化が顕著です。採用ナビ媒体を運営する各社の調査によれば、2022年の5月1日時点での就職内定率は60%*を超え、6月1日時点では70%*を超えています。通年採用の導入も議論されている中、企業と就活生が出会うタイミングは多様化しており、実質的には大学3年生の秋~冬に接触が必要だと考えられます。

揚羽の新入社員アンケートから見る就活の実態

それでは、弊社揚羽の新入社員へのアンケートから就活の実態を見ていきましょう。今回は主に2つの質問で、就活を振り返ってもらいました。

 

①説明会・インターンシップ・本エントリーをする業界・企業はどのように選びましたか?
②最初から受けていない業界と、その理由を教えてください。

 

・①説明会・インターンシップ・本エントリーをする業界・企業はどのように選びましたか?の結果
この質問に対する答えは主に2つに分かれました。「自分の軸や興味、志向から先に業界を絞るタイプ」と「幅広い業界を見ながら、接点を持った企業から業界を絞るタイプ」の2パターンです。

「自分の軸や興味、志向から先に業界を絞るタイプ」からは下記のような回答がありました。

興味のある業界の会社の中でも、先輩が働いている企業の説明会や選考に参加。ナビ媒体を利用せず、Wantedlyなどを活用していた

志望していた業界で働く先輩が受けた企業を聞き、すべて受けた。エンカレッジで接触した企業、Matcherのスカウト経由でも選考を受けた

自分の好きなもの、やりたいことに関係する業界をナビ媒体で検索し、エントリー。練習台として、スケジュールが合う企業に業界関係なくエントリーした。

興味がある業界の中でも、さらに自分がやりたい職種へチャレンジできる企業をエージェント経由で紹介してもらった。Offer Boxなどのスカウトも活用した

 

一方で、「幅広い業界を見ながら、接点を持った企業から業界を絞るタイプ」は下記のような回答がありました。

食わず嫌いをしたくなかったため、業界を絞らず話を聞き、少しでも興味を持った企業はインターンシップなどに参加をしていた。接触した際に得た情報をもとに、選考に進むかを判断した

就活初期はどのような業界があるか知らなかったため、企業名を知っているような食品や飲料系などの大手企業を受けていた。大学3年生の秋頃に知った人材会社をきっかけに、ベンチャー企業も見るようになった。自ら選考まで進んだのは、社員との交流ができるなど実際に働くイメージが持てる企業だった

どのような業界や職種に適性があるかわからなかったため、大学3年生の夏はエンカレッジの一括エントリーやナビ媒体で名前を知っている企業のインターンシップに手当たり次第エントリーした。インターンシップで仕事内容を知るなかで、やりたいことが明確になり業界を絞ることができた

就活初期は大学の同期が受けている業界に影響されていた。出展企業数が多い合同説明会などで企業の雰囲気や業界トップの企業を選んでいった

業界を絞らずに、早期選考を受けられる企業を見ていた

大学3年生の夏は広く浅くを意識し、各業界の大手企業のインターンシップに申し込んだ。名前を知らない企業は日程が合えば参加をしていた

 

・②最初から受けていない業界、またその理由を教えてください。の結果
揚羽の場合、広告業界を志望する人が集まりやすいため、初めから業界を絞っている人が多く、ほかの業界を見ている人は少ない結果でした。一部、ほかの業界を見ていた社員からの意見を掲載します。

 

無形商材に興味があったため、メーカーは見ていなかった

建設、化学・医薬品、素材・材料、金属、機械、自動車、エネルギーなどは、理系のイメージがあり見ていませんでした

IT系はプログラミング経験がないため向いていないと判断した

物流は不規則な生活になるイメージがあり見ていなかった。また不動産営業も体育会系なイメージがあり躊躇した

メーカーは企画に携われたら楽しそうだと思ったが、そういった仕事ができるまでに時間がかかりそうだと思った

金融・保険は、専門知識が必要なため、難しそうだと感じた。また数字に得意でないといけないというイメージがあったた

転勤が発生する企業は見ていなかった

食わず嫌い就活によって起こる採用活動の課題

揚羽の新入社員だけでも、参考になりそうな意見が出てきましたね。アンケート結果からわかるのは、「業界選び」のフェーズにおいて食わず嫌いが発生してしまうと、その先出会う可能性が著しく低いということです。

 

就活初期から業界を絞っているタイプは、同じ業界内であれば企業選びを深く行いますが、幅広い業界を見るタイプは「知名度」「「規模感」「文系・理系」「条件(説明会日程・勤務地等)」など、自分が持っている「イメージ」の眼鏡をかけています。実際何をしているのか知らないままシャッターを閉めるということは、まさに「食わず嫌い就活」というわけです。

 

食わず嫌い就活の実態は、消費者としての関わりがないBtoB企業や中堅・中小企業にとって、母集団確保の面で大きな課題です。反対に大企業にとっても、これまでにないタイプの人材獲得などにおいては方向転換が難しく、機会損失になってしまうこともあり得ます。

Z世代のインサイトを読み解こう

Z世代のインサイトを読み解こう

 

食わず嫌い就活を考える上で、もう一つキーワードになるのが「Z世代」です。Z世代とは、一般的に1990年代半ばから2010年代初期に生まれた世代のことを指し、アメリカではジェネレーションZとも呼ばれています。幼い頃からIT環境が整い、携帯電話やスマートフォンの使用があたりまえのデジタルネイティブであることが大きな特徴です。また、ソーシャルメディアを活用するソーシャルネイティブでもあります。現代の就活生はZ世代にあたるため、その特徴を捉え、ブランドコミュニケーションを設計していくことも、採用活動において重要と言えます。

Z世代の一般的な特徴

デジタルネイティブであり、ソーシャルネイティブであるZ世代の特徴は一般的に次のようのことが言われています。

 

