「人的資本経営」を軸に採用強化へ舵を切る
株式会社JALUXはJALグループの一員として、空港周辺の不動産・保険事業から始まり、航空機部品の調達、さらには農水産物やワインの輸入販売など、航空運送に付随する広範な領域へと業容を拡大。現在は、航空需要の変動に左右されにくい収益基盤の構築を目指し、食品やライフサービスといった非航空領域の強化にも注力しています。
同社は、企業理念に「幸せづくりのパートナー」を掲げ、社員一人ひとりが新たな領域に挑戦し、自らを進化させていく「Challenge & Change」に満ちた企業文化の実践を目指してきました。昨今では、グループ全体で「人的資本経営」を経営方針として掲げ、社員の採用から育成までをトータルに進めることで、企業価値の向上を図ろうとしています。
業績面では、直近の2年連続で過去最高益を更新するなど、コロナ禍を乗り越えて急拡大しており、人財獲得の必要性が一気に高まりました。JALUXの田中えり氏は、その背景を次のように説明します。「業績を大きく伸ばす一方で、社員の数はさほど増えていなかったため、一人ひとりの業務負荷が増加していました。持続可能な成長のためには、『働きがい』と『働きやすさ』の両輪を高めることが不可欠であり、経営において優先すべきミッションとなったのです」。

経営企画本部
人事部
採用・育成課長
田中えり氏
2026年度からの中期経営計画でも、人財戦略を経営戦略の真ん中に据えることが決まっています。年間40~50名規模、将来的にはキャリア採用だけでも年間40~50名を目標とする採用強化が急務となる中で、JALUXは「選ばれる会社」になるための採用ブランディングに舵を切りました。
社員同士のリアルな対話で「社内の雰囲気」を可視化
その採用強化の施策として選択したのが、動画コンテンツの制作です。ただ、当初は「求職者にJALUXの魅力を伝える動画をつくる」という方針以外は、具体策が白紙の状態でした。しかし、新卒やキャリア入社した社員へのヒアリングを重ねる中で明らかになったのは、求職者が本当に求めているものが、社員同士のコミュニケーションからにじみ出る「社内の雰囲気」といった、数字では測れない定性的な情報だという点です。
そこで同社が着目したのは、揚羽が制作を手掛けた社員同士が語り合う座談会映像でした。JALUXの金澤章太郎氏は、次のように当時を振り返ります。「座談会映像を見ると、社員同士が非常に生き生きとしていて、横のコミュニケーションから良好な関係性が伝わってきました。何より仕事に誇りを感じながら挑戦する姿勢が、声色からも伺えたのです。まさに『作りたいのはこれだ』と確信しました」(金澤氏)。

経営企画本部
人事部
採用・育成課
主任
金澤章太郎氏
動画制作の提案においては、人の魅力を見せることを意識したと揚羽の船戸拓視は話します。「まさに『人の魅力を出したい』という要望に対し、私たちが元々採用映像の制作プロダクションからスタートしているという強みがマッチしたと思います。その上で、企業が抱える課題を掛け合わせた時に、どのような映像が魅力を余すことなく伝えられるかを考え、座談会映像を具体化していきました」(船戸)。

