エンゲージメントとは、「誰か・何かに貢献しよう」という意欲のことです。従業員のエンゲージメントを高めることは、生産性や顧客満足度につながり、最終的に企業の業績向上に貢献します。
今回は、従業員エンゲージメントを向上させるとはどういうことかをふまえ、向上に効果的な6つの施策を具体的な事例とともにご紹介します。
従業員エンゲージメントの基本|定義と重要性を理解する
まず、従業員エンゲージメントとは何か、そしてなぜその向上が企業にとって重要なのか、基本的な部分を整理しましょう。
まずは定義から:従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントが向上するということは、従業員が企業に貢献する意欲を高め、企業とのつながりを強くすることです。
これは、従業員と会社との「つながりの強さ」や、従業員が会社に持つ「愛着心の高さ」ともいえます。エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業に貢献したい意欲が高く、企業や仕事に誇りや愛着を持ち、仕事への熱意も高い状態を指します。
また、従業員エンゲージメントが高い従業員は、職場環境や業務内容、給与や福利厚生などにも満足している傾向があり、従業員満足度を高めることも、エンゲージメント向上に含まれる要素です。
従業員エンゲージメント向上で得られる5つの具体的なメリット
従業員エンゲージメントが向上すると、企業に以下のようなメリットを享受できます。
- 従業員の生産性向上:仕事への意欲が高いと、効率的に業務が進められ、生産性が向上します。
- 顧客満足度の向上:仕事や自社のサービスに誇りを持つことで、仕事の質が高まり、顧客満足度向上につながります。
- 業績向上:生産性と顧客満足度の向上は、企業の利益を生み出しやすくします。
- 離職率の低下:働きがいを感じ、職場環境にも満足することで、従業員の定着率が高まります。
- 課題に取り組む姿勢の改善:会社への貢献意欲が高いと、問題発生時にも積極的に取り組む姿勢が醸成され、企業全体のパフォーマンス向上につながります。
エンゲージメントを構成する3つの指標|「働きがい」「働きやすさ」「思い入れ」
当社揚羽では、従業員エンゲージメントは以下の3つの指標で構成されていると考えています。エンゲージメント向上とは、これらの指標にアプローチすることです。
指標1:「働きがい」|仕事への情熱を生み出す要素とは
「働きがい」は、仕事そのものから得られる満足感や達成感を指し、以下の要素から構成されます。
- 経営計画
- 事業内容
- 人材配置
- 能力開発
- 職務内容
働きがいを生み出すには、従業員が自身の能力を発揮でき、成果を出せる適材適所な人材配置や、納得感のある業務内容、成長機会が必要です。これらが満たされると、モチベーション高く業務に取り組め、成果も出しやすくなり、人事評価にもプラスに影響します。
結果として、働きがいを感じられ、企業への貢献意欲も高まるのです。
指標2:「働きやすさ」|安心して働ける環境を作る要素とは
「働きやすさ」は、従業員が心身ともに健康で、安心して長く働ける環境を指し、以下の要素から構成されます。
- 雇用環境(待遇)
- 職務環境
- ワークライフバランス
- 評価・報酬
働きやすさを生み出す要素は、主に環境や報酬といった外部要因です。近年重視される「ワークライフバランス」もこの一部であり、仕事と生活が調和し、心身が疲労しない状態が大切です。
これらの要素に総合的に満足できる制度や環境を整えることが、働きやすさを生み出し、従業員の定着に繋がります。
指標3:「思い入れ」|企業への共感を育む要素とは
「思い入れ」は、企業理念や組織文化への共感、愛着心を指し、以下の要素から構成されます。
- 経営理念
- 組織風土
- 共有の価値観
- コミュニケーション
「思い入れ」を生み出す要素は、主に企業文化です。経営理念や共通の価値観が浸透してこそ、組織への共感が生まれ、自発的な貢献意欲が引き出されます。
「働きがい」「働きやすさ」と異なり可視化しにくい要素であるため、アプローチが難しく、なおざりにされやすいですが、エンゲージメント醸成には非常に重要な要素です。
