長期経営計画「VISION2029」に向けて採用を強化

2006年に設立された株式会社ポーラ・オルビスホールディングスは、化粧品大手ポーラ・オルビスグループの持株会社です。同グループは2029年に創業100年を迎えることから、2029年度に向けた長期ビジョン「VISION2029」を策定。「多様化する『美』の価値観に応える個性的な事業の集合体」を目指しています。

その中で、グローバル展開の飛躍と新規事業の成長を実現し、化粧品領域での価値提供に加え、Well-being(ウェルビーイング)や社会課題へと事業を拡張していく考えです。グローバルでは重点地域である中国、ASEAN(東南アジア諸国連合)でのプレゼンス拡大を目指したブランド展開、新規事業では暑熱対策として顔の変化からAI(人工知能)カメラでリスクを判定する「カオカラ」やデザイン性、履き心地、医療用レベルの機能性の3つを兼ね備えた着圧ソックス「MAEÉ」など、新たなサービスや商品を展開しています。

このように、同社ではVISION2029に向けて変革をリードし、その先の更なる成長を担う新たな人材が必要となり、今まで実施していなかった新卒採用を開始し、キャリア採用と障がい者採用もより強化することにしました。

今まで、求職者に対する情報提供が不十分だったと、新卒採用、キャリア採用、障がい者採用の3サイトを統括したポーラ・オルビスホールディングスの井澤由利香氏は明かします。「求職者は、当社に対して理解が薄いままで応募して来ざるをえないため、お互いに適切な判断がしづらい状況でした。今回、新卒・キャリア・障がい者の採用サイトを同時に公開したことで、結果的に採用区分に関わらず多くの情報提供につながりました。これにより、例えば障がい者採用においても、採用者数の増加および法定雇用率の達成など、着実に成果が表れています」(井澤氏)。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
HR室
井澤由利香氏

2024年度から開始した新卒採用は、経営を加速させる人材の獲得を目指していると、ポーラ・オルビスホールディングスの石部真士氏は話します。「これまでポーラ・オルビスホールディングとして、新卒採用を実施していませんでしたが、2024年度から本格的に採用を開始し、将来の経営幹部として可能性を持つ学生を採用し、その育成に取り組んでいます。採用サイトの整備を通じて、当社の考えや働く環境をより明確に発信できるようになり、化粧品会社のイメージを突き破る経営を意識した人材の募集につながっています」(石部氏)。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
HR室
新卒採用担当
石部真士氏

新卒採用を開始したばかりの頃は、新卒採用していることの認知度が低いことが大きな課題だったといいます。そもそも提供している情報量が十分ではなく、外部媒体で説明会の開催情報を告知していても、説明会を終了するとそのページも閉じてしまって、学生向けの情報がほとんどないという状況でした。

採用情報を積極的に発信できていないため、エントリーまでたどり着かない学生が少なくなかったと、ポーラ・オルビスホールディングスの松本晃子氏は振り返ります。「他の企業では日本語だけでなく、外国語でも展開するほど豊富な情報量の採用サイトもありました。学生にとって今後長く勤める会社なのに、新卒向けの採用情報が少ないと、応募するかどうかの判断材料が少なく、二の足を踏む方が多かったのかもしれません」(松本氏)。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
HR室
新卒採用担当
松本晃子氏

「新卒」「キャリア」「障がい者」、どの採用でも情報発信不足が課題に

同社はこれまでも、キャリア採用を実施してきましたが、求人票程度の情報しか掲載しておらず、企業のカルチャーや従業員の働く姿が応募者にほとんど伝わっていませんでした。また、障がい者採用においては、求職者に対して働き方や働く環境について理解を深めてもらうことが重要だと、ポーラ・オルビスホールディングスの橋村匡哉氏は語ります。「企業として、障がい者雇用に対する姿勢や方針、取り組みが見えづらいままだと、応募をためらうだけでなく、内定を受けるかどうかの判断にも迷いが生じてしまうのではないかと思っています」(橋村氏)。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
HR室
障がい者採用担当
橋村匡哉氏

このように、すべての採用種別で情報が不足しているという状況を打開するため、ポーラ・オルビスホールディングスは、2024年10月、揚羽をパートナーに選定し、新卒採用、キャリア採用、障がい者採用に関するWebサイトの制作を開始しました。

サイト構築の議論は、採用サイトの一本化から話しが始まったと、揚羽の下田絵梨花は語ります。「ただ、実際に話を聞いてみると、新卒とキャリア、障がい者とそれぞれでメッセージが異なることがわかりました。そのため、各サイトを別立てで制作することを提案し、3つのサイトを作ることになったのです」(下田)。

株式会社揚羽
ブランドマーケティング部
企画サポグループ
マネージャー
下田絵梨花

プロジェクト開始当初、苦労したのは「新卒サイト」「キャリアサイト」「障がい者サイト」それぞれのコンセプトを決める点です。ポーラ・オルビスホールディングスと揚羽のメンバーは議論を重ねることで、コンセプトを策定し、キャッチコピーなども練り上げていきました。

