「オヤカク」という言葉、最近採用市場でよく耳にするようになったと感じませんか?
新卒採用が「超売り手市場」となる中で、学生本人の意思だけでなく、保護者の賛同を得られるかどうかが、内定承諾の決定打になるケースが増えてきています。
いま企業に求められているのは、単に「親の了承を得る」だけの確認作業ではありません。学生の背後にいる保護者にまで企業の魅力を伝え、ファンになってもらう。そんな採用ブランディングの視点が不可欠です。
本記事では、オヤカクの意味や注目される背景を整理しつつ、企業が講じるべき対策などについて解説します。
第1章:なぜ今、新卒採用で「オヤカク」が必要なのか
かつての就職活動では、親が子供の就職先に口出しをすることは「過干渉」と見なされ、企業側もそれをネガティブに捉える傾向がありました。しかし、労働人口の減少により採用競争が激化していることや、社会背景が変化していることもあり、その認識を改める必要があります。
内定を出した学生を確実に自社へ迎え入れるためには、学生の背後にいる「保護者」へのアプローチが不可欠な戦略です。では、なぜこれほどまでにオヤカクが重要視されるようになったのか。その理由を3つの視点から紐解いていきましょう。
1. 「2人に1人」の保護者がオヤカクを受けている
就職活動における保護者の影響力は、データにはっきりと表れています。 マイナビの「2024年度 就職活動に対する保護者の意識調査」によると、子供の内定先企業から「オヤカク(内定確認の連絡)」を受けたことのある保護者は45.2%に上ります。
ここで注目すべきなのは、企業からの働きかけに対する保護者の反応です。連絡を受けた保護者の67.8%が、その対応に「良い印象を持った」と回答しています。現代の保護者は、企業からの接触を「子供を預かる企業としての責任ある態度」や「丁寧な情報開示」と捉え、ポジティブに評価する傾向にあります。
逆に言えば、保護者へのフォローが一切ない場合、「不親切な会社」「配慮が足りない」という不信感を抱かれるリスクすらあるということです。
出典:マイナビ 2024年度 就職活動に対する保護者の意識調査
2. 親子関係の変化と意思決定の共有
Z世代の就活生とその保護者(主にバブル世代〜団塊ジュニア世代)の関係性は、かつてのような「権威的な上下関係」とは異なります。何でもフラットに相談し合う、「友達親子」に近い傾向があります。
学生にとって親は「最も身近で信頼できる社会人の先輩」であり、その意見は就職先決定において非常に重要な判断材料となります。そのため、「親に反対されたから辞退します」という理由は、単なる断りの口実ではなく、本当に親を説得できずに悩んだ末の結果であるケースが少なくありません。学生本人の意思だけでなく、保護者も納得させられる材料がないと、内定承諾には至らないのです。
3. 情報不足による「ブラック企業」への懸念
保護者世代が就職活動をしていた時代と現在では、業界構造や労働環境の基準が大きく異なります。保護者自身が、最新の業界トレンドや、BtoB企業、スタートアップなどの実態を詳しく把握しているとは限りません。
そのため、なじみの薄い企業に対して、「経営は安定しているのか」「過重労働(ブラック企業)ではないか」といった懸念を抱きやすくなります。企業の実態がどれほど優良であっても、正しい情報が保護者に届いていなければ、漠然とした不安から反対される可能性が高まります。
この「情報の空白」を埋める作業こそが、オヤカクの本質です。
第2章:学生と保護者の「視点の違い」を理解する
オヤカク対策を行う上で最も重要な視点は、学生と保護者では「求めている情報」が決定的に異なるという事実です。
企業側は往々にして、学生を惹きつけた魅力(「挑戦」「成長」など)をそのまま保護者にも伝えようとしますが、これは逆効果になりかねません。学生が「未来」を見ているのに対し、保護者は「現実」や「生活」を見ています。この視点のズレを理解せずに行うコミュニケーションは、保護者の不安を払拭するどころか、かえって不信感を募らせてしまいます。
「攻め」の学生、「守り」の保護者
学生と保護者それぞれの関心事は、具体的に以下のように分類できます。
学生の関心(攻めの情報)
- 自己成長できる環境か、スキルの習得は可能か
- 仕事のやりがい、ビジョンへの共感
- 社風の良さ、社員の人柄や雰囲気
保護者の関心(守りの情報)
- 経営の安定性、財務基盤は盤石か
- 福利厚生、給与水準、手当の有無
- 労働環境(残業時間の実態、有給取得率、離職率)
- 法令遵守(コンプライアンス)の体制
多くの企業で見られる失敗例は、学生向けの情緒的なメッセージ(「圧倒的成長」「変革を起こす」など)だけを記載した採用パンフレットを、そのまま保護者に見せてしまうことです。安定を求める保護者に対し、過度に挑戦的なメッセージだけを伝えると、「教育体制が整っていないのではないか」「激務で使い捨てにされるのではないか」というネガティブな要素として受け取られる恐れがあります。