企業文化が浸透していないと他の施策も表面的になる恐れがあるため、「思い入れ」を生み出す要素の明確化・浸透を優先的に実施することがポイントです。
【実践】従業員エンゲージメントを高める6つの向上施策
従業員エンゲージメント向上の施策とは、「働きがい」「働きやすさ」「思い入れ」の3つの指標を高めることです。ここで紹介する6つの施策は、従業員エンゲージメントを構成する下記指標にアプローチできます。
- 働きがい:人材育成、人事制度
- 働きやすさ:オフィス・ツール、社員補助、働き方支援
- 思い入れ:組織文化の醸成
それぞれの施策について、具体的な事例とあわせて解説します。
施策1:人材育成|成長を支援し「働きがい」を高める
従業員の成長を支援し、組織への貢献意欲や帰属意識を高めることは、「働きがい」向上に不可欠です。「キャリア設計」と「トレーニング」の両面からアプローチすることが主軸となります。
- キャリア設計の施策例
- 1on1ミーティング
- 目標管理制度(MBO)
- リバースメンタリング制度 など
- トレーニングの施策例
- リーダーシップ・マネジメント研修
- 資格取得支援
- 社会人インターンシップ制度 など
キャリア設計が明確であれば、従業員は組織で継続して働きたいと感じ、定着が促されます。また、企業が人材育成に力を入れるほど、従業員は「企業は自分の成長を支援してくれている」と実感でき、貢献意欲の向上につながります。
施策2:人事制度|納得感のある評価で「働きがい」を醸成
努力や成果が公正に評価され、適切な配置や報酬に繋がる人事制度は、「働きがい」を支える基盤です。特に給与や評価はエンゲージメントへの影響が大きいため、従業員が納得感を持てる仕組みを整えることが重要です。
- アサインメントの施策例
- 社内ドラフト制度
- ジョブローテーション制度
- 好きな業務に使える時間 など
- 給与・評価の施策例
- 賃金制度の改定
- 給与のオープン化
- 360°評価 など
給与や評価といった外発的動機づけとなる要素が、自身の頑張りや成果に正しく連動していると感じられると、従業員は働きがいをより強く実感しやすくなります。
施策3:オフィス・ツール|物理的な「働きやすさ」を整備
快適で効率的に働ける物理的な環境は、「働きやすさ」を直接的に向上させます。仕事に集中できる、あるいはリラックスできるオフィス環境や、業務効率化を支援するツールを整備することは、生産性やモチベーション向上にも繋がります。
- オフィスファシリティの施策例
- 社員食堂、オフィス設置型食事補助
- 短時間の昼寝、リラックスタイム、マッサージチェア
- 集中スペースの設置 など
- ツールの施策例
- チャットツール
- 必要なPCの選択権
- 大型モニターやマウスの充実 など
仕事のしやすさや疲労軽減に配慮された環境・制度、業務効率化ツールは、従業員の満足度と仕事への意欲を高める上で重要な要素です。
施策4:社員補助(福利厚生)|生活面から「働きやすさ」をサポート
いわゆる福利厚生を充実させることは、従業員の生活を支え、「働きやすさ」と満足度を高めます。飲食、家庭、健康など、幅広い補助を提供することで、貢献意欲の向上も期待できます。
- 飲食補助の施策例
- 飲み会費用負担
- 無料フード・ドリンク
- 朝食サポート など
- 家庭補助の施策例
- 家賃補助
- 通勤手当
- 社内保育園 など
- 健康補助の施策例
- 健康診断サポート
- スポーツジム補助
- 産業医・心理士面談 など
従業員の多様なライフステージやニーズに応える補助が充実しているほど、働きやすさを感じやすくなり、結果としてエンゲージメント向上に繋がります。
施策5:働き方支援|多様なニーズに応え「働きやすさ」を実現
近年高まる多様な働き方のニーズに応えることは、エンゲージメント向上に有効です。休暇制度、柔軟な雇用・時間・場所、社会貢献活動など、ワークライフバランスを支援し「働きやすさ」を高めます。
- 休暇制度の施策例
- 男性の育休取得推進
- 有給取得インセンティブ など
- 自由な雇用体系の施策例
- 副業制度
- 雇用形態選択制度
- 退職者再雇用制度 など
- 自由な時間の施策例
- フレックスタイム
- 6時間労働
- 時差通勤 など
- 自由な場所の施策例
- リモートワーク
- アウトドアワーク
- ワーケーション など
