今、自社でテレビCMを打つとしたら、その「目的」は何でしょうか?

「知名度を上げたい」「製品を売りたい」。 もし答えがそれだけだとしたら、少し立ち止まる必要があるかもしれません。

近年、BtoB企業のテレビCM出稿数は、10年間で約2.6倍に急増しています。しかし、その目的はかつてのような「販売促進」や単に知名度を上げることだけではありません。

出典:CM総合研究所(機械や素材がCM攻勢、10年で2.6倍 採用・NISAで転換)

多くの企業は今、「採用(人材獲得)」「社内エンゲージメント(社員の意欲)」の2つの課題を同時に高める投資として、企業広告を活用し始めています。

なぜ、広告が「採用」と「組織」に効くのか? そして、なぜ「いきなりCMを作ってはいけない」のか?人と組織を動かす新しいブランディングの進め方を解説します。

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第1章:採用の「勝ち筋」の変化

「給与や待遇を良くすれば、人は来るし、辞めないはずだ」。 そう信じて制度を整えても、採用難や離職が止まらない。そんな悩みを抱える企業が増えています。

その背景には、働く人々の意識変化と、現代特有のシビアな就活事情があります。

「知られていない」は致命的、就活生のリアルなデータ

BtoB企業が直面する最大の壁は「認知不足」です。リクルートの調査によると、入社先を決定した学生の動きには、ある明確な傾向が出ています。

  • 就職先を決定した学生の35.4%が、就活開始前から知っていた企業に入社している。

多くの学生が数ある応募先の中から企業を選ぶ際、「名前を知っている」という事実だけで、選択肢の最上位に入り込む大きなアドバンテージになります。逆に言えば、認知を獲得できていなければ、優秀な人材の獲得競争では、スタートラインにすら立てていないのが現実です。

早期に社名を浸透させ、学生の記憶に残る存在になっておくこと。それが人材獲得競争を有利に進めるための第一歩です。

出典:株式会社リクルート 『就職プロセス調査2023年卒』

Z世代は「ネット」よりも「テレビ」を信頼する理由

では、どうやって認知を獲得するか。「若者はテレビを見ないからWeb広告だ」と思いがちですが、ここにも誤解があります。

デジタルネイティブであるZ世代の就活生は、ネット上の情報には嘘やフェイクが混じっていることを熟知しています。だからこそ、公共性の高いマスメディアで流れる情報に「審査を通過した信頼できる企業」という安心感を持つのです。

データを見ても、Web動画広告よりテレビCMの方が「企業名が印象に残る」「企業への信頼感がある」という回答があります。さらに、テレビCMは学生本人だけでなく、その親御さんへの安心材料(オヤカク)としても機能します。

出典:株式会社ビデオリサーチ『Z世代の「テレビ」と「スマホ」 1インプレッションの価値を比較』

出典:株式会社No Company『Z世代の就活実態調査』

選ばれる条件は、知名度よりも「社会的意義」

しかし、ただテレビに広告を出せば良いわけではありません。伝えるべき「中身」も変化しています。

  • 就活生:「安定」よりも「社会的な影響力があるか」「新たな価値を生んでいるか」を重視する。
  • キャリア層:転職の際、給与条件以上に「自分の職種・専門性が活かせるか」を重視する。
  • 従業員:25〜34歳の社員が「転職をしない」と決める最大の理由は、給与への納得感ではなく「仕事へのやりがい」である。

これらを総合すると、今の時代に人を惹きつけるのは、「この会社は社会にとって何者なのか(パーパス)」というストーリーです。 単に「有名な会社」であることよりも、「働く理由」を明確に示せる会社が選ばれる時代になっています。

第2章:成功の鍵は「順番」。外に発信する前に、まずは内側に火をつける

では、どうすれば「働く理由」が伝わる企業になれるのか。 ここで陥りがちな失敗が、「とりあえず良い感じのキャッチコピーと映像を作ろう」と制作会社に丸投げしてしまうことです。しかし、社内の実態が伴っていない「外向けだけのきれいな言葉」は、社員から見れば違和感でしかありません。

結果、社員がシラケてしまい、離職やモチベーション低下を招く。これでは本末転倒です。

重要なのは「順番」にあります。揚羽が提唱する「バタフライモデル®」は、この失敗を防ぐためのメソッドです。考え方はシンプルで、「インナー(社内)で固めた熱量を、アウター(社外)へ広げる」、この順番を守ることです。

