受動的だった新卒採用を“能動的”に転換

株式会社千葉銀行は、その名の通り千葉県を主要な営業基盤とする地方銀行で、地銀において屈指の資産規模と収益力を有しています。1943年に千葉合同銀行、小見川農商銀行、第九十八銀行が合併して誕生以来、千葉県の発展に伴う資金ニーズなどに積極的に応え、地域とともに成長を続けています。

同行は2026年3月までの第15次中期経営計画において、「人材」を最も重要な経営資本と位置づけ、「一人ひとりの思いを、もっと実現できる地域社会にする」というパーパスの実現に、必要な人材を育てるための育成方針を策定しました。そのため、これまで受動的だった新卒採用が、能動的な取り組みに変化していると千葉銀行の和田京子氏は説明します。

株式会社千葉銀行
人材育成部 人材戦略室(採用担当)
副調査役
和田京子氏

「従来は、採用イベントに学生が来るのを待っていて、参加してくれた人たちにアプローチしていました。ですが現在は、採用したい学生に対して、能動的にアプローチするようにしています。既に千葉銀行に興味を持っていただいている学生だけでなく、理系学生などその時々の“求める人材”に対して、こちらから働きかけることにしました」(和田氏)。

そこで同行は、学生向け採用映像の制作と採用サイトのリニューアルを計画。まず着手したのが、採用映像の制作です。銀行は堅いイメージを持たれがちで、それゆえにエントリーを躊躇してしまう学生を選考に向かわせることと、内定承諾率の向上を最大の目的に据えました。

この採用映像は、銀行の本業についてわかりやすく紹介するのが大きなテーマです。「担当営業から、これまでとは違う切り口の映像を作りたいと声がかかり、ディレクションすることになりました。当初は堅くない感じを演出したいとアニメーションが案に上がっていました。けれども、映像の活用目的を考えたら、実写によるミニドラマの方がよいと思い提案し、採用してもらえたのです」と揚羽の岸貴宏は当時の状況を振り返ります。

株式会社揚羽
制作第1部 映像2グループ
映像ディレクター
岸貴宏

映像でもサイトでも「地域密着」の良さを訴える

千葉銀行は千葉県に住む学生にとって、認知度が高い銀行です。ただ今後、県外在住の学生やメガバンクを意識する学生も採用しようとすると、地銀ならではの良さを最大限に伝えることが重要になるでしょう。そこで採用映像は、地元に住む女子高生を主人公としたドラマパートで「地域密着」を描き、ドラマ内映像として流れるアニメーションで「多面的な銀行の本業」を描く構成にしました。見飽きないように映像尺は短くまとめ、「ほぼ4分でわかる!ちばぎん」と題して公開しています。

「行内では、地方銀行としての千葉銀行のことは住民の皆さんもご存じの方が多いと考えて、自分たちの良さや強みをあまり客観視できていませんでした。揚羽さんが第三者の視点に立って、きちんと知らせないとわからない学生が多いはずだと指摘してくれて、とても助かりました。それ以降、会社説明会などでも今まで以上に、地銀の良さを意識して訴えるようにしています」(和田氏)。

採用映像の制作を終えた後に取りかかったのが、採用サイトのリニューアルです。新しい採用サイトは、パーパスの実現に向けて、挑戦や革新性を感じさせるデザインにしました。そして、人材育成方針に基づいたキャッチコピー「共に走り続ける人に。」をページ冒頭で大きく掲げ、ボディコピーでは同行の採用における姿勢や求める人物像を訴えています。

加えて、同行の採用サイトにはなかった「ちばぎんビギナー講座」というページを作成し、同行のパーパスやビジョンの紹介、地方銀行の良さも訴求しました。「リニューアルした採用サイトにアクセスする学生が、職種紹介を見る前に最初に読んでほしいと思い、このページを作ったのです。また、意図的にページ数を減らし、見やすさや回遊しやすさも意識して制作しています。訪問するユーザー視点で、採用サイトを構築しました」と揚羽の宇波大地は話します。

