採用ブランディングを推進すべくサイト全体を刷新

株式会社IHIエアロスペースは群馬県富岡市を拠点に、IHIグループの中核企業として、宇宙、航空機複合材、防衛といった高度領域の事業を担っています。1954年のペンシルロケット開発に始まり、固体ロケット技術と宇宙環境利用技術、さらに関連する複合材料技術を高度化させ、国内屈指のロケットシステムメーカーへと発展してきました。

事業が拡大する中で同社は、新卒、キャリアともに採用強化を推進しています。工場見学やインターンシップの受け入れなど、全社を挙げて採用ブランディングの取り組みに注力してきました。そこで、社外に向けた積極的な情報発信施策として計画したのが、採用サイトの刷新だったとIHIエアロスペースの吉澤圭氏は説明します。

「それまで公開していた採用サイトは長年更新されておらず、デザインも古いままで、学生や求職者の感覚とズレがあったと思います。そのため、企業としての魅力が十分に伝わっていない点が大きな課題でした。新卒採用とキャリア採用を強化するため、採用サイトをリニューアルすることにしました」(吉澤氏)。

株式会社IHIエアロスペース
人事部
人事グループ長
吉澤圭氏

同社の社員は親会社である株式会社IHIに採用されて、IHIエアロスペースに出向する形で配属されます。そのため求職者から、事業内容はもちろん、働く場所として能動的に選ばれるよう特徴や魅力を、採用サイトでわかりやすく伝える必要がありました。また、キャリア採用の応募にあたっても、群馬県富岡市にある本社、工場への通勤方法や生活実態についても知ってもらい、具体的にイメージできるようにすべきだと考えました。

首都圏から地方に住まいを移した場合、働き方や生活のイメージを持ちにくいだろうと、IHIエアロスペースの今川峻氏は指摘します。「新幹線で高崎まで来て、そこから通勤バスで通っている人、自家用車で通勤する人、独身で社員寮に住む人、家族で社宅に住む人など、ライフスタイルも社員によってさまざまです。採用サイトでは業務内容と併せて、そうしたリアルな生活環境も伝えたいと思いました」(今川氏)。

株式会社IHIエアロスペース
人事部
人事グループ
今川峻氏

メインコピーで“技術”ではなく“宇宙の近さ”を訴求

新しい採用サイトの制作にあたり、同社は社内だけで企業としての特長や強みを言語化するのが難しいと考え、社外から客観的な視点でアドバイスしてくれるパートナーを選定することにします。そして、コンペを実施した結果、最終的に選ばれたのが当社でした。

「私は以前、揚羽さんと一緒に、社内制度を浸透させる施策に取り組んだことがあります。そうした過去の実績やIHIグループのことをよく理解してくれているので、強い信頼感を持っていました」と吉澤氏は明かします。加えて、当社が過去に制作したイプシロンロケット特設サイトへの評価も高く、その品質を踏まえた制作が望ましいと判断したといいます。

イプシロンロケット特設サイト:https://www.ihi.co.jp/ia/products/space/epsilon

新しい採用サイトを制作する中で、最も悩んだのはコンセプトの中心となるコピーの内容でした。「長く社内にいると、企業として外部からどのように見えるのかが曖昧になってしまうところがあります。それに対して、揚羽さんは第三者の視点でアドバイスしてくれたのがとても助かりました。コンセプトを議論し合うことで、自社の長所や良い点などにも改めて気づけたと思います」(吉澤氏)。

こうした議論の末、最終的に決定したのが「宇宙は思っているより、ずっと近い」というメインコピーです。求人に応募してくる人たちは新卒であれ、キャリア採用であれ、宇宙事業に馴染みのある方は多くありません。このコピーは、技術的な専門用語で訴求するのではなく、宇宙は身近な存在だと感じてもらうところから始まるので、企業や事業を理解するのに最適な入口になりました。

求職者の目線で採用サイトのコンテンツを拡充

その上で、IHIエアロスペースの担当として気を使ったのは、「社員紹介」や「ライフスタイル」のコンテンツで取り上げる社員の人選だったといいます。「キャリア採用では、首都圏から地方へ拠点を移すことにハードルを感じる方もいると思います。場合によっては、家族全員で引っ越して来なければならないわけで、そうした人たちにも魅力を感じてもらえるよう、関西から引っ越してきた社員や大宮から新幹線通勤している社員にも協力を依頼し、インタビューに出演してもらいました」と今川氏は語ります。

当社では採用サイト制作にあたり、宇宙を身近に感じられるよう、空の先に宇宙が広がるビジュアルやアニメーション、社員を惑星に見立てた紹介ページなど、細部までデザインにこだわりました。トップページのローディングアニメや、ライフスタイルページなど読後動線におけるホバー演出など、テクニカルな演出も盛り込んでいます。こうした工夫を通して、宇宙という夢と技術が交錯する世界観に、自然と引き込まれるサイトを実現できたと考えています。

IHIエアロスペース採用サイト:https://www.ihi.co.jp/ia/recruit

リニューアルした採用サイトが公開されてから1年近くが経ちますが、IHIグループ内の会社から同社の採用サイトを評価する声が多数届きました。もちろん、採用応募者などからの注目度も高まっています。「採用面接でも『サイトを見ました』という声をよく聞きます。応募者が採用サイトを閲覧することはあると思いますが、これまで話に出ることはありませんでした。それが面接の中で話しに出るということは、とても印象に残る採用サイトだという証左ではないでしょうか」(今川氏)。

その他にも採用サイトに掲載している福利厚生などの制度や、新幹線通勤などのライフスタイル、社員のインタビューでの発言などから話しが広がったり、質問されたりすることが増加したといいます。

内容が評価され「2025日本BtoB広告賞」で金賞を受賞

採用サイトをリニューアルすることで、宇宙産業のイメージを変えることも狙ったと揚羽の竹下真由は明かします。「採用サイトを通じて、企業イメージを変えようとアプローチする企業は多いのですが、今回の採用サイトでは最適なブランディングができ、狙い通りに企業イメージをアップデートできたと思います。それが実現したのはIHIエアロスペースの皆さんが当社を信頼し、提案を受け入れて議論を重ね、制作進行できたことが大きいのではないでしょうか」(竹下)。

株式会社揚羽
ブランドマーケティング部
竹下真由

制作した採用サイトはこうした内容が評価されて、一般社団法人BtoB広告協会主催の第46回「2025日本BtoB広告賞」ウェブサイト<新卒採用>の部において、金賞を受賞しています。

今後、IHIエアロスペースでは、採用サイトのデザインやコンテンツを時代に合わせて継続的に更新することを検討しています。「私たちもサイトを制作して終わりではなく、新卒学生やキャリア採用に応募してくる人たちのニーズに合ったコンテンツの更新を提案して、支援していきます」と竹下は力を込めます。

特にキャリア採用は、連日面接を行うほど応募者数が増加しました。その中でやり取りされた内容を分析し、それに対応したコンテンツを追加するとともに、働き方などライフスタイル面をさらに充実させて、IHIエアロスペースの魅力を発信していく予定です。