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従業員エンゲージメントって、つまり一言でいうと何なの?

従業員エンゲージメントは「あらゆる問題に効く、魔法の指標」

「従業員エンゲージメントって、結局何なの?」。よくお客様からいただく質問です。近年、このキーワードは世界中で注目されています。業績・生産性・顧客評価・欠勤率・転職率・事故発生率・品質の欠陥率など、「あらゆる問題に効く、魔法のような指標」と言われているためです。
エンゲージメント(Engagement)は、約束や誓約といった意味の英語ですが、マーケティングの分野では企業やブランド・商品と消費者のつながり、接触の深さを示すキーワードとして使われています。一方、従業員エンゲージメントは、明確に定義されているわけではありませんが、組織開発で用いられるキーワードとして、日本経済新聞では「仕事への熱意度」と訳されていました。東洋経済オンラインでは「社員が自分の仕事に対する誇りと情熱を持ち、主体的に仕事で期待以上の成果を出そうと頑張る気持ち」と訳されています。
このように媒体や人によって表現の幅は広いのですが、私は従業員エンゲージメントを「従業員の組織に必要とされている感覚」と定義しています。

組織、従業員、顧客の3つのステークホルダーから従業員エンゲージメントを考える

従業員エンゲージメントの概念を、図①の通り、組織、従業員、顧客という3つのステークホルダーの関係性から考えてみたいと思います。経営は、非常にシンプルに考えると「組織」が求める行動を「従業員」にとってもらい、その対価として「顧客」から適切な利益を得ることにあります。
この図だけを見れば、組織は「理念・戦略を従業員にしっかり伝えさえすればよい」となりますが、実際はそれほど簡単ではありません。なぜなら経営は、従業員同士の関係で成り立っており、従業員一人ひとりは「感情」を持っているからです。単純に、組織が理念・戦略等を従業員に伝えても、従業員は理想的な行動をとってくれるとはかぎりません。
ここで重要なのは「相手の感情を考慮すること」にあります。組織が相手の感情を考慮せずに指示・命令を出し続け、従業員が「押し付けられた」と感じてしまう状態が続けば、従業員は創造的な主体性を徐々に失ってしまい、最終的には「自分である必要がない」ということに気が付きます。それが低い生産性・度重なる欠勤・転職などにつながってしまうこともあります。

従業員エンゲージメント向上に重要なのは「私は必要とされている」感覚

従業員エンゲージメントを向上させる方法について考えてみます。たとえば、図②。単純に従業員の要望に合わせて組織が手を打ち続けたとします。そうすると、従業員の満足度は向上しますが、従業員が顧客に理想的な行動をとってくれるとはかぎりません。

一方、図③。従業員を鼓舞し続けるとどうでしょうか。やる気は120%になるかもしれませんが、これまた理想的な行動をとってくれるとはかぎりません。ときにそのやる気が間違った方向に行ってしまい、生産性を下げるようなことも起こってしまいます。

大切なのは、組織は従業員にとってほしい理想の行動を、「理念」や「戦略」といった括りで定義し、それを実現するために「あなたが必要である」と伝えること(図④)。そして、従業員に「私は必要とされている」感覚を持ってもらうことです。

これがしっかり実現できていれば、利益・顧客評価・生産性が向上し、欠勤・転職・事故発生・品質欠陥を下げることができます。もし、それでもそれらの数値が期待通りにならない場合は、「理念」や「戦略」として定義した概念が、そもそも間違えているか、自分とは無関係のことと従業員に認識されてしまっているのです。

成功事例に学ぶ、従業員エンゲージメント向上の施策

従業員エンゲージメントの向上、つまり従業員に「あなたが必要である」とメッセージを発信して成功している企業の事例を見てみましょう。
意識の高い従業員がいる企業といえば、大手コーヒーチェーン、スターバックスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。アルバイトを含む従業員を「パートナー」と呼び、同社の理念に共感してもらうよう呼びかけて、自発的に組織や顧客の期待に応えることを推進しています。そのため接客マニュアルが存在しないことも有名です。
スターバックスの理念を実現するためには、組織と対等な立場であるパートナー=「あなたが必要である」と発信することが、従業員エンゲージメントの向上に大きく貢献していると推察できます。
フリマアプリ「メルカリ」のサービスを運営するメルカリでは、ユニークな施策を打ち出しています。急拡大する組織の従業員エンゲージメントを高める目的として、2017年にピアボーナス制度mertip (メルチップ)を導入しました。mertipは従業員同士でリアルタイムに感謝、賞賛し合うと同時に、インセンティブとして一定額の金額を贈り合える仕組みで、Web上などから気軽に利用できるのが特徴です。
mertip導入1カ月の効果は上々で、社内のアンケート調査では満足度が約87%、mertipの消化率も期待以上の数値となったことが発表されています。このようにメルカリは評価を「見える化」することで、「あなたが必要である」というメッセージをわかりやすく伝えていることがわかります。

