はじめに

こんにちは、映像ディレクターの古田です。

 

前回は採用動画の潮流をふまえながら、どのような種類の採用動画があるか、事例を交えてご紹介しました。
前回の記事はこちら(採用動画のポイントをディレクターが解説! 〜採用動画の潮流編〜)

 

後編である今回は、採用動画を活用するメリット、動画制作の流れやその際に気をつけるべきポイントなどを解説していきます。

採用動画を活用する3つのメリット

言葉だけでは伝わりにくい人の魅力や会社の雰囲気を伝えられる

働く社員や職場の様子をドキュメンタリータッチの動画で見せることで、「どんな人たちが働いているか」「どんな社風の職場なのか」といった企業のリアルな雰囲気を伝えることができます。学生は実際に自分が働く姿を具体的にイメージすることができるでしょう。

心に響くエモーショナルな表現で強く印象に残すことができる

情熱的なインタビューやドラマチックなストーリーは見る人の心を動かします。強く印象に残る情緒的な表現を得意とするのも動画の強みです。就職活動の中で学生が出会う多くの企業の中で埋もれることなく記憶に残り、自社の志望度を上げる大きな要因のひとつにもなることでしょう。

情報を直感的にわかりやすく伝えることができる

動画の活用は情緒的な側面だけでなく、機能的な側面でもメリットがあります。事業内容や複雑なビジネスモデルを学生に理解してもらいたいときなど、画像やインフォグラフィックス、音やナレーションなどを組み合わせて、視覚と聴覚の両方で豊富な情報を伝えることができます。長いテキストだけで説明するよりも直感的でわかりやすいと言えるでしょう。

 

上記の3つのメリットに加え、例えば採用セミナーに毎回現場社員を呼ぶ負担を動画の活用で軽減することもできます。また、学生に話をする採用担当者やリクルーターのスキルによって情報のクオリティにバラツキが生じるケースもありますが、動画の活用で一定の質を担保することもできます。

 

最近はSNSによる情報発信も増えていますが、動画を活用した方が目に留まりやすかったり、オフラインでアプローチしにくい地方や海外に住む学生などにも興味を持ってもらえることが期待できます。

 

このように採用動画を活用してきちんと自社の魅力を伝えることができれば、学生の志望度を高めることができます。また、社風への共感やビジネス理解を深めた学生が選考に進むため採用のミスマッチを減らすこともできます。

 

一方で、採用における課題や動画の目的、自社の強みや魅力の整理などをきちんと行わずに制作すると、あまり効果的ではない採用動画になってしまうかもしれません。

 

そうならないために、制作する際にどのようなことに気をつければ良いか、実際の制作の流れに沿ってポイントを確認していきましょう。

採用動画制作の流れとポイント

・構成を決める
・撮影する
・編集する

 

動画制作の大きな流れは、シンプルに言えば上記の3ステップになりますが、各項目の中には細かなプロセスがあります。ドキュメンタリー、ドラマ、実写、モーショングラフィックスなど、制作する動画の内容によっても多少異なり、それぞれのプロセスに動画のクオリティを高めるためのさまざまなノウハウがあります。

 

特に採用動画で多いドキュメンタリータッチの動画制作を中心に、制作時の大事なポイントを解説していきます。

構成を決める

動画の構成というのは、伝えたい要素をどのような表現・流れで見せていくかをまとめた、いわば設計図のようなものです。文字だけで作る場合もあれば、より具体的なイメージがわかる絵コンテにする場合もあります。依頼する側と制作する側、関わるすべてのスタッフが完成形のイメージを共有するためのものです。

 

構成の時点できちんとイメージをすりあわせていないと、編集段階で何度もやり直しが発生したり、最悪のケースでは再撮影が必要になったりと、制作期間や費用が大きく膨らんでしまうことになります。

 

それだけに設計図となる動画の構成をきちんと作ることが大切なのですが、この構成の背骨となる「動画のコンセプト」を決めておくことがとても重要です。

 

コンセプトを決めるというのは「どんなターゲットにどんなメッセージを届ける動画にするのか」という「核となるテーマ」を設定するということ。「この動画にタイトルをつけるとすれば何か」と言い換えても良いかもしれません。

 

そもそも、実現したいビジョンや解決したい課題があり、それを達成するための手段の1つとして動画を活用するわけですが、コンセプトが無いままに表現手法やビジュアルだけが先行してしまうと、目的を見失ったクリエイティブになってしまう恐れがあります。

 

これはドキュメンタリー、ドラマ、インフォグラフィックスといった動画の表現手法が異なっても共通して言えることです。まずはコンセプトを決める。その上で、そのコンセプトを伝えるためにどのような表現方法で、どのような流れでシーンを構成していくかを考える。

 

特に仕事紹介などのドキュメンタリータッチの採用動画の場合、明確なコンセプトが無かったとしてもなんとなく作れてしまうため、このステップを飛ばしてしまいがちです。

 

非常に感覚的な部分も大きく、言葉だけでは表現しきれないイメージを伝えられる「動画」だからこそ、コンセプトを言語化して認識を合わせておくことが、撮影や編集に入る前の大事なポイントと言えるでしょう。

撮影する

コンセプトを決めて構成を作ったら、それに必要な素材を撮影していくことになります。撮影日数や撮影機材の種類、撮影に関わるスタッフの数などが費用の大きな変動要素です。どれくらい撮影が必要か、空撮やクレーンなど特殊な撮影機材を使用するか、どのような質感の動画にするか、予算の中で投資対効果のバランスを見ながら最適な選択肢を選びます。

 

採用動画は「ドキュメンタリータッチ」で仕事現場を撮影することが多く、狙いをあまり定めずに、とりあえず「現場での撮れ高勝負」で撮影してしまうことも少なくありません。しかし、ここにもクオリティを左右する大事なポイントがあります。

