周年事業=コストがかかるだけの、面倒なイベント」 「式典を開いて記念品を配ったら終わり。正直、やる意味はあるのだろうか?」

担当者として任命されたものの、心のどこかでそんな“冷めた思い”を抱いていませんか?もしそうなら、非常にもったいないことをしています。

周年事業は、単なる「過去のお祝い」ではありません。組織の課題を解決し、企業の未来を創るための「投資」に変える最大のチャンスだからです。

そして、その成果を分ける鍵は、企画や予算ではなく、最初の「目的設定」にあります。

本記事では、多くの企業が陥る「ただのお祝い」で終わってしまうパターンを分析し、なぜ目的設定が周年事業に不可欠なのかを紐解きます。そして、周年事業を「組織を変える力」にするためのアプローチにする方法を解説します。

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第1章:なぜ、多くの周年事業は「一過性のお祭り」で終わってしまうのか?

多くの予算と時間を投じたにもかかわらず、気づけば「やっただけ」で終わってしまう。イベント当日は「楽しかったね」と盛り上がっても、翌日には何事もなかったかのような日常に戻っている。

なぜ多くの企業でこのような現象が起きてしまうのでしょうか。その原因を紐解くと、共通した「失敗の構造」が明確に見えてきます。

ここでは、多くのプロジェクトが陥りがちな、4つの失敗パターンを見ていきましょう。

パターン1:思考停止型

最も多いのが、「50周年だから“何か”やらないといけない」という発想でスタートしてしまうケースです。

「とりあえず記念ロゴを作ろう」「競合も式典をやったから、うちも会場を押さえよう」。 このように他社事例や過去の慣例をなぞるだけで、肝心の「そもそも、何のためにやるのか?」という議論が置き去りにされてしまうのです。

目的が不在のままでは、判断軸が定まりません。 広報はWebサイト、総務は記念品、人事はイベント……と各部門がバラバラに動き出し、全社としての一貫性は失われます。結果、社員の手元には、脈絡のないメッセージと記念品だけが残ることになります。

パターン2:過去の自画自賛型

周年事業は、企業の歴史を振り返る重要な機会です。しかし、その視線が「過去」にばかり向いてしまうと、組織に深い溝を作りかねません。

特に注意したいのが、経営層やベテラン社員の「昔話」だけで構成されてしまうケースです。 苦難を乗り越えたストーリーは、当事者にとっては美談でも、その時代を知らない若手・中堅社員にとっては「遠い昔の他人の話」に過ぎません。

「一部の世代だけで盛り上がっている」「特定の個人の武勇伝」を一方的に聞かされても 若手社員は共感できません。むしろ、「過去の栄光に浸っている会社」というネガティブな印象を与え、組織との心理的な距離を生んでしまうきっかけにもなりかねません。

パターン3:イベント偏重型

「とにかく式典を成功させよう!」とイベントの成功自体がゴールになってしまい、 事務局が目の前のイベント運営に全精力を注ぎ込んでしまうパターンです。

会場の手配、招待状の発送、当日の演出……。数ヶ月にわたる準備の末、豪華な式典は無事に終了。「やりきった」と感動のフィナーレを迎えます。

しかし、本当の問題はそこからです。 イベントという「非日常」が終われば、翌日からは元の「日常」業務が待っています。その熱狂を日常業務にどうつなげるか、という「アフターフォローの設計」がなければ、高まった熱量は一瞬で冷めてしまいます。 組織の行動や意識には何の変化も生まれない、何も残らない結果となってしまうのです。

パターン4:担当者(事務局)孤立型

周年事業は全社的なプロジェクトであるはずが、実際は総務部や経営企画室など、一部の管理部門だけに任されてしまうケースです。

事務局が企画を練り上げ、トップダウンで現場に協力を求めても、現場からすればそれは「上から降ってきた追加業務」でしかありません。

「忙しいのに、また本社が何か言い出したぞ」。企画の初期段階から現場を巻き込めていないため、いくら立派なスローガンを掲げても、それは「やらされ仕事」として処理されてしまいます。結果、事務局メンバーが孤立し、疲弊していくだけという結末を迎えます。

第2章:視点を変える:周年事業は「未来への投資」

先ほど挙げた4つの失敗パターンの根本は、「目的の不在」から来る「社員の不在」に尽きます。経営陣だけで盛り上がったり、事務局だけで完結させてしまったりすることで、現場の社員は「自分には関係ない」と心を閉ざしてしまうのです。

だからこそ、視点を変える必要があります。周年事業を成功させるには、プロジェクトの主役を「経営陣や過去」から「未来と社員」へ移すことです。

周年事業を単なる儀礼的な行事で終わらせず、「未来への投資」に変えるための鍵は、インナーブランディングにあります。

なぜ今、「インナーブランディング」が重要なのか

経営環境が激しく変化し、人材の流動化が進み、働き方が多様化した現代において、社員の心が離れた組織に未来はありません。

社員は、「給与や待遇」だけでなく、「この会社で働く意味(パーパス)」や「会社の目指すビジョン」への共感も強く意識しています。

しかし、企業が漠然とした未来しか示せないと、優秀な社員はより明確なビジョンを提示する別の企業へと去ってしまいます。

だからこそ、周年という非日常の「節目」が必要なのです。 「私たちは何のために存在するのか」を全社員で問い直し、バラバラになりがちな個人のベクトルを再び合わせる。これができるのは、周年事業をおいて他にありません。

