2025年5月15日(木)に、「ブランディングに効く!周年事業の戦略的な組み立て方と成功の秘訣」と題したセミナーを開催しました。株式会社揚羽で多くの企業の組織変革・浸透支援を手掛けるシニアコンサルタント/シニアプロデューサーの佐藤 孝良が登壇し、周年施策の考え方やプロセス、成功のポイントなどについて独自のノウハウを交えながら解説しました。

本セミナーレポートでは、講演の主要なポイントをまとめ、貴社の周年事業にお役立ていただける情報をお届けします。

目次

周年事業とは?企業ブランディングにおけるその意義と目的

周年とは、会社が設立してから10年、20年などの節目のことです。この節目のタイミングで社内・社外向けにイベントを開催する企業が近年増えてきています。

そもそも、周年事業とは、企業の「すごさ」や「これからも応援したい気持ち」などの「信頼」や「期待」を感じさせる取り組みです。

社内に対しては社長や役員などが社員に感謝を伝えたり、自社の歴史を振り返ったり、または企業の今後のビジョンを共有したりします。社外に対しては、ステークホルダーに対して日頃の感謝を伝えるほか、PRの場としても利用されます。

戦略的な周年事業の始め方:プロジェクト設計の初期ステップ

「何から始める?」周年プロジェクト立案の3つの重要観点

周年に向けたプロジェクトを立ち上げるにあたって、「何から始めていいかわからない」といった悩みは多いでしょう。周年は社内・社外に向けて「信頼」や「期待」を感じさせる取り組みですが、その視点だけでは周年を成功に導くのは難しいといえます。

周年プロジェクトを実施するにあたっては、以下3つの観点からプロジェクトを考えていく必要があります。

  1. 目的
  2. 「誰に」「何を」伝えるか
  3. ブランディングにどうつながるか

周年イヤーの過ごし方:周年を”どんな機会”にするか目的とコンセプトを明確に

周年イヤーの大きな目的は、社内・社外に「信頼」や「期待」を感じさせることですが、企業によってさまざまな方向性があります。周年を「どんな機会にするか」によって、施策が変わるため、まずは周年の目的とコンセプトの明確化が必要です。

たとえば、周年イヤーの方向性として、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 参加意識・ボトムアップを醸成する1年
  • 所属意識・誇りを感じさせる1年
  • 従業員同士の距離を縮める1年
  • 組織の内と外にブランド浸透を図る1年

周年イヤーの方向性に正解はなく、目的やテーマは企業としてのライフサイクルやステージによっても変わってきます。

周年プロジェクトで設定すべき4つの目的(インナー/アウター視点)

周年プロジェクトのテーマにも関係してくるものですが、周年プロジェクトにはインナー・アウター向けに以下の大きな4つの目的が設定できます。

経営課題の可視化から始める周年目的設定の重要性

どの目的で実施するかは、経営課題次第です。たとえば、社員が仕事にやりがいを感じられていなかったり、定着率に課題があったりする場合には、周年を機に組織の一体感を醸成することで、エンゲージメント向上を図れるでしょう。

しかし、そもそも経営課題が何かを把握できていないケースも少なくありません。そこで、周年を機に「経営課題の整理」や「理念策定からスタート」する企業もあります。

周年事業の核となるメッセージ:「これまで」と「ありたい姿」の策定

全ての周年事業に共通する「伝えるべきこと(What)」とは

どの目的であっても、周年事業を実施するすべての企業が共通して定めることは「周年として伝えること(what)」です。

「周年として伝えること(what)」とは、企業や商品の「これまで」と「ありたい姿」のことです。周年は、企業のDNAを考え、未来と接続する機会ともいえます。

企業のDNAを形作る「これまで」の軌跡の言語化

「これまで」とは、今日まで企業を創り上げてきた軌跡であり、今後も変わらない企業の普遍的なDNAのことです。「これまで」を明確にするためには、これまでを振り返って、自分たちが何者といえるのかを定めていく必要があります。

未来への羅針盤となる「ありたい姿」の提供価値と具体像

一方、「ありたい姿」とは、未来に向けた企業の「提供価値」と「その具現化イメージ」のことです。企業の普遍的なDNAを知ってもらい、その上で企業が今後どう未来に向けて動いていくのかをステークホルダーに伝えていきます。

