株式会社揚羽のブランドマーケティング部 次長 昆野玲は、一般社団法人全国農業協同組合中央会(JA全中)が開催した「JA中央会採用担当者研修会」で、採用ブランディングについて講演。「知名度ゼロ」を逆手に取った魅力抽出の手法や、少人数でも明日から実施できる採用戦略について、実践的なノウハウを提供しました。

 

■激化する採用市場と地方採用の課題

現在の採用市場は、AIの普及に伴う人材獲得競争の激化や、東京圏への人材流出が依然として続いており、地方の採用担当者にとって厳しい環境となっています。JA都道府県中央会においても、「仕事内容の認知度が低い」「公務員への人材流出」「採用マンパワーの不足」といった共通の悩みを抱えています。

その一方で、2025年卒学生の地元就職希望率は62.3%と、3年連続6割超で推移しており、地元志向自体は根強く存在しています。本講演は、「環境が厳しいのは仕方ない」と諦めるのではなく、「伝え方一つで十分に戦える」というマインドセットへの転換を促すべく実施されました。

■講演ハイライト:ファクトで戦い、伝え方を工夫する

1)「知名度ゼロ」を逆手にとる魅力抽出と刺さる訴求法
「やりがいがある」「安定している」といった抽象的な言葉では、学生が抱く固定的なイメージに打ち勝つことは困難です。そこで重要になるのが、事実や数字を用いた「ファクトベース」の訴求。例えば、「365日中139日分の食を支えている」「毎日の茶碗ご飯10杯のうち約4杯はJAが届けている」など、影響力の大きな数字を学生にとって身近な感覚に変換する手法を紹介しました。また、JA中央会が県内JAグループの「司令塔」であり、同世代の中で唯一無二のスペシャリストになれるという独自性を、言語化することの重要性を強調しています。

2)予算ゼロでも明日からできる小さな工夫
採用リソースが限られている中でも、担当者個人レベルで明日から実践できる具体的な工夫を提示しました。説明会の冒頭30秒で自県の数字を提示することや、「JA・連合会・中央会の違い」を一言で説明できるトークを用意すること、さらにはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)や短尺動画といった学生の情報収集トレンドに合わせたリアルな声の発信など、すぐに行動に移せるアクションプランを提案しています。

3)実践ワークショップ:自県の「武器」を言語化する
参加者が自会の魅力を棚卸しし、自県の「武器」を自身の言葉で語れるようにするためのワークショップを実施しました。参加者は「求める人物像」を設定し、5軸のフレームを用いて独自性のある魅力を抽出。さらに、想定される3パターンの学生像(業界を幅広く見る学生、農業に関心がある学生、複数内定で迷う学生)に対し、どのようなファクトを用いて伝えるかを熟考します。このグループワークを通じて、他県の担当者とアイデアを共有し、自県だけでは気づけなかった新たな魅力や効果的な伝え方を発見する場となりました。

■受講者アンケートの声

受講者からは、「具体例や数値を活用したファクトベースの魅力訴求の手法を学べた」「学生がイメージしやすい言葉に変換するなど、コストをかけずに明日からすぐ実践できる内容ばかりで非常に有意義だった」と高く評価する声が多数寄せられ、アンケート結果の満足度を平均すると、約4.6点(5点満点中)でした。また「JA外部からの視点で自組織の魅力や発信方法を知ることができた」「自会の採用課題が浮き彫りになった」といった感想もあり、自組織の強みや課題を前向きに見直す貴重な機会となったことが伺えます。

■登壇者

株式会社揚羽
ブランドマーケティング部 次長
昆野玲
プランナー/ディレクター/プロデューサーとして20年以上のキャリアを持つ。マーケティング視点を軸に、企業の事業課題解決に向けたコミュニケーション設計からUXを重視した企画・プランニング、制作ディレクションまで担当。特に新卒・キャリア採用領域を強みとし、上場企業を中心に40社以上のプロジェクトで成果を創出。新卒とキャリアではインサイトが異なるという前提のもと、両者のカスタマージャーニーに基づく戦略立案を行う。近年はその知見を活かし、勉強会や講演の登壇機会も多い。