“社会インフラを支えるインフラ”という存在
株式会社タダノインフラソリューションズは、発電所や港湾、製鉄所、造船、建設現場などで使われる定置式クレーンや荷役機械を製造するメーカー。重いものを「吊り上げる」「運ぶ」「貯える」「捌(さば)く」という技術を通じて、私たちの暮らしをバックアップする、まさに“社会インフラを支えるインフラ”といえる存在です。
同社の強みは、100年以上にわたり培ってきた技術とノウハウを土台に、顧客ごとの課題に合わせてゼロから開発する“一品一様のものづくり”にあります。その製品は非常に大規模で、クレーン自体が昇降するジブクライミングクレーンは、高層建築物の建設には不可欠であり、日本を代表するランドマークと呼ばれる建築物で数多く採用された実績があります。また、製鉄所や発電所などで、鉄鉱石や石炭などを大容量かつ効率的に荷揚げする連続アンローダは、1時間あたり4000トン荷揚げする能力を誇ります。
近年では、従来の大型クレーンや荷役機械の製造にとどまらず、最先端の技術開発にも積極的に取り組んでいると、タダノインフラソリューションズの赤池直人氏は説明します。「自動運転技術やデジタルツイン、稼働データの見える化、さらには異音検知など、現場の安全性や作業効率を高めるソリューションの開発にも注力しており、伝統的な重厚長大産業でありながら、革新的な技術の導入にも余念がありません」(赤池氏)。

総務人事部
人事グループ 課長
赤池直人氏
同社は、長らくIHI運搬機械株式会社(現:株式会社IHIパーキングスクエア)の運搬システム事業として事業運営してきましたが、2025年7月に、グローバルに事業を拡大するタダノグループの一員となりました。これにより、移動式クレーンにおいて世界的な競争力を持つ株式会社タダノと、定置式クレーンや運搬機械に圧倒的な強みを持つ同社が連携。グループ全体としての対応領域が飛躍的に広がり、新たな成長フェーズへと突入しています。
「応募したい」という意欲につながる採用導線づくり
新たなスタートを切ったタダノインフラソリューションズですが、新会社設立という背景もあり、採用活動において大きな課題を抱えていました。設立当初、自社の採用サイトがなかったのです。学生向け就職情報サイトに募集情報や基本的な企業情報を掲載していたものの、同社を知った学生が、事業内容や仕事の魅力、社員の雰囲気、働く環境まで含めて企業研究を深めるには、情報が十分とは言えない状態だったのです。
「今の学生にとって、採用サイトは企業理解を深めるための重要な接点です。採用サイトが存在しない、あるいは情報量やデザイン面で競合企業と比較して見劣りしてしまうと、学生に安心感や期待感を持ってもらうことが非常に難しくなります。そこで、当社らしさや事業の魅力をしっかりと伝えられる、質の高い採用サイトを構築したいと考えました」と赤池氏は当時の思いを述べます。
新サイト構築にあたって、とりわけ重視したのは、何らかのきっかけで同社を知った学生の関心を途切れさせず、「応募したい」という気持ちにつなげることでした。「企業を知る」「事業を理解する」「仕事を知る」「社員や社風を知る」、そして「応募する」という学生の心理変化に合わせて情報を配置し、サイト内を自然に回遊できる採用導線をつくる必要があったのです。
同社に興味関心を持ってもらうという点では、「学生が抱くイメージとのギャップ」という課題もありました。まず、「タダノインフラソリューションズ」という社名だけでは、何をしている企業なのかが直感的にわかりづらい点です。「インフラ」という言葉からは鉄道や電力、ITなども想起されがちですが、実際には社会インフラの現場で使われる巨大なクレーンや運搬機械を製造しているため、正しい事業内容をイメージしてもらう工夫が必要でした。
加えて、同社の事業特性ゆえに仕事の魅力が伝わりにくい点として、次のような3つの障壁も存在していました。1つ目は、製品が社会インフラを支えている一方、学生が日常生活で直接目にする機会が少なく、事業の社会的意義やスケールを実感しにくいこと。2つ目は、製品そのものを理解できても、どんな業務や職種があり、自分の専門や経験をどのように活かせるのかが見えにくいこと。そして3つ目は、重工・建機系企業として「堅そう」「男性中心」「自分とは縁遠い」といった先入観を持たれやすいことです。
「デカイものづくり」で、学生の興味をつかむ
こうした課題に対して揚羽が提案したのは、タダノインフラソリューションズが持つ数多くの魅力の中でも、とりわけ特徴的な「巨大なものづくり」を前面に打ち出すことでした。提案段階から競合する企業の採用サイトを分析して、同社ならではの独自性をどうやって出すかを検討したと、揚羽の竹下真由は明かします。
「提案で意識したのは、競合他社と比べても遜色のないサイトにすることです。見た目の印象やビジュアル面はもちろん、新卒採用の対象となる機械・電気系の学生が、最初に興味を持つポイントをしっかり深掘りして、他にはないコンテンツを企画、立ち上げることを大切にしました」(竹下)。

