ミッション・ビジョン・バリューを巨人と阪神で解説してみる


ビジネスの世界で生きている方であれば、一度は聞いたことがあると思います。「ミッション・ビジョン・バリュー」。英語で書けば、Mission、Vision、Valueです。元はと言えば、かの有名なピーター F. ドラッカーがその著書『Managing in the Next Society』の中で、企業にとって非常に重要な概念として提唱したものです。直訳すれば、「使命・目指す姿・価値観」です。多くの企業が、自社の理念を整理するフレームとして活用しています。

・・・しかし、なんだかわかりづらいと思います。これをとっても分かり易くするために、プロ野球球団の巨人(読売ジャイアンツ)と阪神(阪神タイガース)の理念を比較しながら、説明したいと思います。

※巨人と阪神の順番については、設立順で記載させていただいております。阪神ファンの皆様に他意はございませんのでご理解いただけますと幸いです。

※巨人と阪神は、組織の正式名称は株式会社読売巨人軍と株式会社阪神タイガースになると思いますが、愛着を込めて巨人と阪神と呼ばせていただきます。

ミッション・ビジョン・バリューとは?


まず、そもそものお話になるのですが、「ミッション・ビジョン・バリュー」の概念がまったく存在しない組織というものはほとんどありません。「いや、うちの組織にはミッション・ビジョン・バリューという概念はないけど・・」という方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、この枠組みで整理されてない組織はたくさんあると思いますが、例えば「何のためにその組織があるのですか?」という質問に対しては、何かしらお考えはあると思います。その回答は、つまり「ミッション」に当てはめることができます。「ミッション・ビジョン・バリュー」はあくまで呼び方です。組織と呼べる人数で同じ目標に対して同じ行動を取っている集団には、必ずといってよいほど、それに該当する言葉はすでに持っています。それぞれを日本語で噛み砕いて表現すると、下記のようになります。

ミッション・ビジョン・バリューとは?

ミッション=何のために組織は存在するのか?その組織の存在によって社会や人々はどうなるのか?従業員にとってはやりがいに繋がるもの

ビジョン=未来、どんな集団になりたいのか?従業員にとってはワクワクするもの

バリュー=何を大切にし、どんな振る舞いをするのか?従業員にとってはどんな時も迷わないための判断基準

巨人のミッション・ビジョン・バリュー


では、早速、巨人の「ミッション・ビジョン・バリュー」を見てみましょう。HPを見ると、巨人は、明確に「ミッション・ビジョン・バリュー」という概念での区分けは持っていません。そもそも、「理念」というものがありません。しかし採用情報のページにヒントがありました。

巨人のミッションは、一言で言えば「夢と感動を提供すること、そして、野球文化の創造」といえると思います。ビジョンは「世界一のプロ野球球団」、バリューは「常に紳士たれ・常に強くあれ・アメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」です。この中でも非常に有名なのは、「常に紳士たれ」ではないでしょうか?ご存じの方も多いと思いますが、巨人では、髭を生やす事と茶髪・金髪・長髪は基本的に禁止されています。かつて日本ハムファイターズから移籍した小笠原選手も、自らの判断で生やしていた無精ひげを剃ったという話などもあります。実際、選手名鑑を見てみても、この記事を書いた2018年5月現在では、髭・茶髪・金髪・長髪は一人もおらず、「紳士」的な印象を受けます。

巨人のミッション・ビジョン・バリュー

 

阪神のミッション・ビジョン・バリュー


一方、阪神はどうでしょうか?阪神は、自身の理念を「球団の基本姿勢」という名前で、明確に定義・整理しており、「Our Mission(球団の使命)・Our Vision(球団のあるべき姿)」がHPで記載されています。「Value」に当たる概念は見当たらなかったのですが、数年単位で「チームスローガン」を更新しているようです。ミッションは若干巨人と似ており「プロ野球を通じて、お客様に感動と喜びを与える、 健全で優れたエンタテインメントを提供する。」となっています。ビジョンは一言で言えば、「多くの人々に愛される球団」ということと私は解釈しました。バリューにあたる概念が最も違いがはっきりしています。Wikipediaから拝借しますが、列記すると、下記のようになります。

1985年 – 1998年 フレッシュ、ファイト、フォア・ザ・チーム

1999年 – 2001年 TOP野球

2002年 – 2005年 NEVER NEVER NEVER SURRENDER

2006年 – 2008年 Be the Best For the Fans

2009年 – 2011年 Focus on this play,this moment!!

2012年 – 2014年 Go for the Top 熱くなれ!!

2015年 Go for The Top as One

2016年 超変革 Fighting Spirit

2017年 挑む Tigers Change

2018年 執念 Tigers Change 2018

これを見ると、阪神には「勝負に勝つ」という、野球というスポーツの根本の楽しさを追求しているような印象を受けます。「トップ」、「挑む」というような趣旨の言葉が多いのが非常に印象的で、巨人の「常に紳士たれ」とは大きく異なった印象を受けます。弊社のプロ野球オタクに聞いてみたところ、このチームスローガンはその時の監督の意向が強く反映されているとのことで、「監督の言葉」がそのままチームスローガンになっているケースもある、とのことでした。

阪神のミッション・ビジョン・バリュー

理念言語化のススメ


巨人と阪神、両球団を「ミッション・ビジョン・バリュー」で解説してみましたが、この3つの概念について理解は深まりましたでしょうか?組織と呼ばれる人の集団には、必ずこの3つの概念が存在します。そしてそれを言語化すると、その組織の個性が浮かび上がってきます。

「社内でこれに該当するようなことはなんとなく言われているけど、明確に定義されてないなあ」という企業様には、是非とも明確な言語化を試みることを私はおススメいたします。迷ったときの判断軸にもなりますし、すべてのブランディング(インナー・アウター・採用)の根底にもなります。もちろん呼び方は「ミッション・ビジョン・バリュー」でなくてはならない、ということはありません。阪神のように、時代に応じて変更するというような運用方法もあります。最近、理念そのものを見直す企業様も増えてきておりますので、ぜひともその設計の参考になりましたら幸いです。

 

WRITER

黒田 天兵

インナーブランディング研究室
室長

黒田 天兵

ブランディングにおけるソリューション実績700社を超える (株)揚羽にて、コーポレートコミュニケーション事業の立ち上げから推進まで行っている責任者。携わったインナーブランディング実績はおよそ200社、財閥系大手企業から近年注目されている急成長ベンチャー企業まで幅広く担当し、理念浸透・意識改革などのプロジェクトに携わる。大学時代は哲学に没頭。ハイデガー、デカルト、カント、ニーチェを研究。

ブランディングにおけるソリューション実績700社を超える (株)揚羽にて、コーポレートコミュニケーション事業の立ち上げから推進まで行っている責任者。携わったインナーブランディング実績はおよそ200社、財閥系大手企業から近年注目されている急成長ベンチャー企業まで幅広く担当し、理念浸透・意識改革などのプロジェクトに携わる。大学時代は哲学に没頭。ハイデガー、デカルト、カント、ニーチェを研究。