企業成長に伴い「つながり」と事業理解に課題感

株式会社プライムプレイスは、東京建物グループの一員として、商業施設を中心としたプロパティマネジメント(PM)事業を展開。グループ外の商業施設やJ-REIT、ファンド案件にも対応し、都市型商業施設から郊外型ショッピングセンターまで幅広い運営を担ってきました。近年ではオフィスPMやエリアマネジメント事業にも領域を拡大し、事業ポートフォリオは着実に広がりを見せています。

こうした成長に伴い、社員数はこの10年で倍増し、全国各地の拠点で多様な社員が働く組織へと変化しました。一方で、社員同士が顔を合わせる機会は限られ、全社員が集まるのは年に1回のオンラインミーティングのみという状況が続いていたといいます。かつては「全員が顔見知り」の組織だったからこそ、つながりの希薄化は看過できない課題となったのです。

加えて、2015年の創立10周年時に策定したミッションは、商業施設中心の事業構造を前提とした内容でした。オフィス分野への進出や事業拡張が進む中で、現在の姿や将来像を十分に表現しきれなくなっており、商業施設に限定していたミッションを改訂する必要性も出てきたのです。

そこで、創立20周年記念式典の開催とミッション改訂、ブランドスローガン策定を並行して実施することにしたと、プライムプレイスの木村朋起氏は説明します。「創立20周年記念式典は、社員全員が対面で集まり、改めてつながりをつくる場にしたいと考えました。同時に、新しい事業領域への理解を促し、改訂したミッションとブランドスローガンを一人ひとりに浸透させる機会にしたかったのです」(木村氏)。

株式会社プライムプレイス
運営事業本部 運営二部長
兼 関西支店長
兼 アルパークオペレーションセンター長
木村朋起氏

現場の声に耳を傾け、現状把握からプロジェクトを始動する

同社は、20周年記念式典の準備とミッション改訂、ブランドスローガン策定を同時並行で進めるにあたり、揚羽をパートナーとして選定します。重視したのは、単なる制作会社ではなく、組織の内側に入り込み、価値観づくりをともに伴走してくれる存在でした。

そのため、プロジェクトの初期段階で当社が行ったのは、現状把握のための社員ヒアリングです。7名の社員へ取材を行い、「社員同士のつながりを求める声」「ミッションが十分に浸透していない実感」「業務が属人化し再現性への課題感」など、現場ならではの率直な声が集まりました。

また、ヒアリングを通じて明らかになったのは、社員と経営層の視点の違いです。地域社会に貢献したいという想いは共通しているものの、社員は現場や日々の業務感覚を重視し、経営層は中長期的な成長や企業経営の視点に重きを置いていました。プロジェクトでは、そのギャップを埋めるために「共通のブリッジ」をつくることが必要だという結論に至りました。

「最初に揚羽さんから提案された内容は、私たちの感覚と少しズレがあると感じる部分もありました。ただ、それは私たち自身が会社のことを十分に言語化し、伝えきれていなかったからだと気づきました。それから地道な対話を重ねることで、揚羽さんが私たちを深く理解し、より良い提案につなげてくれたと思っています」と木村氏は明かします。

一人ひとりの行動や想いを「プライムストーリー」に集約

こうした議論を踏まえ、20周年記念式典のテーマはプライムプレイスパーティーを意味する「PPP―はじめまして、久しぶり」に決定しました。社員同士が改めて出会い直し、これまでの歩みとこれからの方向性を共有する場にしたいという意図が込められています。

当社が20周年記念式典のキーコンテンツとして提案したのは、社員一人ひとりの行動や想いを集める「プライムストーリー」です。全社員を対象に、プライムプレイスらしい出来事や行動のエピソードを任意で募集し、それらを式典の中核コンテンツとして活用する方針が採用されました。

最初に細かな意図説明を行ったうえで、社員それぞれの解釈と意思に委ねる形で募集を続けました。その結果、最終的には社員の約半数にあたる100件近いエピソードが集まります。「提出を強制すれば、もっと多くのエピソードが集まったかもしれません。ただ、自発的に語られた声だからこそ意味があると考えました」と木村氏は語ります。

集まったエピソードの中から象徴的なものを、改めて取材し、3本の映像コンテンツとして制作。さらに20周年にちなみ、20のエピソードを会場展示として紹介しました。すべてのエピソードは「プライムストーリーBook」として1冊にまとめられ、プロジェクトメンバーの想いとともに社員へ共有されています。

このエピソード収集と同時に、ミッション改訂とブランドスローガン策定のプロジェクトも本格的に動き出しました。プロジェクトはスピードを重視し、社員を巻き込んだワークショップ形式で進行。約5カ月にわたり、2~3週間に1回のペースで対話の場を設け、記念式典までにミッション改訂とブランドスローガン策定を完了させるという明確なゴールを掲げて取り組みました。

このメンバーには、部門や階層を問わず幅広く、中堅、若手社員が選出されます。オンラインミーティングでは、役職や立場にとらわれない率直な意見交換が行われました。木村氏は「固定観念を取り払うため、私はあえて発言せず、見守る立場に徹しました」と話します。そうした環境が、社員の主体性を引き出す土壌となったのでしょう。

対面で会うことに対して「価値を感じた」と97.8%が回答

創立20周年記念式典は、2025年10月の2日間に分けて、全社員がリアル参加する形式で開催されました。商業施設は365日稼働しているため、全社員が一堂に会することは容易ではありませんが、2回開催とすることで参加機会を確保しました。もちろん、今回策定したミッションとブランドスローガンも、計画通りに20周年記念式典で発表しています。

参加後のアンケートでは、20周年記念式典に対して「非常に価値を感じた」「ある程度価値を感じた」と回答した社員が合計97.8%に達し、対面開催の意義が明確に示されました。自由回答では、「サプライズもあって、内容が濃く、勉強になりました」「参加者の表情を見れば、良い会だったことが一目で分かります」「社内に知っている人が増えるのは、うれしかったです」といった前向きな声が、数多く寄せられています。

「来賓として出席した東京建物の役員や部長の方々からも、『とても明るい会社ですね』という言葉をもらいました。会場全体の空気感や社員の表情を通して、プライムプレイスの雰囲気がそのまま伝わったのだと思います。社外の視点で自分たちの社風や組織風土を評価してもらえたことは、大きな励みになりました」と木村氏は力を込めます。

経営基盤づくりとして「周年事業」と「理念浸透」に取り組む

プライムプレイスは、2030年を見据えた中期経営計画を策定しており、それに沿って、商業施設からオフィス管理やエリアマネジメントへの事業拡大を図っています。その中で、ミッション、ブランドスローガンの浸透と企業ブランディングの強化を進め、社会貢献と収益向上の両立を図っていく考えです。

プロジェクト全体で伴走支援した揚羽の小林夏帆は、次のように振り返ります。「理念策定にあたり、私たちが進行やコメントを担う場面も想定していましたが、実際には社員の皆さんが最初から主体的に議論を進めていました。現場で責任を持って仕事に向き合っているからこそ、一人ひとりの発言に重みがあり、前向きで建設的な対話が自然に生まれていたのだと思います」(小林)。

株式会社揚羽
制作第1部
制作プロデューサー2グループ
小林夏帆

創立20周年という大きな節目を、単なる記念イベントの実施ではなく、企業理念や成長戦略の深い理解と浸透、次なるステージへ進むための新たな羅針盤の提示へと昇華させた本プロジェクト。社員の声を軸にしたインナーブランディングのアプローチは、組織の一体感を高めると同時に、持続的な企業成長を支える重要な取り組みとなるはずです。