ブランドマーケティング部
ブランドマーケティング3グループ リーダー
竹下真由
プロジェクトを進める中で見えてきたのは、同社の社員自身がランドマークをつくったクレーンを担当したことに矜持を持っていること。そうした魅力を、いかにして学生が興味を抱く入口へと翻訳するかに苦心したと、サイト制作のディレクションを担当した揚羽の田中敦子は振り返ります。
「タダノインフラソリューションズの皆さんは、巨大な製品を生み出す仕事に対して強い誇りを持っていました。その点を、どうすれば学生が興味を持つポイントとして前面に出していけるのか。そこに意識を集中させて、採用サイトのコンセプトやキービジュアル、コンテンツを検討していきました」(田中)。

制作第1部
ディレクター2グループ
田中敦子
そうした中で設けたのが、『デカイぞ!うちの製品!』というコンテンツです。単なる製品紹介ではなく、製品がどのような役割を果たしているのか、その強みは何なのかを分かりやすく整理。そのうえで、巨大な製品の大きさを学生がイメージしやすいよう、比喩的な表現や親しみやすいイラストも取り入れました。「シロナガスクジラ15頭分」「名古屋城3つ分」といった身近な対象との比較によって、専門知識がなくても大きなスケール感を理解できる工夫をしています。
「5秒の壁」を越えるため、情報の見せ方を工夫
採用サイト全体の情報設計では、学生が短時間で情報を取捨選択することを前提に、「5秒の壁」を意識したといいます。特に重要だったのがファーストビューです。キービジュアルや採用コピーによって「何をつくっている企業なのか」「どんなスケールの仕事なのか」を直感的に伝え、まずは興味を持ってもらうことを目指しました。
「今回は、『スケールの大きなものづくりに魅力を感じる、機械・電気系の学生』に狙いを定めました。学生は5秒以内に、その採用サイトが自分に必要かどうかを判断するといわれています。そこで、ファーストビューで興味を喚起し、読み進めてもらうことに重点を置いて制作を進めました」(赤池氏)。

一方で、情報を増やすだけでは、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する学生に十分に読んでもらえない可能性があります。そのため、情報をひと目で把握できる「Bento UI(弁当UI)」を採用。弁当箱の中に様々なおかずを詰めるように、複数のコンテンツを整理して配置することで、スクロールしなくてもサイト全体の情報を把握しやすくしました。
さらに、『3分でわかるタダノインフラソリューションズ』『事業について』『デカイぞ!うちの製品!』といった各コンテンツの役割を整理し、短時間で企業の概要を知りたい学生と、より深く企業研究をしたい学生の双方に対応できる構成にしています。サイトを訪れた学生が「認知」から「理解」「共感」「行動」へ進めるよう、情報量だけでなく、その配置や導線にもこだわったわけです。
約4カ月という短期間のプロジェクトを支えたのが、双方による密なコミュニケーションでした。タダノインフラソリューションズ側から積極的に意見やフィードバックが寄せられ、揚羽もそれを受け止めながら対案を提示。プロジェクトマネジメントを担当した揚羽の西牟田和子は、いつまでに何を決めるべきかを明確にし、同社の広報やシステム部門との調整も含めて進行を管理したと、当時の状況を語ります。
「タダノインフラソリューションズの皆さんが、とても自分の会社を好きだということが分かりましたし、揚羽のメンバーも企業『らしさ』やその良さを、きちんと伝えたいという強い思いがありました。そうした両者の思いが重なり合って、全員が熱い思いを持っていたからこそ、スムーズに制作を進められたのだと思います」(西牟田)。

