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インナー&アウターブランディング

部門を越えた、コーポレートブランディングの考え方(2)

時間軸で、ターゲットを見直してみる

前回は、「ブランディングで、飯は食えるのか!?」と題し、経営全体におけるブランディングの重要性について、サービスプロフィット・チェーンを用いて、説明しました。
今回は、引き続きコーポレートブランディングを構成する、インナーブランディング、アウターブランディング、そして採用ブランディングの3つのブランディングのターゲットについて、考察を進めていきましょう。
図①のように、インナーブランディングのターゲットは「従業員」、採用ブランディングのターゲットは「学生・求職者」、そして「生活者・株主・取引先」等の社外へのブランディングについては、アウターブランディングのターゲットである、とここまでは理解するのに難しくはありません。
多くの企業では、それぞれのターゲット(ステークホルダー)に向けて、自社の企業価値を伝えていくプロモーション活動を行っています。
私たちもその活動をプロモーション戦略からクリエイティブ制作までをお手伝いしていますが、その活動の中で得た「気づき」を共有したいと思います。
それは、「学生・求職者」は、採用ブランディングだけのターゲットではなく、インナーブランディングやアウターブランディングのターゲットでもあるということです。
その理由を、わかりやすく説明するため、以下の図②をご覧ください。

採用活動において、自社の採用選考を進んでいる「学生・求職者」の一部は、選考を通過し「(未来の)従業員」になります。
そして、残念ながら縁がなく選考を通過しなかった(もしくは内定を辞退した)「学生・求職者」は、他社の選考に進み、いずれは「(未来の)取引先」になる可能性もあるのです。
そして、どちらも「生活者」であることは明白です。
つまり、図②のように人事部が主導している採用ブランディングのターゲットは、「時間軸」を加えると、インナーブランディング、アウターブランディングのターゲットでもあると言えるのです。
そのため、企業のインナーブランディング、アウターブランディングの担当者は、それぞれの部署が担っているミッションとは別に、企業全体のコーポレートブランディングという観点で、採用ブランディングについても注目している企業が増えています。
そして、同様に採用ブランディングの担当者は、コーポレートブランディングを意識した上で、採用プロモーションを行う必要があるとも言えるのです。

採用ブランディングがインナーブランディングでもある理由

さて、採用ブランディングにおいて、インナーブランディングを意識した施策を考える上での切り口は、大きく分けて二つあります。
一つ目は、「(未来の)従業員」として、入社前にしっかりと自社のコーポレート・アイデンティティを理解させるコミュニケーションを行うことです。
採用担当者にとっては当たり前のことですが、学生・求職者の学歴やキャリア、備える能力だけでなく、企業理念との共感性が高いかどうかをコミュニケーションによって見定める必要があります。
そうしたコミュニケーションは、入社後の「従業員の定着率」や「従業員の生産性」にもつながっていきます。
そして、二つ目は採用活動を通した、現従業員へのインナーブランディングです。
特に新卒採用の採用活動においては、多くの企業が学生を集め「会社説明会」を行います。
その説明会において、学生からの人気が高いコンテンツは「社員との座談会」です。
採用担当者から依頼を受けた社員は、座談会に参加した学生とコミュニケーションをとりながら「仕事内容」だけでなく「仕事のやりがい」、「会社の魅力」を整理して、自分の言葉で伝えていききます。
もちろん座談会だけでなく、採用パンフレットや採用サイトに「先輩社員」として出演することもあるでしょう。
つまり採用活動の中で、従業員に協力してもらうことによって、「もう一度会社を好きになってもらう」きっかけをつくり出すことができるのです。

採用ブランディングがアウターブランディングでもある理由

一方、採用ブランディングが、どのようにアウターブランディングと紐付いていくのでしょうか。
前述の通り、採用ブランディングがターゲットとする「学生・求職者」のうち、一部は「(未来の)従業員」として入社することになりますが、残念ながら縁がなく、自社の選考を通過できなかったり、通過できても内定を辞退した場合、その人は他社の選考を進み、入社を決めます。
特にある程度その業界への志望度が高い層は、同業他社や自社のビジネスに何らか関わりのある「(未来の)取引先」となる可能性は高い。
そして、特に新卒採用においては、母集団に対して採用する人数の割合が非常に少ないため、後者のほうが圧倒的に人数は多いのです。
特にBtoBの企業の場合は、会社としてのメディアの露出が少ないため、就職活動を通じて感じた企業へのイメージが、良くも悪くも「会社のブランド」として、定着し続けることになります。
良いイメージを抱かせることに成功すれば、その人が入社した会社に良い影響を与えられるかもしれない。
しかし、反対に悪いイメージを抱かせることになってしまえば、その人が入社した会社へ悪い評判を与えてしまうことになりかねません。
新卒採用においては、「〇〇社の選考を辞退したら、コーヒーをかけられた」や、「△△社の面接で、履歴書を破られた」など、信じられないような事実が就活掲示板などに投稿されています。
事実、私がコミュニケーションを取った学生の中には、某金融機関の選考を辞退した際に、リクルーターから罵声を浴びせられた後、コップの水をかけられたと語っています。
彼は、翌日にその金融機関と契約している口座を解約しました。
このような行動は、採用ブランディングがアウターブランディングでもある、ということを理解していれば、とるはずのない行動と言えるでしょう。
また、アウターブランディングについてはもう一つの観点があります。
新卒採用では、毎年40万人を超える学生が就職活動に汗を流します。
つまり、就職活動が活発になる時期には、40万人以上の“社会人予備軍”が、リクルートスーツを身にまとい、様々な情報にアンテナを張って、街中を動き回っているのです。
彼らをターゲットとして、あらゆるアウター・プロモーションを行うことも、企業にとっては大きなメリットになるのではないでしょうか。
次回は、この「部門を超えた、コーポレートブランディングの考え方」のまとめとして、活発化する“部門を超えたコーポレートブランディング”の事例を紹介しながら、私たちが考えるコーポレートブランディングについて話を進めていきます。

 

次の記事はこちら(コーポレート・ブランディングを成功に導く3つのポイント)

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WRITER

インナーブランディング研究室
室長

黒田天兵

ブランディングにおけるソリューション実績700社を超える (株)揚羽にて、コーポレートコミュニケーション事業の立ち上げから推進まで行っている責任者。携わったインナーブランディング実績はおよそ200社、財閥系大手企業から近年注目されている急成長ベンチャー企業まで幅広く担当し、理念浸透・意識改革などのプロジェクトに携わる。大学時代は哲学に没頭。ハイデガー、デカルト、カント、ニーチェを研究。