従業員の自社への評価を測る。従業員エンゲージメントの計測方法

従業員に「あなたが必要である」というメッセージを継続的に送るには、現状の評価を正確に測ることが大切です。従業員エンゲージメントの高低を確認しながら、評価の改善を続けていくための計測方法を紹介します。
まず考えられるのは、自社内でのアンケートの実施です。アンケートによって定期的に従業員の意欲を把握し問題点を抽出することで、人事施策のPDCA(計画・実行・評価・改善)を実行するのに役立ちます。ただし、有効な回答を得るための質問内容や実施頻度については試行錯誤が必要になるでしょう。
専門の診断サービスを導入する企業も増えています。多くのサービスはクラウド上で自動的にアンケート結果の回収・集計が可能なため、精度の高い測定結果を手軽に入手することができます。以下に代表的なサービス、診断に用いられる指標を紹介します。
リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」
https://www.motivation-cloud.com/
5950社、142万人のデータベースをもとに組織状態を診断し、組織改善に活用できるクラウド型サービス。リンクアンドモチベーションが独自に開発したサーベイに回答することで、従業員の意欲や熱意を可視化・数値化します。
アトラエ「wevox」
https://wevox.io/
2017年のリリース以降、1280以上の様々な業界・業種が導入している診断サービス。学術的根拠のあるサーベイを用いて組織の状態を可視化し、エンゲージメントにおける改善点や影響のある因子を特定します。
ギャラップ「Q12(キュー・トゥエルブ)」
https://www.gallup.com/
アメリカの大手調査会社ギャラップが提供している12の指標。30年以上にわたり従業員に対する調査を実施してきた膨大なデータと経験に基づき、従業員とチームのパフォーマンスを測定します。
ベイ・アンド・カンパニー「eNPS」
https://www.bain.com/
アメリカの大手コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが提唱した、従業員のロイヤルティを可視化する指標です。従業員に対し自社への入社の推奨度合いを聞くことで、満足度や働きがいの実感度などを可視化します。

従業員エンゲージメント向上に欠かせないポイントをまとめると?

従業員エンゲージメントを向上させるポイントは、「伝え方」であろうと私たちは考えています。組織は従業員を尊重して「あなたが必要である」という伝え方で従業員にとってほしい行動を伝えることが重要です。
たとえば、テレワークの制度を導入したとします。そのとき単純に「働き方改革への対応で、テレワーク制度を導入しました」とだけ言うのではなく、「働くママさんがより仕事がしやすくなるように、テレワーク制度を導入しました。会社としても今後の商品開発に向けては女性の柔軟な発想が必要で、欠かせないと考えています」という風に伝えると、その制度の利用者に該当する従業員は「私のために会社が制度を導入してくれた。頑張ろう」と感じるのです。
つまり、従業員に「あなたがいなくてはならない」と感じさせることが重要なのです。そうすることで従業員は組織に愛着を感じるようになり、それが「納得感」・「やる気」・「創造的な主体性」・「法令順守の精神」等を生み出していき、最終的には「業績」の向上にもつながっていくのです。
最後に、エンゲージメントの本質とその向上策をまとめた資料がありますので、
ご興味ある方はこちらからダウンロードができます。

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WRITER

インナーブランディング研究室
室長

黒田天兵

ブランディングにおけるソリューション実績700社を超える (株)揚羽にて、コーポレートコミュニケーション事業の立ち上げから推進まで行っている責任者。携わったインナーブランディング実績はおよそ200社、財閥系大手企業から近年注目されている急成長ベンチャー企業まで幅広く担当し、理念浸透・意識改革などのプロジェクトに携わる。大学時代は哲学に没頭。ハイデガー、デカルト、カント、ニーチェを研究。