・「自分らしさ」を大切にしたいという想いが強い
多様性を受け入れることがあたりまえのZ世代は、他者に対して年齢や性別などの属性にとらわれず「一個人」と接する傾向があり、自分も同じように「一個人」として「自分らしさ」を大切にしたいという想いがあります。「ジェンダーレス」「LGBTQ」などの知識や考え方が身についているという影響もあるでしょう。

 

・「自分がどう見られているか」を強く意識し、承認欲求が強い
SNSを通じてコミュニケーションを行うZ世代は、その特性上「面白いと思ったこと、楽しいと感じたことなどを共有したい」という想いが身に付いており、他者からの評価に敏感です。承認欲求が強い反面、他者への共感力があるとも言えます。

 

・効率性を重要視する
Z世代が育った2000年代は、スマートフォンだけでなくWebサービスやアプリ、AI、VRなどのIT技術・サービスが次々と登場しました。自然と新しいものを取り入れ、順応させていくことができ、自分らしい効率的な生活を築くことができています。

 

・消費行動に関して慎重
自分に必要なものか否か、口コミなどから情報を集め、「コストパフォーマンス」を重視するのがZ世代です。Z世代はリサーチ能力に長けており、口コミサイトだけでなくSNSからも情報収集をしています。

 

・オープンフラットなコミュニケーション/関係性を好む
Z世代はSNSを通じて、さまざまなコミュニティを築くことができます。国内外・年齢・性別・職種を問わずに、同じ考え方を持つ人とのつながりをつくったり、自分の考えを積極的に発信したりするため、オープンでフラットな関係を築くことが多いです。

 

・モノよりもコト(体験)に価値を感じる
Z世代はデジタルの世界が身近にあることから、反動的にリアルな体験を求める一面もあります。また、モノを所有することより、モノを利用することによって得られる体験(コト)に価値を感じるようです。

 

上記のようなことを考慮すると、Z世代が就職活動でどのようなことを考えているのかのヒントになるかもしれません。改めて考察してみましょう。

Z世代の就活

Z世代の特徴から考えられる、Z世代の就活は下記のようなことが考えられます。

  • 複数サービスを併用した企業探
  • 口コミからの情報の裏取り
  • 「自分らしく」が叶う企業
  • 「共感できるか」という物差し

一つずつ見ていきましょう。

 

・複数サービスを併用した企業探し
揚羽の新入社員アンケートでも、Wantedly、Matcher、Offer Boxなど主要媒体ではない採用サービスの名前が挙げられていました。ITサービスやアプリを使いこなすZ世代は、自分の目的に合わせツールを選ぶ力があります。複数サービスを挙げた新入社員は「自分の軸や興味、志向から先に業界を絞るタイプ」が多く、自分らしさを大切にしたいというZ世代ならではの就活のやり方とも言えるかもしれません。

 

・口コミからの情報の裏取り
消費行動と同じく、就職活動においても口コミで情報収集するのがZ世代です。知りたいのは、リアルな就業体験です。口コミサイトはもちろん、社員の個人アカウントを見ることも多いようです。

 

・「自分らしく」が叶う企業
揚羽の新入社員アンケートにもあったように、「メーカーで企画がしたいがすぐにできそうにないから受けない」「転勤はしたくない」など、自分の意志やプライベート、パーソナルな部分が尊重された上で働きたいと考えているのがZ世代です。また、「面接で緊張せずに話せた」といったありのままの自分を受け入れてくれるかも判断軸にあると考えられます。

 

・「共感できるか」という物差し
Z世代は、SNSにおける他者の発信に「いいね」をつけて共感していることを示しています。自分と感性が似ている、面白い・楽しいと思うことが同じ、または尊敬するなど、「共感できるか」は他者を見極める一つの物差しでもあります。企業においても同じく、その企業の事業内容、理念に共感できるか否かも最終的な企業選定に影響してくると考えられます。

まとめ

「食わず嫌い就活」の仮説のもと、揚羽の新入社員のアンケートとZ世代の特徴から、現在の就活生の特徴を紐解いていきました。採用ブランディング、採用広報に活かすべきポイントがいくつもあったかと思いますが、大切なのは初期接点を有効化させることです。そもそも接点がなければ、就活生からも、企業からもアプローチができません。

 

とはいえ、初期接点はメディアへの露出など物理的な問題も大きく影響します。また、Z世代というターゲットの特徴に合わせてナビ媒体だけでなく、SNSなど新しいツールも活用しながら接点を持っていくことが大事です。

 

同時に接点が作れた時に大切なのが、ターゲットに応じた共感を得ることです。Z世代は、企業からの一方的なメッセージだけでは、自分が働く姿を想像できない、もしくは拒否反応が出てしまうことも考えられます。「自己実現」と括られる言葉の裏にある「本音」は何なのか。例えば、「社会貢献」一つにとっても、対象・影響範囲・直接的か、間接的かなど、どのレベルで想像しているかによって、共感できるポイントは変わってきます。「自分らしく」という言葉も、どのように働けていたら自分らしく働けるのかの物差しは人それぞれです。

 

つまり初期接点を持った就活生の状況に応じて、柔軟に情報発信をし、小さな共感を積み重ねていけるかどうかが重要なのです。採用マーケティングの観点から考えると、ターゲットを複数設定・分析し、戦略を立てていく必要があるとも言えます。
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後編は、今回ご紹介したZ世代の特徴を捉えた、食わず嫌い就活における採用ブランディング・採用広報のアプローチについてご紹介できればと思います。

 

弊社揚羽は、採用ブランディングにおける一連の流れをトータルに設計し、新卒採用における課題解決をご提案してきた、数々の実績があります。新卒採用に関する課題解決をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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