AIサーバー市場の拡大とともに、最先端の基板ベンダーとして躍進
FICT株式会社は、高多層基板、半導体関連基板、高精度加工の3つの事業を中心に展開する国内有数のプリント基板メーカーです。同社は「人と人、技術と技術が、もっとつながりあう豊かな未来へ。」というパーパスのもと、「The Future is Interconnected」をブランドスローガンに掲げ、革新的な事業に取り組んでいます。
特に高多層プリント基板や半導体パッケージ基板、プローブカード向けSTボードなどのインターコネクトテクノロジー分野において、同社は業界を牽引しています。1967年に富士通のプリント基板事業としてスタートして以来、半世紀以上にわたり技術開発を重ね、ものづくりの分野で世界をリードしてきました。
近年、生成AIの普及によるAIサーバー市場の急速な拡大を背景に、FICTの事業は大きな飛躍を遂げています。グループのマーケティング活動を推進するFICTホールディングス株式会社の内川克美氏は、現在のビジネス環境について次のように語ります。「私たちが製造しているプリント基板は、AIサーバーや高機能な高性能サーバー、半導体テスト装置向けが主力です。昨今、お客様から様々な引き合いをいただいており、業績は好調に推移しています」(内川氏)。
また、同社は2025年12月、研究開発体制を大幅に強化しました。FICTの本社がある長野に加え、川崎事業所にはマーケティング要素を含む研究開発拠点を設置。さらに、福岡県糸島市にも半導体の研究開発を行う拠点を設け、強固な3拠点体制を構築しています。
「ガラス基板をはじめ、半導体関連基板、超高多層基板の技術開発を加速し、3D多層化インターコネクト技術の早期確立を目的として、新たに研究開発センターを開設しました。今後も、最先端技術の創出に向けて、積極的に取り組む計画です。組織面でも、2026年7月には持株会社体制へ移行するとともに、米国に現地法人を設立し、グローバルでのビジネス展開をさらに加速させています」と内川氏は続けます。

経営企画本部
広報・マーケティング部 部長
内川克美氏
MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入を決断
順調に事業を拡大する同社ですが、マーケティング領域においては大きな転換期を迎えていました。2022年に富士通から独立したことで、それまで利用していたグループ内の各種システム環境が利用できなくなったのです。その影響は、日々の営業やマーケティング活動に関連する部分にも及んでいました。
中でも喫緊の課題となったのが、展示会などのイベントで獲得した見込み顧客に対するフォローアップ体制の再構築です。システムが使えなくなったことで、新たなツールの導入を迫られていました。当時の状況について、FICTホールディングスの西村京子氏はこう振り返ります。
「展示会に来場した方のデータも、Webサイト経由で資料請求や問い合わせをしてくれたお客様のデータも、すべて個別に管理しているような状態でした。この非効率な状況を早急に解消するには、メール配信機能と見込み顧客データの一括管理を同時に実現できるシステムが不可欠だと考えたわけです」(西村氏)。

経営企画本部
広報・マーケティング部
西村京子氏
同社のビジネスは高度な技術力を強みとするBtoBであり、顧客の約6割を海外企業が占めています。グローバルな視点での見込み顧客(リード)獲得と育成(ナーチャリング)が求められていました。そこで同社は、Webサイトからのリード深掘りを含めた、より効果的なWebマーケティング施策の全体像について検討を開始。様々なマーケティング手法が俎上に載る中、MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入を決めたといいます。
BtoBの技術商材において、顧客の関心度合いに合わせて、適宜適切な情報を中長期的に提供するMAツールの思想が、同社のビジネスモデルに最も適していると判断したのです。「最終的に、コストパフォーマンスや機能の使い勝手などを総合的に判断し、最も我々に適しているMAツールを導入することにしました」と内川氏は説明します。
MAツール導入後の「運用」に課題を感じ、サポートを要請する
こうしてMAツールの導入を開始したFICTホールディングスですが、その後の運用フェーズで新たな課題に直面しました。MAツールの導入や設定、運用基盤の整備は進めていたものの、見込み顧客の育成につながる施策設計や運用体制の構築には継続的な工数が求めらます。同社の広報・マーケティング部では、複数のプロジェクトを並行して進めている中で対応する必要があり、リソース不足が顕著になっていました。プロジェクトで実務を担当したFICTホールディングスのアレッサンドラ ディ ジェスト氏は、当時の状況を次のように話します。
「MAツールの運用経験がないにもかかわらず、カタログをダウンロードしてくれた方や、お問い合わせをいただいた見込み顧客に対して、最適なタイミングで継続的にメールを送る『ステップメール』のシナリオを、ゼロから考えなければなりませんでした。技術的に訴求したいコンテンツ自体は手元にありましたが、広報・マーケティング部では複数のプロジェクトを並行して進めていたこともあり、シナリオの検討から運用まで十分な時間を割くことができず行き詰まっていました」(ディ ジェスト氏)。

