インナーブランディングを推進する際のポイント
本連載「インナーブランディング虎の巻」は、インナーブランディングの重要性に始まり、効果的な施策、そして当社が支援した企業のインナーブランディングプロジェクトの事例について解説してきました。
最終回となる今回は総まとめとして、インナーブランディング推進や施策を講じる際のポイントを、改めて解説します。インナーブランディング施策で悩んだときにおさらいができる、まさに「虎の巻」の内容です。ぜひ参考にしてください。
インナーブランディングの入り口は「課題設定」
インナーブランディングの実践において重要なのは、「解決すべき課題」を明確に設定することです。その際、課題設定の軸となるのが、企業理念の定義です。現在掲げている理念が明確で分かりやすい表現になっているかを確認し、従業員の「認知・理解・共感・行動」といった浸透度合いを把握した上で、課題解決に向けた浸透施策を検討します。この前提がずれてしまうと、施策は有効に機能しません。
まずは図1を参考に、自社従業員の理念浸透度フェーズがどの段階にあるかを見極めてください。その上で、インナーブランディングにおける論点を設定しましょう。

図1:従業員の理解浸透度フェーズごとの論点
フェーズに合わせた施策を検討
インナーブランディングの施策は、大きく2つに分類されると考えています。日々機能する「ファンクショナルな施策」と、従業員の記憶と心に訴えかける「エモーショナルな施策」です。それぞれの施策に長所・短所があり、自社の理念浸透度フェーズごとに効果の度合いも異なります。この点については、図2を参考にして、どの施策が自社に適しているかを検討してみてください。

図2:理解浸透度フェーズごとの施策の効果度合い
映像による理念浸透と行動変容
多くの企業で、理念に基づいた行動を従業員に推奨しています。そうした中で、具体的な好事例を全従業員に共有することは、従業員の行動変容につながる効果が見込めます。好事例を共有する方法として、直感的な訴求力を持つ映像を用いることは、有効な打ち手の1つとなります。
映像で紹介する際の重要なポイントは、単に事例を紹介するだけではなく、実際に事例に携わった従業員や、関わった人たちの姿をエモーショナルに表現すること。自社理念へのより深い理解促進が期待できます。
全従業員をパーパス策定に巻き込む
自社が何のために存在するのか、顧客や社会に対してどのような価値を提供するのかを示す「パーパス」。あらゆるステークホルダーから共感・賛同を得られなければ、言葉だけが独り歩きしてしまい、真価が発揮されない恐れがあります。
新たにパーパスを策定する際、全従業員を巻き込みながら進めることができれば、より共感・賛同を得る言葉となります。重要な点は、パーパス策定を全従業員が「自分ごと」として捉えることです。
策定のプロセスをWeb社内報やイントラネットでリアルタイムに発信する。あるいは、パーパスの最終案を絞る際に全従業員に対してアンケートを行い、自分が策定メンバーの一員であることを認識させる。このような取り組みを実施することで、従業員一人ひとりの共感値が高いパーパスとなり、求心力が増します。
周年事業でより強固な組織に
企業の創立や創業から10年、20年といった大きな節目に、周年事業を企画・実施するケースが多く見られます。この機会を活用すれば、従業員エンゲージメントの向上や組織の一体感醸成、さらには企業のブランド価値向上といった、未来の成長につながる多くの効果が期待できます。
周年事業を実施する上でのポイントは3つあります。
1つ目は「経営課題と連動した目的を立てる」こと。目的が明確でないと、周年事業の意義を見失い、成果が得られない恐れがあります。まず経営課題を踏まえ、周年事業を通じて社内外に何を伝えるのかという基盤を整備することが、具体的な施策を検討する上でも大切です。
2つ目は「全従業員を当事者として巻き込む」こと。パーパス策定同様、経営陣や事務局などの一部のメンバーだけではなく、全ての従業員に当事者として参画してもらうことで、周年への期待感や事業成功への一体感が醸成されます。
3つ目は「未来の成長につながる活動として設計する」こと。周年事業を実施するだけではなく、企業の根底にある課題解決や目的達成のための手段としてどう活用するかを、考える必要があります。
リブランディングのポイント
長年にわたり広く支持されてきたブランドがある場合も、社会や市場、社内の変化などを踏まえてリブランディングを実施することで、新たなイメージを生み出すことができます。前述した周年は企業の転換期でもあり、これまでの歴史を振り返りつつ、未来に向けての姿勢を訴求できるとき。つまり、リブランディングに取り組む絶好のタイミングの1つです。
リブランディングを進める上で重要な点は、「企業としての方向性を示す」「自社に関わる全ての人を引き付ける」ことです。ブランドの力は、企業の経営判断や意思決定などに影響を与えます。企業としての方向性をきちんと示し、全社的に思考・行動の基準をすり合わせることで、社内コミュニケーションの活性化や、物事の実行スピードの向上につながります。
企業として世の中に発するメッセージと、実際の企業活動や従業員の行動に一貫性を持たせることができれば、社会や顧客からの信頼獲得にもつながります。
リブランディングを実施する際に根幹となるのは、ブランドの理念体系であり、関係者全てで共有する「ブランドプラットフォーム」です。これは、企業活動を通じて実現を目指す世界像や、価値観・信条・行動原則などを言語化し、構成要素を体系的にまとめたものを指します。
リブランディングによって自社ならではのブランドを構築するには、ブランドプラットフォームの確立は必須です。企業ごとに形は異なりますが、ブランドプラットフォームを構築する上で重要なポイントが5つあります。
- 他社とは異なる「自社の強み」を明確にする
- 「自社の進むべき道」を指し示して、迷ったときの判断基準になるものにする
- 顧客が他社ではなく、「自社を選ぶ理由」となっている
- 「従業員が働く理由」になっている
- 「世の中の思いと共振」している
最後に
「インナーブランディング虎の巻」では12回にわたり、インナーブランディングに関するノウハウを紹介してきました。インナーブランディングを通じて、従業員が「誰もが自分たちのストーリーを誇れる世界」を思い描きながら働ける企業が増えることを、願っています。
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※本記事は、月刊会員情報誌「コミュニケーション シード」2026年2月号に掲載されたコンテンツの転載です。 ■月刊会員情報誌「コミュニケーション シード」について |