 

仕事現場に密着していれば「それなりの仕事シーン」が撮れるので採用動画として成立はするのですが、より効果的な動画にするためには、1つ1つのシーンにどのような意味を込めていくか、それが最終的にどうコンセプトにつながっていくか、といったところまで事前に考えておくことが大切です。

 

「情熱大陸」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」のような、ドキュメンタリー番組に近い演出で撮影する場合もありますが、採用動画はドキュメンタリー番組ほど長期に渡って取材するケースは少なく、撮影時間も限られています。なので短い時間の中でより良いシーンを撮影するための積極的な現場演出と、取捨選択するための的確な判断力が、制作する映像ディレクターには求められます。

 

例えばミーティングシーンの撮影1カットでも、その企業らしさが感じられるのはどのような瞬間か、真剣な表情を切り取るのか、フランクな人間関係を感じさせるのか、そこで交わされる言葉はどんな内容であるべきか、どんな画角でどんなレンズで撮影するとより効果的かなど、狙いを持って撮影現場をディレクションする必要があります。場合によってはそのようなシーンをうまく切り取るために、出演する社員の方に指示を出すなどの「演出」が必要なときもあるでしょう。

 

また、採用動画ではインタビューも重要です。単なる一問一答に終わらない深みのあるインタビューにするには、事前のリサーチやインプットが欠かせません。取材対象者の仕事内容を理解しておくのはもちろん、事業戦略や業界でのポジションなどクライアント企業を取り巻くビジネスの理解が求められます。映像ディレクターがインタビューをするのであれば、そのような会話の深掘りができるように、ビジネスの知識を常日頃からインプットおく必要があるでしょう。

 

ドキュメンタリー映像は、取材する人と取材される人との関係性が映し出されるものです。取材対象者の魅力的な表情や言葉をいかに自然体で引き出すことができるか。ドキュメンタリータッチの採用動画においては、映像ディレクターのインタビュースキルやコミュニケーション力もクオリティを左右する大きな要素と言えるのです。

編集する

魅力的なシーンを撮影したら、今度はそれを編集するステップに入ります。多彩な食材をどう調理するか、編集1つで料理の味は大きく変わってきます。

 

撮影素材だけではなく、海外の風景やビジネスイメージなど高品質なライブラリー動画が手軽に購入できる時代なので、そうした購入素材をうまく組み合わせて編集するケースも増えています。

 

画面の切り替えやテロップといった視覚的な編集だけでなく、音楽や効果音、ナレーションなど聴覚からの情報も加えて、よりリッチで印象に残る動画の表現を追求します。最近の学生はYouTubeやTikTokでテンポの良い動画を見慣れているため、ターゲットとなる世代の感覚に合った編集のリズムや演出表現なども意識する必要があるでしょう。

 

動画の編集も最初に作った構成をもとに進められますが、「想定以上に良いシーンが撮影できた」「良いコメントを引き出すことができた」場合などは当初の構成を一度壊して再構築しながら、より良い完成形を目指します。

 

編集でどちらを選択した方が良いか判断に迷ったときの指針になるのも、当初に設定したコンセプトです。どちらが伝えたいメッセージが伝わるか、課題解決につながるか、コンセプトに立ち返って最適な選択をすることが大切です。

弊社が制作した採用動画の事例

こうしたステップをふまえて制作した弊社の事例をいくつかご紹介します。

東急不動産株式会社様

「その街らしさ」を追求する東急不動産と「自分らしさ」に悩む就活生をリンクさせ、「『らしさ』に向き合うとは何か」というコンセプトで作られたドラマ仕立ての採用ブランデッド動画です。主人公の葛藤や成長のストーリーを通じて自社の魅力を伝え、働き方への共感や仕事への興味喚起を目指しました。

実績紹介の詳細はこちら(東急不動産株式会社様)

日本精工株式会社様

創立100年を超えるベアリング業界のパイオニアとして、チャレンジングな学生の採用を強化していくために、「未来を動かす意思はあるか。」という採用メッセージでコンセプト動画を作成。WEBやパンフレットも共通のコンセプトで制作し、採用ブランディングをトータルでお手伝いしました。

実績紹介の詳細はこちら(日本精工株式会社様)

株式会社コロプラ様

「仕事を、遊ぼう。」をコンセプトに、旅や座談会を通じて「真面目に遊ぶオトナ」を描いています。動画の演出や雰囲気も社風やカルチャーを感じるものに。ものづくりの本質に迫る社員の言葉や姿勢は、働き方への共感を醸成する内容となっています。

実績紹介の詳細はこちら(株式会社コロプラ様)

 

そのほかにも弊社の制作実績を掲載していますのでぜひご覧ください。
その他の採用動画の実績はこちら

 

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以上、今回は採用動画を活用するメリット、実際の制作の流れとその際のポイントをご紹介しました。

 

改めて制作時のポイントとなるのは、

 

・コンセプトを事前にきちんと決めることが大切
・「らしさ」を描くための準備と撮影テクニック
・編集で迷ったときに立ち返るのもコンセプト

 

制作会社に依頼するときも、このようなポイントを確認しながらコミュニケーションをとっていくと、よりクオリティの高い効果的な動画制作を実現できることでしょう。

 

全2回にわたって映像ディレクターの視点から採用動画について解説してきました。弊社ではこのような採用動画のポイントを抑えた上で、日々、クオリティの向上と人材の育成に取り組み、ご依頼企業様のビジョンの実現・課題解決につながるクリエイティブの制作をお手伝いしています。幅広い制作実績がありますので、お気軽にご相談いただければと思います。

 

それでは実際の動画制作の機会でお会いできることを楽しみにしています!

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