強固なインナーなくして、強いブランドは育たない

もちろん、顧客や取引先(アウター)への発信も重要です。しかし、順序を間違えてはいけません。強固なインナー(組織)なくして、強固なアウター(ブランド)は築けません。

社員自身が自社のビジョンにワクワクしていないのに、顧客にその価値を熱量を持って届けることは不可能です。 見栄えの良い広告やイベントで一時的に注目を集めても、その中身である「社員の意識」が伴っていなければ、ブランドはすぐにメッキが剥がれます。

まずは内側を固め、その熱量を外へ溢れさせる。 この順序を守ることこそが、周年事業を成功させる鉄則です

第3章:「投資」として見たときの、3つの具体的なリターン

周年事業を「ただのお祝い」ではなく、インナーブランディングへの「戦略的投資」として実行した時、企業にはどのようなリターン(成果)が期待できるのでしょうか。ここでは、経営に直結する3つの成果をご紹介します

リターン1:組織の「ベクトル」が揃う(理念浸透・パーパス共有)

多くの企業が「理念が浸透しない」という課題を抱えています。理念や行動指針を掲げても、それは日々の業務と乖離し、単なる「お題目」にとどまっているケースは少なくありません。

周年事業は、この理念を「自分たちのもの」として再認識する絶好の機会です。自社の歴史を振り返り、「創業者の想い」や「大切にしてきた価値観」を再確認し、それを「未来のビジョン」へとつなげる。

「自分たちの仕事は、会社の未来、ひいては社会の未来にこうつながっている」。社員一人ひとりがそう実感し、納得できたとき、組織のベクトルが揃い、大きな推進力が生まれます。

リターン2:社員の「エンゲージメント」が高まる(人材定着・当事者意識)

エンゲージメントは、会社から一方的に与えられるものではなく、「自ら関与すること」で醸成されるものです。

だからこそ、周年事業は「企画プロセス」から社員を巻き込むべきです。部署を超えたプロジェクトチームの発足、未来を語るワークショップ、周年ロゴの公募など、参加の入口を広げます。

「自分たちの意見が反映された」「自分たちで創った周年だ」。この「当事者意識」こそが、会社への愛着や貢献意欲を高め、結果として離職率の低下や生産性の向上といった数値成果につながります。

リターン3:未来への「変革」の起点となる(リブランディング・行動変容)

周年は、「過去の延長線」ではなく「未来への変革」を宣言するタイミングです。「周年を機に、私たちはこう変わる」という強い意思を、社内外に明確に示すことができます。

硬直化した人事制度の改革、新事業の発表、コーポレートスローガンの刷新など。 周年事業を「変革の契機」として活用することで、社内に漂う閉塞感を打破し、「今こそ変わるべきだ」という機運を組織全体に作ることができます。

第4章:では、何から始めるべきか?

周年事業の成功が「目的設定」にかかっていることが明確になった今、担当者がまず最初に取り組むべきことは何でしょうか。

それは、式典の開催日を決めたり、記念品の選定を始めたりすることではありません。

施策(How)の前に、目的(Why)を明確にする

先ほど失敗パターンでも触れた通り、施策(イベント、ロゴ、サイト)は目的を達成するための「手段」にすぎません。手段を先に考えてしまうと、必ず「ただのお祭り」で終わります。

まず最初に決めるべきは、事業の核となる「目的」です。

目的設定の3ステップ

目的設定を確実にするため、以下の3つのステップを行うことを推奨します。

ステップ1:経営課題の棚卸し

「理念が浸透していない」「部門間の壁が高い」「離職率が高い」など、自社が抱えるインナーとアウター両面の課題をすべてリストアップします。周年事業は、これらの課題解決のために利用されるべきです。

ステップ2:トップの意志(Will)の確認

周年事業の真のオーナーは経営トップです。社長が「この節目に会社をどうしたいのか」という本気の意思(Will)を深くヒアリングし、プロジェクトの熱量を担保します。

ステップ3:目的(Why)の言語化

課題と意思を踏まえ、「今回の周年事業を通じて、社員にどうなってもらい、会社をどう変えるのか」というゴールを、具体的な言葉で言語化します。これにより、全ての施策に一貫した判断軸が生まれます。

この「目的」が定まって初めて、「では、そのためにはどんな手段(How)が必要か?」という次のステップに進むことができます。

まとめ:最高の”内定者フォロー”が、最高の”入社後エンゲージメント”を創る

周年事業は、数年(あるいは十数年)に一度しか訪れない、組織変革のチャンスです。目的を明確に設定し、社員を主役とすることで、組織の未来を創るインナーブランディング投資です。

本記事では、その目的設定についてを重点的に説明いたしました。この先の事業の進め方は次の記事で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:周年事業とは?4つの目的と成功させるポイントを解説

揚羽では、周年事業の「目的設定」という最も重要なフェーズからご支援可能です。目的設定は、客観的な視点を持つファシリテーターが介在しなければ、社内の力学に引きずられ、本質的な議論ができないことが多々あります。

私たちはその専門家として、皆様の課題と意思を引き出し、最適な目的設定から施策の企画制作、その後の浸透活動まで一気通貫での支援が可能です。

周年事業を実施したい、周年を機にリブランディングなどを検討している企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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