- 社会貢献活動の施策例
- ボランティア
- プロボノ活動の推進
- SDGs活動推進 など
時間や場所にとらわれない働き方や、多様なキャリアパスを許容する制度は、従業員の自律性を尊重し、エンゲージメントを高める効果が期待できます。
施策6:組織文化の醸成|インナーブランディングで「思い入れ」を育む
「インナーブランディング」を通じて企業の価値観を浸透させ、組織文化を醸成することは、「思い入れ」を育む上で欠かせません。コミュニケーションやイベントを通じて一体感を高めます。
- コミュニケーションの施策例
- ミッション・ビジョン・バリューの明確化、浸透
- Web社内報
- サンクスメッセージ など
- 社内イベントの施策例
- 社員旅行
- 表彰式
- 社内の部活動支援 など
特に、経営理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の明確化・浸透は、組織の共通的価値観となり、他の施策の土台となるため、優先的に取り組むべきです。
関連記事:「インナーブランディングの施策とは?具体例を紹介」
エンゲージメント向上を成功させる2つの重要ポイント
これまで多くの施策を紹介しましたが、多くの企業が見落としがちで、かつエンゲージメント向上に非常に重要なポイントが2つあります。
- 明確な指針となる言葉がある
- 上司が部下を褒める
これらは当たり前と思えますが、実は実践できていない企業が多いポイントです。なぜこの2点が重要なのか、そのためにはどうすれば良いのかを見ていきましょう。
ポイント1:企業の「羅針盤」となる理念・ビジョンを明確化し、浸透させる
従業員エンゲージメントを向上させる上で、理念・戦略を明確に言語化することが重要です。言葉があり、それが文化にまで昇華している会社は、従業員とのつながりが強く、同じ方向に向かって進むことができます。
経営理念の重要度が高まったのは2000年代と比較的最近であるため、まだ明確化・浸透できていない企業も少なくありません。指針となる言葉を策定し、従業員に理解・浸透させることは、優先的に取り組むべきです。
従業員に理念が浸透していない原因は、以下のようにさまざまです。

理念の浸透度によって課題は異なるため、自社の状況に合わせた施策が必要です。
ポイント2:「承認」と「称賛」を文化に|上司が部下を褒める重要性
日本能率協会マネジメントセンターの調査「イマドキ新人社員の仕事に対する意識調査2021」によると、Z世代は「できている点に目を向け、褒めてもらう」指導方法を求めています。
また、リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2022」では、新入社員が仕事をする上で重視することとして「貢献」が成長を上回りました。自分が貢献できているという実感は、他者からの評価によって得られます。それゆえに、上司が部下を褒めることは、貢献意欲を満たし、やる気を引き出す原動力となり、エンゲージメント向上に繋がります。
日々の業務で意識するだけでなく、サンクスカードや表彰制度のように、「褒めることを仕組み化」することもポイントです。
関連記事:「褒め合う・感謝し合う」組織風土づくりに、いま関心が高まる理由」
まとめ|従業員エンゲージメントを高め、持続可能な組織を目指そう
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業に貢献したい意欲が高く、企業とのつながりが強い状態です。この強い貢献意欲は、生産性や仕事の質向上につながり、結果的に利益を生み出します。さらに、離職率の低下や課題への積極的な取り組みといったメリットも期待できます。
従業員エンゲージメントは、「働きがい」「働きやすさ」「思い入れ」の3つの指標から構成され、これらを高める施策が有効です。
今回ご紹介した6つの施策とあわせて、「明確な指針となる言葉の策定・浸透」と「部下を褒める文化の醸成」も意識して、エンゲージメント向上の施策に取り組んでみましょう。
「自社のエンゲージメントが把握できていない」「エンゲージメントを高めるためにどういった施策に取り組めばいいかわからない」など、エンゲージメント向上に課題やお悩みがある場合は、ぜひ揚羽にご相談ください。









