「Social Value Award」で理念を体現する社員を表彰

2025年に設立30周年を迎えた株式会社メンバーズは、高度なデジタル人材が取引先企業に寄り添いながら、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進で伴走支援する企業。そのミッションとして、「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げます。2020年に策定した「VISION2030」では、「日本中のクリエイターの力で、気候変動・人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする」と打ち出しました。社会への貢献、社員の幸せ、会社の発展という3つを同時に実現すること(超会社)を目指し事業を進めています。

同社は数年前まで社員数が1000名程度の規模だったこともあり、全社員が一堂に会する社員総会を実施していました。リアルの場で、社員やチームを表彰し、理念の浸透やエンゲージメント向上を促していたのです。コロナ禍が終息した2023年には、従来の形式に戻して、社員がリアルに集まる社員総会を再開。ただ社員も2倍以上に増えていたため、社員総会や表彰のあり方などに様々な課題が出てきたといいます。

急激に社員数が増える一方で、社歴が数年未満という人が大半を占める状態になっていました。その結果、新卒、中途ともにメンバーズのミッション・ビジョン・バリュー(MVV)といった理念に共感して入社するものの、長年MVVを考え続けてきた社歴の長い社員との接点が少なく、その結果、理念の浸透度が少しずつ下がっていきました。

そうした中で、社員総会やSVAのあり方も再検討が必要だったとメンバーズの水澤早紀氏は明かします。「2023年に久々にリアル開催した社員総会は、社員数が急激に増えていたことから、これまでのあり方での実施に限界を感じる場となりました。そのため、全社員が集まる社員総会の実施を止め、『SVA 2024』ではメンバーズのMVVを体現する代表的な事例を表彰して称えるとともに、未来に向けたさらなる展望を語り合う場として開催しました」(水澤氏)。

選ばれた社員が参加するイベントとしてSVAを開催するには、栄えある特別な場であることを印象づける演出やプログラムが欠かせません。そこで、メンバーズは伴走してくれるパートナーが必要だと考え、イベントの企画運営を支援する企業を探し、最終的に選定されたのが当社でした。

株式会社メンバーズ
ピープル&カルチャー本部
室長
水澤早紀氏

コンセプトが腹落ちするまで、徹底的に議論を重ねる

SVA 2024のプロジェクトは2024年3月からスタートし、7月の開催に向けて急ピッチで中身を詰めていきます。最初に現状把握と分析を行い、同社の事務局メンバーと当社の担当者が議論を重ね、メンバーズの社員自身が考えるSVAのあるべき姿を探っていきました。

そこでSVAの理念を、「メンバーズがよりメンバーズらしくあるための歴史を皆でつくる。取り組みを称える、仲間を称える、一人ひとりの行動を未来に語り継ぐ」と言語化。これを土台に、SVA 2024を体験することによる効果を明確にし、コンセプトに落とし込んでいきました。準備の工程は戸惑いの連続だったと、メンバーズの溝渕冬馬氏は振り返ります。「オープニングムービーをはじめ様々な制作物がありましたが、最初の頃は無我夢中で対応していました。そんな中で、揚羽さんに伴走してもらったことで、何とか進められたのだと思います」(溝渕氏)。

株式会社メンバーズ
ピープル&カルチャー本部
チームリーダー
溝渕冬馬氏

SVA 2024の事務局メンバーにとって、最も苦労したのがコンセプトづくりだったといいます。「揚羽さんからコンセプトとして、共鳴、共振を意味する『RESONANCE』という提案があって、当初はそれでよいと決定しました。ですが、その言葉を社員に伝えるためのオープニングムービー制作の段階に入ると、提示された企画案に対して、判断に迷うようになってしまったのです。その時、『自分たちはコンセプトをきちんと理解できていないのでは』という思いにとらわれました。これをきっかけに、RESONANCEの意味を自分たちに問いかけ、皆で議論を重ねて、腹落ち感が得られるまで練り上げたのです」(水澤氏)。

限られた時間の中で、どうしたらイベントを実現、成功できるかを考えて提案したと揚羽の関年普は説明します。「3カ月ほどの準備期間の中で、メンバーズさんの要望を叶えるためのスケジュールや体制をチーム一同で考えて、提案しました。打ち合わせの中で、当時の担当役員の方から『人の心に響くメッセージを届けるには、自分自身が強く感動、感激したなどの原体験が欠かせない』という発言がありました。新生SVAは熱量の高い人たちが集い、自分たちの想いの根底にある熱量をプレゼンテーションとして発信する場です。議論を重ねる中で、事務局の皆さんの中にも熱量の高さを感じられ、社内に向けた共振や共鳴、情熱の伝播が十分に可能だと考えるようになりました」(関)。