経営企画本部
広報・マーケティング部
アレッサンドラ ディ ジェスト氏
そうした状況の中、同社が頼ったのが、以前からWebサイトのリニューアルやレポーティングなどを通じて信頼関係を築いていた揚羽です。定例の打ち合わせなどを通じて、揚羽側でも、FICTがMAツールを導入したことは把握していました。揚羽の椎葉勇一は、自社の経験も踏まえ、運用フェーズでの支援が必要だと直感していたと明かします。
「広報・マーケティング部の皆さんが長期間にわたって慎重に検討を重ね、最終的にMAツールの導入に踏み切られたという話は伺っていました。私たちも自社でMAツールを運用しており、戦略を立ててシナリオを組み、それを継続的に回していくことの難しさと労力の大きさは理解しています。だからこそ、間違いなく支援できる領域があると考え、支援を提案いたしました」(椎葉)。

ブランドマーケティング部
ブランドマーケティング3グループ サブマネージャー
椎葉勇一
見込み顧客の状況に合わせた緻密なメール配信で、商談化を目指す
揚羽の支援が決定すると、FICT側から高多層プリント基板や半導体パッケージ基板、プローブカード向けSTボードなどに関する詳細な技術的レクチャーが行われました。そのうえで、MAツールを最大限に活用するための具体的なステップメールの構築作業が始まります。最先端の高多層基板技術、半導体関連基板技術は非常に専門性が高く、理解が難しい領域です。しかし、同社が用意していた技術資料はどれも質が高く、プロジェクト進行の大きな助けになったと揚羽の山本美卯は述べます。
「共有いただいた既存のコンテンツや資料は、完成度が極めて高く、文章もほぼそのまま転用できるほど十分なものです。そこで私たちは、その高度な技術情報を紐解きながら、Webマーケティングの定石に合わせてメールのフォーマットへと最適化していく作業に注力しました。カスタマージャーニーを描き、どのタイミングでどの情報を届ければ、見込み顧客の関心を惹きつけられるかを細かく整理したのです」(山本)。

マーケティング部
デジタルマーケティンググループ サブマネージャー
山本美卯
このプロセスにおいて最も苦心したのが、製品の圧倒的なスペックや機能を、“定性的な価値”として、魅力的な文章表現にどのように落とし込むかでした。対象となる技術者が求めているのは詳細な数値データやスペックですが、機密情報の観点などから、すべてをストレートに公開することはできません。製品の先進性や優位性がしっかりと伝わる表現を模索し続けたといいます。
また、半導体業界特有の技術進化のスピードの速さも大きな課題です。仮に、業界最高水準の基板をリリースして大々的にアピールしても、わずか数カ月後には他社がそれを上回るような競争の激しい環境です。常に技術トレンドの最先端を追いかけ、情報をアップデートし続けなければなりません。
これらの課題を乗り越え、見込み顧客の検討度合いに合わせて「見込み層」「顕在層」「検討層」の3つのフェーズに分けた精緻なシナリオが完成します。「見込み層」には心理的ハードルを下げるコンテンツで信頼感を醸成し、「顕在層」には技術的課題に対する具体的な解決策を提示。そして「検討層」には、社内稟議を後押しする材料を提供し、実際の商談へと引き上げる設計です。
実際の運用では、まずカタログダウンロードのお礼メールを送った後、「見込み層」には一定の間隔で興味を喚起させるためのコンテンツをメール配信します。問い合わせ完了や連続して未開封の場合は、配信を停止。それ以外のユーザーには、検討促進や商談を後押しするようなコンテンツを出し分けます。「重要なのはメールを闇雲に送るのではなく、見込み顧客の熱量に応じた分岐を組み込むことで、見込み層から顕在層、検討層への移行を促すことです」と山本は力を込めます。
ステップメールやAI検索対策を通じて、さらなるビジネス成長を狙う
こうして同社では、コンテンツの整備と配信シナリオの組み込みが無事に完了し、MAツールの本格的な運用開始に向けた最終段階を迎えています。2026年の秋頃から、準備を整えたステップメールが実際の見込み顧客に向けて配信される予定です。
初期の配信設定やシナリオ作成でつまずいていた状況から一転、具体的な成果を見据えた戦略的な運用フェーズへと移行できたことに対して、揚羽の支援に対する高い評価が寄せられました。「自分たちだけでは正解が分からず手探りだった部分を、的確なアドバイスと実務的なサポートで形にしていただき、期待以上の支援をしていただきました」と西村氏も手応えを口にします。
現在は、Webサイトを訪れてカタログをダウンロードしたユーザーに対してステップメールを配信するフローとなっていますが、今後はその起点となるダウンロード数そのものを増やすための集客施策も求められるでしょう。「従来の検索エンジン対策だけでなく、ユーザーがChatGPTやGeminiなどの生成AIを使って技術情報を調べた際に、FICTさんの情報が適切に提示されるような『AI検索対策』も不可欠です」と椎葉は話します。
また、同社の顔となるWebサイトの継続的なアップデートも重要なミッションです。2025年に揚羽の支援によってリニューアルされたWebサイトは、社外のユーザーからも分かりやすいと高い評価を得ていますが、半導体関連技術の進化スピードを考慮すると、決して立ち止まることはないでしょう。
「自分たちがどれほど優れた最先端の技術を持っていても、それがWebサイト上で適切に表現されていなければ、その価値を届けられません。1年経てば情報が古くなってしまう業界だからこそ、最新の技術情報をスピーディに反映させたWebサイトへのアップデートに継続的に取り組みたいと考えています。今後も揚羽さんの力を借りながら、グローバル市場での新たなお客様の獲得と、ビジネスの成長を目指していきます」(内川氏)。