なぜ「これまで」と「ありたい姿」を伝えることがブランディングにつながるのか

周年を実施する目的や方向性は企業によってさまざまですが、なぜ「これまで」と「ありたい姿」は共通して伝えていくべきなのでしょうか。

その理由は、企業の「これまで」と「ありたい姿」を伝えていくことが、ブランディングにつながるからです。

そもそも、周年は社内・社外に「信頼」と「期待」を感じさせる取り組みです。周年を通して従業員・顧客それぞれが企業の「信頼」と「期待」を感じられることで、以下のような感情が生まれます。

従業員 顧客
・こんなに素敵な企業だったのか

・これからも、ここで働きたい

・もっと頑張ろう

・やっぱりいい企業だ

・これからもお願いしたい

こうした感情が生まれることで、従業員は「自社で働く理由」が、顧客は「企業、サービス、商品」を選ぶ理由が生まれます。

この「選ばれる理由が生まれること」こそがブランディングなのです。つまり、周年は「これまでと、ありたい姿」を策定し、伝えることで「選ばれる理由をつくる活動」とも言い換えられます。

周年を成功に導くインナーブランディング戦略:「バタフライモデル」の活用

インナーとアウターの一貫性が鍵:バタフライモデルとは?

周年をブランディングにつなげていくには、バタフライモデルを考慮することがポイントです。

バタフライモデル とは、揚羽が考案した「インナー&アウターブランディングを一気通貫で行うブランディングの方法論」です。「バタフライ」は、社名である揚羽と揚羽蝶をイメージしています。

社内外の「信頼」と「期待」を同時に高める揚羽式ブランディング方法論

ブランディングは、社内・社外に伝えるメッセージが一貫していないと成功しません。なぜなら、社内と社外で伝えるメッセージがバラバラだと、企業の一貫したイメージや価値は生まれないからです。

バタフライモデルを活用することで、インナー・アウターに同時にアプローチ可能です。インナー・アウター共通のWhatを表現することで、「従業員からの信頼・期待」と「社外からの信頼・期待」を同時に高め、変革を起こしていけるようになります。

インナー施策とアウター施策の連携が生むブランディングの好循環

インナーとアウターでできる施策は、以下のようにさまざまです。

インナーは、人と組織の成長に働きかけていく取り組みです。アウターに対しては、社内の取り組みも含めてブランドメッセージを発信したり、社外とコミュニケーションを取ったりしていきます。

インナーとアウターの取り組みがつながることで、アウターで得た効果や反応がインナーに返り、ブランディングの好循環が生まれます。

揚羽では、こうした姿を目指していくための機会として周年を位置付けるのをおすすめしています。

実践!周年プロジェクトの進め方と成功の秘訣

周年プロジェクトの一般的な進め方と陥りがちな課題

周年プロジェクトは、2年前くらいから全体の構想を策定し、1年前から実際の企画・制作、実施計画を進めていくのが一般的なプロセスです。

プロジェクトのプロセスは一連のストーリーで考えることがポイントです。ピークに向かっていくイメージで進めていき、周年イヤー後も継続的に展開していくことが重要です。

一方で、周年事業に取り組む上では、「目指す目的が曖昧になる状態」「一部のメンバーの負担が大きい」「社内を巻き込みきれておらず、温度差があって盛り上がらない」「一過性で終わってしまう」といった状態に陥ることがあります。

周年事業を成功に導く核心:目的の明確化と社内外のエンゲージメント

そのためには、周年の目的とコンセプトをしっかりと設定することが大切です。「何をやるのか」ではなく、「何のためにやるのか」を明確にすることが成功のポイントとなります。

目的を明確にするには、経営課題を把握する必要があります。目的が曖昧なまま、とりあえず周年に向けて進行するのではなく、「経営課題の把握」「目的の明確化」というステップを踏んで計画的に進めていきましょう。

くわえて、周年の重要性を訴求して社員を巻き込み、社員も実感できる成果を創出することを目指して、継続的な施策を展開していくこともポイントです。

【Q&A】周年事業に関するご質問

Q:プロジェクトチームを発足することになったが、他部署社員も通常の仕事を抱えており、なかなか時間は割けません。そのような中、どのように進めるのがよいか。

A:周年は、「新たなことを考える」というよりも、「従前からやりたかったことや、課題としていたことへの取り組みを推進する機会」として活用する考え方で進める方が、やるべきことが明確になりやすく、通常の業務と関連付けて進めやすいです。

また、プロジェクトチームを編成し検討を進める際には、目的とコンセプトを決めたのちは、施策アイデアを社内から募る方法や、必要なタスクを洗い出し、メンバー内でタスクを分担する等の進め方が、負担の分散に繋がります。

《お役立ち資料》理念の重要性と浸透活動のポイント


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