株式会社揚羽
制作第1部
制作プロデューサーグループ
マネージャー
関年普

参加者からも、経営層からも「とてもよい経験だった」との声

2024年7月に開催したSVA 2024は、RESONANCEを表すキービジュアルを制作、オープニングは「あなたの心を震わすものは?」という問いに対して、MVV体現者であるプレゼンテーション登壇者が語るコメントムービーを流すことで、会場参加者自身にも「問い」を投げかける設計にしました。同じ場所、同じ時間を共有する人全員に、「自分にとって心を震わすものは何なのか」を自分ゴトとして考えてもらうためです。その上で、11のチームが未来のありたい姿や1年間取り組んできた事例を紹介するとともに、一方的な発表の場にならないように、イベント中に参加者が、リアルタイムでコメントができるインタラクションツールも導入しました。

こうした取り組みの結果、実施後のアンケートでは、いずれも前年と比べて満足度などの数値が大幅に向上しています。「アンケートのコメントでも、『非常によい経験になり、参加してよかった』という意見が多く寄せられ、その場の会場でも役員から、『とてもよかった』と声をかけてもらいました。こういった声からも、MVVを体現するプレゼンターが参加者の心に火をつけ、その熱量が周囲の人に伝播したのだと思います」(溝渕氏)。

これらの実績も踏まえ、SVA 2025も当社が伴走支援するパートナーとして、コンテンツ制作とイベント運営を担当することになりました。SVA 2025の開催にあたっては、前年のSVA 2024とは異なる課題があったといいます。その課題解決を見据え、前年を超えるSVAの実現が求められていたとメンバーズ 執行役員の早川智子氏は語ります。「年に1度、社員に対するエンゲージメントサーベイを行っているのですが、2024年11月に行った結果は他社と比べて高い水準を維持していたものの、当社比では前年より低下しました。そこで、社員のエンゲージメントを高めつつ、前回のSVA参加者にとっても、より良好な体験だったと感じてもらうことが大きなポイントでした」(早川氏)。

株式会社メンバーズ
執行役員
早川智子氏

理念体現の“出発点”ではなく“到達点”としてSVAを進化させる

そこでSVA 2025は、引き続きRESONANCEをイベントコンセプトに据え、テーマとして高解像度や高精細を意味する「High Definition」を設定しました。理念に対する理解度や人の言葉や行動、会社や社会について、今までよりも幅広く、明確にする(解像度を高める)ことで、お互いの信頼関係を築き、社員自身の行動変化を目指したのです。「テーマは早々に決まったのですが、今回はテーマを表すキービジュアルの制作に苦労しました。細かい部分まで見ていくと、直したいところが出てきて、イベントの前日まで修正をお願いしていました(笑)」(水澤氏)。

こうして開催されたSVA 2025も参加者の評価は高く、対面で参加できなかった社員も強く関心を持ったといいます。「プレゼンターの社員だけでなく、経営陣も自分の想いを伝えることで、経営と現場の一体感が確実に生まれており、意図した通りの結果になりました」(早川氏)。

現状、SVAへのエントリー数は30件ほどと社員数からみると、まだまだ総数として少ないのが実情です。そこで、メンバーズではエントリー数を増やすための取り組みを進めるとともに、参加者の間口を広げるためのハイブリッド配信なども行いながら、全社に波及させるための施策を講じました。

同社にとってSVAは1つのきっかけに過ぎず、最終的なゴールはMVVが深く浸透し、社会課題解決とビジネス成果向上を両立させること、すなわちCSV経営の体現です。そのためにも、どうすれば社員がアクションや行動を起こせるかを念頭に置きながら、SVAを運営することが求められるでしょう。

「理想的なSVAの姿は、それぞれの現場が日々の業務と社会課題解決の結びつきを自発的に築き上げ、その成果をアワードで発表するといった形だと考えています。アワードが“出発点”ではなく、各チームの取り組みを加速し、それらが一堂に会する“到達点”となるように進化させていくことが、今後の目指すべき方向性でしょう」と早川氏は前を向きます。メンバーズでは、このように社員が日々の業務の中で、社会価値の創出を目標に据えて、これからもSVAを進化させていく考えです。