制作第1部
プロジェクトマネジメント1グループ マネージャー
西牟田和子
コンテンツを通じて理解が深まり、新たな接点が生まれる
こうして制作された採用サイトは、2026年4月末にローンチ。公開後、同社が実感したのは、学生が想定以上にサイトの細かな情報まで読み込んでいることです。面接の場で、採用サイト内の座談会記事に掲載されている具体的なコメントに触れる学生が現れました。採用担当である赤池氏自身も、「そこまで見ているのかと、正直意外でした」と話します。
「座談会記事は、当社の社風や責任感の大きな仕事があることが少しでも伝われば、という思いで制作したものです。それが実際に、最終面接で学生自身の志望理由として語られたのには驚きました。私たちが想定していた以上に、サイトの細部まで読み込み、深く活用してくれた学生がいることに気づかされ、本当にうれしかったですね」(赤池氏)。
このエピソードは、採用サイトが単に企業情報を掲載する場所ではなく、学生が企業理解を深め、自分との接点を見つける場として機能していることの証左でしょう。これまで十分に開示できていなかった事業や仕事、社員の考え方まで詳しく伝えられるようになったことで、選考に参加する学生とのコミュニケーションに変化が生じているのです。
同社が期待する具体的な効果は、採用サイトへのアクセス数やエントリー数の増加だけではありません。会社説明会後の志望度向上、選考途中の離脱防止、内定承諾率の向上、さらには入社後のミスマッチ低減まで、採用プロセス全体への波及を見据えています。学生がサイトを通じて「思っていたより面白そう」「自分の専門性が活かせそう」「働く人の雰囲気が自分に合いそう」などと感じ、応募や選考継続につながることが、今回の取り組みで求めるべき成果なのです。

https://www.tadano-infra.com/ja/recruit
採用サイトを起点に、インフラを支える未来の仲間づくりへ
今回構築した採用サイトは、タダノインフラソリューションズにとって、企業としての採用広報を本格的に展開していくための土台でもあります。初回の商談から制作まで、限られた期間の中で同社の事業や採用課題を理解し、学生目線で情報設計を行ったことが、サイトの完成度を高めることにつながりました。
「採用サイトを制作する過程で、タダノインフラソリューションズさんならではの、深くてニッチな魅力を数多く見つけることができました。今後は、興味を持ってくださった方をしっかりつなぎ止められる採用支援や、その魅力をもっと伝えていく接点や手法についても提案していきたいです」と竹下は笑顔で話します。
今後、同社では採用サイトを起点に、これまで接点を持ちにくかった学生との出会いを増やしていく考えです。特に、スケールの大きいものづくりに魅力を感じる学生、社会インフラを支える仕事に意義を感じる学生、自分の専門性を実際の製品や現場で活かしたい学生との接点拡大を目指しています。また、技術系学校への訪問など、リアルな接点を増やしながら、学生や内定者の声を収集し、次の採用課題を見つけていくことも今後のテーマとなるでしょう。
「デカイものづくり」という分かりやすい入口から、社会インフラを支える仕事の意義、専門性を活かせる職種、そこで働く人の姿までを伝える採用サイト。タダノインフラソリューションズは今回整備した採用広報の土台を活用しながら、まだ同社を知らない学生との新たな接点を広げていきます。揚羽も、今回のプロジェクトで見つけた同社ならではの魅力を、様々な採用コミュニケーションへと展開し、継続して伴走する構えです。