したがって、保護者に対しては、学生向けとは切り口を変えた、客観的かつ安心できる「守りの情報」を提供する必要があります。
第3章:信頼を獲得するオヤカク対策の具体策
保護者の不安を解消し、信頼を得るためには、意図を持ったコミュニケーションが必要です。 具体的には、「直接的な情報の提供」と「間接的な社会的信用の証明」という2つのアプローチを組み合わせることが効果的です。
ここでは、一例として3つの具体的な施策を紹介します。これらは個別に実施するだけでなく、フェーズに合わせて複合的に展開することで、より強固な信頼関係を築くことができます。
1. 「保護者向けパンフレット」による事実の提示
最も基本かつ効果的な施策は、学生向けの採用パンフレットとは別に、保護者向けの資料(クロージングブック)を作成し、内定承諾の前後で配布する手法です。
掲載すべき要素
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- 客観的な経営データ: 売上推移、創業年数、自己資本比率、主要取引先など、企業の安定性を客観的に証明する数字。
- 労務環境のQ&A: 「残業時間は月平均何時間か」「離職率はどの程度か」「転勤の頻度は」など、保護者が聞きにくいが最も気にしている情報への明確な回答。
- 教育・研修制度: 入社後の育成カリキュラムの全体像や、メンター制度の有無。
WebサイトのURLを共有するだけでなく、物理的な「冊子」として手渡すことが重要です。「わざわざ保護者のために資料を用意している」という事実そのものが、企業の情報開示に対する誠実さと、社員を大切にする姿勢を印象付けます。
2. 「手紙」や「説明会」による対人コミュニケーション
パンフレットなどの媒体だけでなく、「人」を通じたアナログなコミュニケーションも有効です。
- 役員名義の手紙: 内定通知のタイミングで、経営層や人事責任者の名義で保護者宛に手紙を送付します。「大切なお子様を責任を持って預かり、一人前の社会人に育てます」というメッセージは、保護者の感情に訴えかけ、安心感を与えます。
- 内定者保護者会: オンラインや対面で保護者向けの説明会を開催します。人事担当者だけでなく、社長や現場社員が直接話し、質疑応答に応じることで不透明さを排除します。また、オフィス見学を実施し、清潔で明るい執務環境を見せることも、ブラック企業への懸念を払拭する決定打となります。
3. 「広告出稿」で社会的信用をつくる
これまでご紹介したパンフレットや対面などの直接的な施策に加え、「広告」を活用することも有効なオヤカク対策になります。
保護者世代は、Web上の情報よりも、テレビCMや交通広告(電車、駅)、新聞といったマスメディアに高い信頼を寄せる傾向があります。「公共の場に広告を出せる=社会的信用の高い企業」という認識があるためです。
採用と組織への効果
例えば、通勤に使う主要駅などに広告を出すことは、認知拡大だけでなく、以下のような心理的効果をもたらします。
- 保護者への効果: 日常生活でその企業の広告を目にすることで、「しっかりした会社である」という認知と安心感が醸成されます。また、「名前も知らない会社」から「駅で見かけたあの会社」へと認識が変わり、採用ブランディングの効果もあります。
- 学生への効果: 入社予定の企業が社会的に認知されていることを実感し、「家族や友人に誇れる会社だ」という自信と帰属意識につながります。
実際に、企業広告を戦略的に展開した結果、内定辞退率の低下や、社員とその家族のモチベーション向上につながった事例もあります。広告は単なる宣伝ではなく、保護者に対する「信用の証明」としても機能します。
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まとめ:保護者を一番の味方にするためのブランディング
オヤカクは、単なる事務的な確認作業ではありません。内定辞退というリスクを防ぐための策であり、同時に、社員を支える家族を「企業のファン」にするためのブランディングでもあります。
オヤカク対策のポイント
- 市場理解: 保護者の関与は当たり前、適切な情報提供は好意的に受け入れられる。
- 情報区分: 学生には「成長・やりがい」、保護者には「安定・環境」。相手に合わせた情報を届ける。
- 手段の組み合わせ: パンフレットや手紙といった直接的なツールと、広告による社会的信用の獲得を使い分ける。
特に、知名度に課題を感じているBtoB企業やベンチャー企業こそ、保護者に対する丁寧なコミュニケーションと戦略的な情報発信が、採用成功の分かれ道になります。
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