株式会社揚羽
制作第1部 制作プロデューサー1グループ
宇波大地

この採用サイトは、同業他社からの評価も良好です。「普段から、他行とは採用活動に関する情報交換をしていますが、その中で、『千葉銀行の採用サイトはすごくカッコイイですね』と言っていただくことが増えました」と和田氏は微笑みます。

誰よりも事業への理解が深く、信頼できるパートナー

2024年3月に公開された採用サイトは、既に1年以上運用されており、アクセス数や滞在時間など、以前のサイトと比べて大きく改善し、期待通りの成果が出ています。アクセスしたユーザーがすぐに離脱せず、複数ページを閲覧する率(回遊率)も高まりました。さらに、定期的なサイト解析を行う中で、新たなコンテンツを追加した方が良いと提案し、「先輩・後輩の関わりについてもっと知りたい!」という同行のサポート体制を紹介するページも追加公開しています。

そのほかに当社は、学生向け説明会資料も制作しました。千葉銀行の採用担当は、さまざまな業務を幅広く行っており、それまでは説明会資料の作成でも、細かなチェックなどが必要で、とても時間がかかっていたのです。「揚羽さんは採用映像と採用サイトの制作を通じて、私たち行員と同じくらい千葉銀行のことを理解してくれています。そのため、説明会資料も期待通りの内容で、原稿に手を入れる必要もなくなりました。加えて、レスポンスも速く、すぐに戻せない場合はきちんとそれを伝えてくれます。そうした日常的な些細なやり取りからも、信頼できるパートナーだと感じています」(和田氏)。

採用映像は新卒向けの説明会でも利用しており、視聴する学生も興味を持って見てくれているといいます。今までの説明会では、例えば持ち時間が30分であれば、30分すべてを担当者による会社説明に充てていて、学生が途中で飽きてしまうこともありました。ところが、説明会の中盤にこの映像を流すと、「この女子高生は誰なんだろう」というところから始まって、千葉銀行への関心につながり、最後まで学生の興味を引き付けられます。

「千葉銀行全体を紹介する映像になっているため、行内の誰でも、どの部署でも活用可能で、とても重宝しています。また、役員からの評判も非常に良かったです。そこから別部署のNISA販促用映像の制作もお願いして、同じ女優さんによるミニドラマ形式で制作しています」と和田氏は語ります。

銀行全体のブランディングが、採用強化につながる

採用サイトとは別に、女性採用向けのランディングページも当社が制作しました。このランディングページは、千葉銀行で活躍する女性社員の座談会や若手社員が現在携わっている仕事、今後のキャリアビジョンへのインタビューなどで構成され、キャリアを築いていく意思を持った女性社員の姿を紹介しています。

https://www.chibabank.co.jp/job/woman

「揚羽として、採用映像から始まり、採用サイトや説明会資料、合同説明会用チラシ、ランディングページなど、さまざまな形で支援してきました。今後も、採用領域にとどまらず、銀行として抱える課題に伴走する形で、マーケティング分野も含めて積極的に支援できるとうれしいですね」と岸は語ります。

「採用面ではさまざまなデバイスやメディアを活用して、地銀としての良さを伝えていく取り組みを強化したいと考えています。また広報部からの依頼で、地方創生プロジェクトの紹介映像制作も進んでいますが、採用以外の部署への提案も進めたいと思います。こうした取り組みを通じて、千葉銀行全体のブランディングによって魅力が高まることで、最終的には採用を控えた学生が持つイメージも、良くなるのではないでしょうか」と宇波は力を込めます。

千葉銀行では、2024年に子会社化したエッジテクノロジー株式会社と連携したAI活用を加速させているほか、新たな事業領域への挑戦を積極的に進めています。「それに伴って、採用したい学生も理系分野など含め広がりを見せているため、揚羽さんにはそれに応じたコンテンツ制作をサポートしてほしいと考えています」と和田氏は、今後の展望を話しました。