ブランドマーケティング部
船戸拓視
制作に当たり目指したのは、台本通りの映像ではなく、社員同士が自然体で語り合う臨場感のある座談会映像です。多様な事業を展開する同社ですが、あえて事業紹介には深入りせず、複数の人が対話することで生まれる「多面的な立体感」に期待し、人にフォーカスするという一点に絞り込む決断を下しました。
座談会出演者の選定においては、企業文化の「Challenge & Change」を体現しているかどうかを重視。課長職と中堅社員という2つの層に分け、それぞれの異なる視点から語ってもらう構成にしています。「課長職には会社のビジョンや今後の方向性を語ってもらい、入社5~10年程度の中堅社員には、自分の成長度合いと今後の可能性について、リアリティあふれる話をしてもらうことにしました」と金澤氏は振り返ります。
出演候補者に対して、一人ひとりに理由を説明
具体的な出演者の選定は、極めて重要なプロセスでした。課長職の5名については、会社のビジョンや今後の方向性を語る役割として、海外駐在やグループ会社への出向経験、育児をしながら第一線で活躍する社員など、多角的な視点からエピソードが引き出せるように選出しています。
一方、中堅社員の4名については、若手社員が将来の自分を重ね合わせ、「この人のようになりたい」と憧れを抱くようなロールモデルであることを重視しました。一定の社歴を経て重要なプロジェクトを任され、困難な状況下でも自ら「Challenge & Change」を体現し続けている情熱的なメンバーを選定しています。
選定した候補者一人ひとりに対して金澤氏は、動画制作の意図とともに「なぜ、あなたに任せたいのか」という理由を説明して回りました。当初は「恥ずかしい」などと難色を示す社員もいましたが、こうした地道で、きめ細かな事前の対話によって、出演者から熱意ある協力を引き出せたのです。
撮影フェーズでは、本番前に出演者へアンケートを行い、その内容に基づいて事前の打ち合わせを丁寧に行いました。田中氏は当社のプロジェクト進行をこう評価します。「揚羽さんは、出演者が話したいと考えていることのフォローや、私たちの細かな要望も取り込む形で、全体の流れをうまくリードしてくれました。さらに撮影後の編集も非常に迅速で、内容も的確にまとめてもらえたと感じます」(田中氏)。
撮影の技術面でも、独自の工夫を凝らしたと揚羽の松尾果歩は明かします。「通常の座談会で多い『横並び』の配置は、カメラやスタッフが視界に入りやすく、出演者が緊張しがちです。今回は出演者同士が向かい合う形を採用し、カメラを『ハの字型』に配置したレール上で常に動かすことで、自然な表情を逃さず捉える手法を選択しました。これにより、日常の会話そのものを切り取ったような、熱量のある議論を映像に収められたのではないでしょうか」(松尾)。

制作第1部
映像グループ
映像ディレクター
松尾果歩
「Challenge & Change」を共通項にして変革の姿勢を示す
JALUXの事業は、航空関連からライフサービス、リテール、フーズ・ビバレッジまで多岐にわたります。今回の動画制作において、この「事業の多様さ」をどう表現するかは1つの大きな論点でしたが、事業や社員の多様さこそがJALUXのよさだと考え、あえて無理な統一感は持たせませんでした。
「様々な事業があることは、求職者からすれば『自分が実現したいことができるのか』という不安にもなり得ます。それをプラスに転じさせるためにも、どの部署にいても前向きに活躍している社員を描きたかったのです。『Challenge & Change』を共通点として、部署を問わず社員が変革を志す姿勢を見せることで、JALUXらしさを表現しました」と金澤氏は力を込めます。
2025年11月に公開された動画「JALUX 課長職座談会」と「JALUX 中堅社員座談会」の反響は、想定を上回るものでした。新卒・キャリア採用ともに「動画を見た」という求職者が続出したといいます。特にキャリア採用では、「社員のチャレンジする姿勢に共感した」という声が数多く聞かれるなど、志望度向上に大きく寄与しました。
また、JALUXの社内においても高く評価されています。公開翌日には多くの社員が視聴しており、その後、取締役会でも上映されるなど、若手から経営陣まで幅広く注目を集めました。中堅社員からは、普段関わりの少ない部署の社員の仕事観を知る機会となり、組織横断的な理解の促進、いわゆる“横串”のコミュニケーション活性化にもつながりました。
これからも「人に惹かれて入社」を加速させる
今後の採用活動における展望について、田中氏はその意気込みを語ります。「JALUXには『人に惹かれて入社した』という社員が数多くいます。だからこそ、人が動いている姿、複数人で生み出す良い雰囲気を発信し続けることが、ブランディングにおいて極めて重要なのです」(田中氏)。
今回の取り組みを通じて、動画コンテンツが採用はもちろん、組織全体にポジティブな影響を与えることが明らかになりました。JALUXではこれからも、グループ企業や海外駐在、女性活躍など多様なテーマで動画制作を継続していく考えです。企業の魅力を伝える手段が多様化する中で、リアルな対話を通じた“飾らない個の魅力”を伝えるコンテンツの重要性は今後さらに高まっていくでしょう。