 

失敗しない企業広告の進め方4ステップ

失敗しないための手順は、大きく4つのステップに分かれます。

STEP 1:調査(現状を知る)

まずは現状把握です。経営者が「こうありたい」と語る理想と、現場の社員が感じている現実にズレがないかを確認します。経営層へのインタビューだけでなく、現場社員へのアンケートやヒアリングを行い、その企業独自の「らしさ」の原石を探します。

STEP 2:定義(言葉と絵にする)

調査で見えた「企業の未来価値」を、誰もが理解できる言葉(パーパス・ビジョン)とデザインに落とし込みます。飾った言葉である必要はありません。社員が腹落ちし、自分の言葉として語れるかどうかが重要です。

STEP 3:社内浸透(自分ごとにする)

ここが広告を出す前に一番重要な部分です。作り上げた言葉を徹底的に社内へ浸透させます。例えば、ワークショップや対話の場を設けます。「会社のパーパス」を一方的に押し付けるのではなく、「自分の仕事」とどう関わっているかを考えてもらう。社員一人ひとりが納得感を持てて初めて、外に発信する準備が整います。

STEP 4:対外発信(外へ広げる)

社内の熱量が高まったタイミングで、初めてTVCMや新聞広告を展開します。中身が伴った広告は、社員にとっての「誇り」になります。「これ、うちの会社なんだ」と家族や友人に自身を持って見せられる。その熱量が、結果として求職者にも伝わっていくのです。

第3章:【支援事例】3,000人の社員と「言葉」を作った、三井金属の挑戦

このプロセスを実際に進めたのが、三井金属株式会社です。創業150年を迎え、従来の勝ち筋が通用しなくなる中、社員一人ひとりが自律的に判断し動くための新しい指針(パーパス)を求めていました。

三井金属鉱業株式会社様支援実績

事例詳細:三井金属株式会社(パーパス策定および浸透支援)

インナー施策:トップダウンで終わらせない、「自分ごと化」への工夫

策定したパーパスは「探索精神と多様な技術の融合で、地球を笑顔にする。」。同社が徹底したのは、これを経営陣だけで決めつけず、社員全員で考えるプロセスでした。

社長を含む国内外3,000名以上の全社員が参加する「マイパーパス」を作る研修を実施。 これは、「会社の目指す方向」と「自分のキャリア」を重ね合わせ、自分なりの言葉にする取り組みです。

結果、社員のパーパス認知度は96%に達し、共感度も大きく向上。「会社から言われた言葉」ではなく、「自分たちの言葉」として定着しました。

アウター施策:満を持してのCM展開、熱量を外に伝える

社内の熱量が十分に高まった段階で、初めてTVCM「未来ミュージアム」篇や新聞広告などの対外発信を行いました。

この順序で進めたことで、採用広報としての効果はもちろん、社員の家族からの信頼獲得にもつながりました。

インナー施策で培った「社員の熱量」が、広告を通じて社会へ伝わり、それがまた新たな人材を惹きつける。まさに理想的な循環が生まれました。

まとめ

「何のためにCMを打つのか?」

その答えは、採用のためであり、広報のためですが、本質的には「今いる社員が、自分の仕事を誇れるようにするため」でもあります。

採用難の時代だからこそ、焦って外にばかり目を向けるのではなく、まずは足元の「インナー」を見つめ直す。 社員が生き生きと「働く理由」を語れる組織を作れれば、結果として、求職者からも選ばれる強い企業になれるはずです。

揚羽では、単なる「広告制作」にとどまらず、その土台となる「目的設定」や、社員の「当事者意識」を最大化するためのプロジェクト設計からアウトプット制作まで、一気通貫でご支援可能です。

  • 「プロジェクトチームを立ち上げたいが、現場の理解が得られるか不安」
  • 「社員が能動的に参加できるワークショップやツールを提案してほしい」
  • 「インナー施策から対外発信まで、全体設計を相談したい」

創業以来、900社以上のブランディング支援をしてきた知見で、貴社にとって最適な「順序」と「施策」をご提案します。思考整理のパートナーとして、まずはお気軽にご相談ください。

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