プロジェクトの背景

同組合では、変化が激しく、大きな転換期を迎えているなかで、大事なことを見失うことなく、今後の「運動のあり方」をしっかりと描いて、皆で取り組んでいくことが重要であると考えていました。
そうしたなか、運動の拠り所となる「新しい運動方針」の作成にあたり、皆で大事なことを紡いで、目指す姿をしっかりと共有するとともに、より共感を生み、主体的な行動につながるものにしていきたいと考えていました。
今回、「インナーブランディング」の観点から、揚羽として蓄積しているさまざまな知見をご紹介し、職場の皆さまにご協力いただきながら、組合活動を通して感じる「価値」の収集を行い、ビジョン(運動の合い言葉)の策定とビジョンブック(運動方針)の制作を行いました。

プランニング

今回のプロジェクトは、揚羽から、言葉の重要性や浸透活動のポイントをはじめ「インナーブランディング」の考え方をご説明するところから始まりました。
そのうえで、ビジョン策定に向けて、職場の皆さまにご協力いただきたいことを共有し、組合活動を通して感じる「価値」を、過去・現在・未来の視点から収集いただきました。そして、寄せられた1000件を超える声を、一つひとつ確認しながらキーワードに落とし込み、価値を構造化した「ブランドストラクチャー」を作成しました。
そこからさらに言葉を洗練し、同組合として大切にしている価値観を「コアバリュー」として紡ぎ出し、そこに込められた思いとともに、「ビジョンストーリー」を作成しました。最終的に、皆が共有できるビジョン(運動の合い言葉)を3つの案に絞り込み、ワークショップでの議論と3回にわたる投票を経て、「あいを、はぐくむ。」という言葉に決定されました。

また、ビジョンブックを制作する工程では、ビジョン(運動の合い言葉)に込められた思いやストーリーを表現すべく、さまざまな案をご提案し、同組合のイメージに合うデザインを作り込みながら、具現化していきました。
価値の収集からビジョンブックの完成まで、約1年を要しましたが、より共感を生み、行動につながるものとすべく、時間をかけて、多くの組合員の皆さまに参画いただきながら進めました。

アウトプット

今回のプロジェクトを通して決定された「あいを、はぐくむ。」という言葉には、労働組合にあるさまざまな「あい」をはぐくみながら、皆で運動目標の実現に向けて取り組んでいこうという思いが込められています。馴染みやすい響きのなかに「あい(合い)」を「はぐく(組)む」という「組合」を表す言葉が隠されています。
この「あいを、はぐくむ。」という言葉が持つ、エモーショナルなストーリーの表現をテーマに、第一印象で「労働組合っていいかもな」という期待を感じられるイメージ訴求に振り切りました。そして、その共感を、労働組合に主体的にかかわる一歩として、行動に移すきっかけにしてほしいという意図を込めています。

ビジョンブックでは、「あいを、はぐくむ。」という言葉を読んだ時に湧いてくる「人と人の間にある温もり」や、「場所・時間に関係なく誰かとつながっているという心強さ」を素直にそのまま受け取ってもらいたい、文章を噛み締めてほしいという意図で、華美な装飾はせず、必要最低限の要素に絞った静かなデザインに落とし込みました。ふとした瞬間に誰かのことを考えたり、アルバムを開いて次々と思い出が出てきたりするように、じんわりと熱が伝導していくような、あたたかみのある赤の差し色を用い印象に残します。写真はエモーショナルでリアルな日常を切り取るべく、組合員の皆さまに複数のインスタントカメラで撮影していただきました。全ページを通して切れることなくつながる線のあしらいは、今も昔もどんな時も「つながり合う」ということを著しています。
言葉、写真、フォントなどのトーンはもちろん、紙質にもこだわり、手に取った時に「組合に対する期待」を感じられるデザインを目指しています。