同社が、自らの世界観や言葉を大切にする企業であることがよく分かったと、揚羽の鷲津実保は話します。「私たちがコピーを提案すると、『やや違和感がある』『ずれていないだろうか』と迷われることがありました。その感覚や考えをくみ取るのに、少し時間もかかりましたが、しっかりと議論したおかげで、世界観をきちんと体現した採用サイトにできたと思います」(鷲津)。

株式会社揚羽
制作第1部
ディレクター2グループ
鷲津実保

企業“らしさ”と、目指すべき将来を融合したデザイン

新卒採用は、経営人材を目指す学生の採用が大きな目標でした。ポーラ・オルビスホールディングスというと事業内容から、柔らかく、皆を包み込むような包容力のある人材を求めているとイメージされるかもしれません。しかし、新卒採用ではそうした企業カルチャーをベースにしながらも、尖って突き抜けていくような意欲を持った学生に応募してほしいという想いもありました。

「採用サイトのコピーやデザインを考えるにあたって、揚羽の皆さんとも何度もやりとりしました。最初は、キャッチコピーが違うと感じても、その違和感を言葉にしてなかなかうまく伝えられませんでした。けれども、やり取りや議論する過程を通じて、私たち“らしさ”や、大事にすべきことを整理でき、とても貴重な経験になりました」(井澤氏)。

従業員の働き方を伝える座談会コンテンツを、採用サイトに載せようと提案してもらったとポーラ・オルビスホールディングスの方舒氏は話します。「揚羽さんからいただいた提案を基に、具体化するにあたって正直難しい部分もありました。ただ、自分としても様々な気づきを得られたと感じていますし、1つのテーマを複数の従業員がディスカッションすることで、企業としての魅力をダイレクトに伝えられ、インパクトのあるコンテンツになったのではないでしょうか」(方氏)。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
HR室
キャリア採用担当
方舒氏

同社が目指す新しい世界をメージしながら、デザインにあたったと揚羽の近藤海空は力を込めます。「取り組み始めた当初は、従来のポーラ・オルビス“らしさ”を出していくのか、これから目指す方向性を、新たに打ち出していくのかで逡巡しました。ですが、やり取りしているうちに、企業“らしさ”を核にしつつ、次に目指す方向を形づくっていくことが必要だと考えるようになりました。最終的には、それぞれの求職者に合わせたメッセージとデザインが融合された採用サイトになったと思います」(近藤)

株式会社揚羽
制作第2部
デザイナー2グループ
近藤海空

狙い通りに応募者は増加、サイトの一層の浸透と定着を図る

2025年3月末、新卒採用、キャリア採用、障がい者採用の3つのサイトが公開され、運用が始まりました。新卒採用サイトには数千人がアクセスし、その内の約4割が説明会の予約にまで進んだといいます。「予約してくださった学生の数が、前年度の倍くらいになったので、応募者数は確実に増えました。数が大幅に増加しただけでなく、採用サイトを見て事前に情報を得られたため、説明会での理解がより深まったという声を、参加者から聞くことができました」(松本氏)。

新卒採用サイト:https://www.recruit.po-holdings.co.jp/students

キャリア採用サイト:https://www.recruit.po-holdings.co.jp/career

障がい者採用サイト:https://www.recruit.po-holdings.co.jp/pwda

一方、キャリア採用サイトの狙いは応募数増よりも、企業に対する理解を深めてもらうことが目的でした。「応募者には面接前に採用サイトを見てくださいと案内しており、従来よりも企業理解が深まっている印象です。特に従業員インタビューは一番見られており、どんな人と働くのかイメージが湧いたという声をいただくので、発信した情報がきちんと伝わっているのだと実感しています」(井澤氏)。

また、障がい者採用サイトも応募者数は増加傾向です。「サイト内の応募情報だけでなく、障がい者雇用に対する考え方のところまで、よく見てくれている人が多いですね。サイト制作時の狙い通りの結果になっていて、担当者としても喜びを感じています」(橋村氏)。

ポーラ・オルビスホールディングスではサイト構築にあたって、ノーコードWebプラットフォーム「Studio」を採用しました。技術に長けたエンジニアなどでなくても、自分たちでページの更新、修正を実施できるツールを探した結果、今回導入を決定しています。今後募集要項やニュースの追加など簡単な修正は、同社自身で実施する方針です。

同社は、今後も3つの採用サイトを活用し、認知度向上を図るとともに、企業ブランディングなども含めて、積極的に役立てていく予定です。客観的なサイト解析や動画コンテンツの配信のような新たな施策も検討しつつ、ポーラ・オルビスホールディングスへの求職者がこれらのサイトを見るのが当たり前になり、採用が加速するよう定着を促進させます。